こんなに可愛い死神がいるわけがない
如月レンゲ
死神って、なんだ?
俺は東京にある良い大学を卒業し、まぁまぁ良い会社に二年勤めた。
給料に文句はなし、人間関係にも文句はなし、文句なんてない。
上司がクズすぎること以外は。
「君達は社会で無能と言われるクズたちだ、だから、仕事をありがたく思い残業をするんだ、もちろん、無給で。」
毎日サービス残業でまともに睡眠を取ったのは一ヶ月以上前か、それまでは基本睡眠と言っても一日一時間も寝ていない。
そんな日々に疲れて俺は等々幻覚が見え始めた。
冷蔵庫からビールを取り出すと横に黒いマントを着た、巨乳の女の幻覚だ。
「良いおっぱい。」
幻覚なんて気にせず居たらそのうち消える。
ただ、俺は会社に勤めてからいい女に会っていない。
会社にもいるが、頭のおかしい女しか居ない。
「今まで、溜まってたから、良いよな。」
俺は女の胸を触る、幻覚なのに本当に柔らかく感じる。
感じていると幻覚の女は話しだした。
「あ、あの、あまり揉まないで、ください。」
涙目になりプルプル震えながら声を上げた。
俺は驚き目を見開いた。
「わ、私はあなたの命を奪う役目を請け負った死神、です。」
そう言うと一枚の紙を出してきた。
そこには「余命半年」そう書かれていた。
「何そのジョーク、てか、不法侵入だろ、お前。」
「ジョ、ジョークじゃないです!ほ、本物です。」
なんて言おうと不法侵入には変わりない。
こんな可愛い美女を捕まえるのは勿体ないが、警察を呼ぼう。
警察を呼ぶと「えっと、不法侵入って通報で来たんだけど?」とそこにいる女に気づいてない。
そして警察は俺に注意して帰っていった。
俺は、受け入れたくないが、この女が本当に死神なのだと信じるしかなかった。
「お前、何なんだよ。」
ビールを飲み女に問いかける。
「だから、死神ですって。」
俺の前に女は座った。
死神、話の中でしか聞かない存在だ。
「死神か、面白い冗談言うな。」
「どうしたら信じてくれるんですか。」
女はそう言い落ち込んだ。
とりあえず、俺は夕食を用意した。
「お前、飯は?」
飯くらいなら食わせてやっても良いか。
冷蔵庫を開けて食材を探していると女が隣に立つ。
「ご飯、何食べるんです?」
「適当に何か作ろうかな。」
女は冷蔵庫から食材を取る。
「お前、何する気だ。」
「料理です、見たところそんなに栄養のあるもの食べていないようですし。」
女は慣れた手付きで料理を始めた。
まぁ、食えるものなら何でも良いか。
テレビを点けると丁度高校時代の親友がテレビで取材を受けていた。
「今の僕があるのは、高校生時代に、親友が背中を押してくれたからです。」
親友が背中を押すか、ありがたいね。
お互い結婚したら話そう、そう話していた親友は今では、有名会社の社長、俺は社畜会社員、天と地の差を感じる。
テレビを見ていると女は作り終えた料理を机に置く。
料理は簡単な麻婆豆腐だった。
「栄養足りてないやつに食わせる飯がこれか。」
そう愚痴を言い食べると、美味かった。
ここ一ヶ月、大体の飯はカップ麺だった。
久しぶりのちゃんとした飯に感動した。
「海さん、これから私がご飯作ります、栄養のあるものをちゃんと食べてください。」
「採用。」
こんなに可愛い死神がいるわけがない 如月レンゲ @sora2007
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