いけいけ勇者様55

最上司叉

第1話

魔法使いは勇者が白衣を着た男に打たれた薬を分析した。


「薬の成分は分かった」


「じゃあ治るのかのう?」


魔法使いは黙って首を横に振る。


「どういうことじゃのう?」


「あの薬は筋力増量とともに爆発的なホルモン分泌を促すもので治す方法がないんだ」


「勇者の意識が戻らんのだぞ」


「その原因も分からない」


「じゃあ手の施しようがないのかのう?」


「そうだ」


【ガシャーン】


「嘘だよね?」


音と声がが聞こえた方にドラゴンの女と魔法使いが振り返る。


「魔王か」


「嘘だよね!治るよね!」


魔王は魔法使いの服をつかみ必死に聞いている。


魔法使いは黙ったまま何も答えない。


魔王は絶望しその場に座り込み泣き始めた。


勇者は暗黒の勇者のようになってしまうのだろうか?と魔王は泣きながら思っていた。


どうすることも出来ないのかとその場にいる全員が思っていた。


一人を除いては。


「なに心配はいらぬ、明日になればピンピンしとるじゃろ」


「…ホント?」


「勇者を信じるしかないがのう」


「…うん」


「どれご飯にするかのう」


「うん」


そしてその夜ドラゴンの女は勇者を連れてどこかに飛び立って行った。


次の日。


「うーん」


勇者は自分の部屋でいつも通り目覚めた。


朝の鍛錬をしようと身支度をしていると誰かが部屋に入ってきた。


【ガシャーン】


「!!」


勇者は音が聞こえる方へ振り返るとそこには魔王が立っていた。


「魔王大丈夫か?!」


魔王の足元には魔王が落とした食器類とそれに入っていた料理が散らばっている。


「…良かった」


魔王は泣きながら震える声で言った。


「?よく分からないが動かないでくれ」


勇者は魔王の足元に散らばった食器類を片付け始めようとした瞬間魔王に抱きつかれたのだ。


「魔王?」


「このまま目が覚めないんじゃないかと心配したんだから」


よく覚えていないが俺は意識を失ったままだったらしい。


「心配かけてごめんな」


「うん」


そこへ魔王が食器類を落とした音を聞いて皆が集まってきた。


「!!」


皆勇者を見て驚いている。


勇者は集まった仲間たちを見て一人足りないことに気づいた。


「ドラゴンの女は?」


「…」


「それが…」


「なんだ?」


「昨日勇者をどこかに連れて帰ってきたら血まみれで」


「!!大丈夫なのか?」


「魔法使いが薬打ったから多分大丈夫」


「そうか」


勇者は安心した。


魔法使いの薬は凄い効き目だからだ。


勇者は食器類の片付けを女に頼みドラゴンの女の様子を見に行く。


【コンコン】


勇者がドラゴンの女の部屋のドアをノックする。


「誰かの?」


「勇者だ」


「知っておるわ」


「だろうな、入るぞ」


【ガチャ】


部屋に入りドラゴンの女を見た勇者は驚いた。


全身包帯だらけで重症なのが分かる。


「大丈夫なのか?」


「誰に言っておるのかの」


「元気そうで良かった」


「お主もな」


「あぁありがとう」


「なに気にするでない」


「あんまり無理するなよ」


「それはお主ものう」


「あぁそうだな」


【コンコン】


「誰かきたな」


「食事かのう」


「じゃあまたくる」


「そうじゃのう」


勇者は部屋にご飯を持って入ってきた女と入れ違いに部屋を出た。


そして昨晩のことを思い出していた。


うっすらと月明かりに照らされた二人がいたような気がする。


「…治して欲しいのう」


「…勝てるのか?」


「やるしか…かのう」


どうやらドラゴンの女は誰かと戦い勝ったみたいだ。


その相手はだいたい予想がついた。


「不死鳥か」


全く無茶をしてくれたものだ。


この前は不死鳥が手加減してくれていたが今度は違かったみたいだ。


それで俺は助かったのだが。


不死鳥も無事ではあるまい。


ひゆ能力があるがドラゴンの女が治ったら様子を見に行くとするか。


朝の鍛錬を終えて勇者は宿屋へ向かう。


宿屋の店主に2人組のことを聞いたら勇者によろしくと言い残し朝一で自分の国に帰って行ったみたいだ。


もう会うこともないが他の国にはまだ知らない強者がいると勇者は知ったのだった。


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