17 妖魔の大群討滅戦 04 事前調整
一通りのことは決まり、前金も受け取って、バートたちはひとまず冒険者の店に戻った。
そしてバートたち三人はマルコムと対面している。
「やあやあ。君たちも領主様の招集に応えて妖魔の討伐に
「ああ」
マルコムがもうここまでのことを知っているのは、冒険者か役人か騎士に彼と
「君たちが行ってくれるのは私も街の住人としてありがたいんだけど、妖魔の討伐が領主様の功績と帝国に認められたら、領主様を告発しようとしている私たちとしては困ったことになる。領主様を罪に問えなくなる恐れがあるからね」
「妖魔共の
「少なくとも領主たちは自分たちの失態を隠すためにも功を
「そうだね。君たち冒険者の功績も横取りしようとするだろうね。率直に言って、この街の騎士団は頼りない」
今回の事態はこの地方の領主たちの失態であることは事実なのだろう。だからこそ、領主たちは本気で妖魔共を討伐しようとするだろう。
「それでバート君にはこれを持って行ってもらいたい」
マルコムが差し出したのは、小鳥の形をしたマジックアイテムだ。バートとヘクターに荷物の奪還を依頼した時にも持たせていた、遠距離通話できる道具だ。これも相当に高価で気軽に渡せるものではないのだが、マルコムはバートたちなら信頼できると考えている。
「我々の作戦進行状況をあなたに伝えろと?」
「伝えるのはどの村や街の妖魔集団を討伐したという程度でいいよ。君から連絡が入ったら、ちょっと時間をおいてから街に君たちの活躍を噂として流したい。君たちの功績まで領主様の功績にされないようにね」
「この街の冒険者の発案で、伝令役が騎士団に報告する前に冒険者の店に報告していくことになったから、そちらで対処してもらえると思うが」
「ああ、そっちでも対処してくれるのか。まあでもできれば君と私で連絡する手段も用意したい」
「わかった。いいだろう」
バートは自分たちの進軍目標は外に知られたくなかった。魔族は時として人間に化けて街に侵入する。この街にもそんな魔族が侵入して外に連絡している危惧がある。マルコムに進軍目標を知らせ、彼が街に噂を流せば、それが魔族たちに筒抜けになる恐れがある。待ち伏せを受ける恐れも。もちろん冒険者集団の移動経路から行き先を推測されることはありうるが、それは魔族側も伝令くらいは出すであろうから、街で彼らの戦果が噂として流れようと流れまいと大差ない。
下等な妖魔共は組織だった動きはせず、
そしてマルコムからの申し出はバートにとっても好都合だった。彼からマルコムに頼みたいことがあったのだから。
「街や村々は解放しても物資が
「あと、村の人たちも急のことに色々と物入りになって金に余裕はないだろうから、代金は考えてくれねえか?」
「わかったよ。領主様が人々に救いの手を差し伸べるとは考えにくいからね。仲間の商人たちと協力して隊商を組織する準備をしよう。隊商が襲われても切り抜けられるように、騎士団にも護衛の兵士を付けてもらうように頼もう。代金も利益度外視の割引価格で売るよ」
「お願いする」
「あと私が渡したアイテムは、どの村や街に迅速に物資を輸送すればいいかを知るために渡したということにしてもらおうか。そうすれば領主様も文句をつけにくいだろう」
「承知した」
「急いで物資を運ぶ必要がない所は、その
「承知した」
ホリーは感動する。街や村々を解放するだけではなく、解放した人々の窮乏を救うことも考えているバートとヘクターに。そしてそれを承諾したマルコムに。
同時に彼女は悲しかった。善神ソル・ゼルムは言っていた。こんな善行をしようとしているバートが人間に絶望し、全てに不信感を
一方マルコムには
善良で割合単純なヘクターはともかくとして、バートはそのマルコムの心の内を察している。だがそれを口にする必要は感じなかった。マルコムも思惑はあれど善を
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