ライトノベリスト

大沢 朔夜

プロローグ

 目の前に一枚の進路希望調査票がある。名前の欄には、「小渕真朝」という私の名前。

 そして隣には母さん。

 夜、自室にて。私は机に向かって、進路希望調査票に記入していた。

 私は、母さんがかけてくる無言の圧に流されるままに、調査票の「大学」の第一志望の欄に地元の大学の名を、そして「職業」の欄に「公務員」と書く。

 そして、隣の母さんに目を移す。これでいいよね? とうかがうように。

 母さんは笑顔になって、

「よし。これで進路は安心ね、真朝まあさ

 と言う。

 私も、それに合わせて微笑みを作った。

 胸の奥に、ねばねばしたものが絡みついてくるような感覚を覚えながら。



 その時の私は、その絡みついてくるものと戦うことになるなんて考えてもいなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る