031:ミミックVSジェネラルスケルトン〝見極めろ〟
――ザザンッ!!
来た。骨の剣の斬撃だ。
こいつを躱しながら突っ込んでジェネラルスケルトンの懐に潜り込んでやる。
どりゃー!!
よしっ!!
斬撃を躱し――せてない!?
いや、違う。斬撃が追いかけてる。
躱したばかりの斬撃の軌道が変わった。
追撃型の斬撃とか聞いてないんだけどー!!
でももう一回躱せば問題ない。ノープロブレムだよ。
どりゃーっと!!
思いっきり横に跳躍して追尾する斬撃を躱すことに成功した。
追って来た斬撃はそのまま壁に激突し、再び追ってくることはなかった。
ふぅー。
危なかった。
でもこれじゃ近付くことすらできないじゃんか。
防御力は最強クラスのくせに近付かせないだなんて、どんだけ慎重なんだよ。 (むしろ臆病者じゃんか!)
ちょっとくらい近付いたっていいでしょーが!
私みたいな可愛いミミックちゃんを拒むだなんて、どうかしてるんじゃないの?
――ザザンッ!!
ひぃいいい。
お構いなしの斬撃だー!!
本気で避けなきゃ死ぬぞこれ。
どりゃー!!
って、躱せたけど、また追撃型だ。
もう一回全力で横に跳躍だー!!!
ぬぉおおおおおーん!!!
はぁはぁ……なんとか躱したぞ。死ぬところだった。
って、あれれ?
近付くどころか遠ざかってる感じがするんだけど、気のせいかしら?
まあいい。これから徐々に近付いていけばいいさ。
それよりもこれまでの斬撃で分かったことがいくつかある。
斬撃は真っ直ぐに飛ぶやつと追撃型の2種類があるってこと。
それと斬撃を飛ばすのに時間がかかること。
詰まるところ、この斬撃は魔法によるものだな。
クラーケンも墨の魔法を放出する時、時間がかかってた。
魔法のことはよくわからないけど、魔法の発動には時間がかかるんだ。
魔法陣の構築とかが難しいんだなきっと。
それか魔力を込めるのに時間がかかるとかか。
どちらにせよ、バンバン連射されることはないってこと。
このロスタイムを活用すれば奴に近付くことだって可能だ。
まあ、近付いたら近付いたらで、魔法の付与なしで骨の剣を振り回す未来しか見えないんだけど。
とにかく、斬撃にはロスタイム――溜め時間がある。
これを見極めるのが勝利の鍵だ。 (宝箱だけに)
――ザンッ!!
来た、斬撃。
これは真っ直ぐな方か?
それとも追撃型か?
それは躱してみないとわからない!!
ジャンプ!
からのローリングー!!
なんとか斬撃を躱したぞ。
でも追撃型なら追ってくる。まだ終わりじゃないってことだ。
躱したばかりの斬撃がどこに向かっているかを確認っ。
斬撃は追ってこない。そのまま壁に激突した。
壁には斬撃の跡がくっきりと残っていた。
真っ直ぐに飛ぶ斬撃の方だった。
真っ直ぐなのか追撃型なのか、斬撃を見ただけだと全くわからないな。
だったら斬撃を放つジェネラルスケルトンの構えに注目しないと……。
ん、あれは?
ジェネラルスケルトンが握っている骨の剣の
とても小さい。小さくて今まで気付かなかった。
あの魔法陣、クラーケンの墨の魔法と同じで異様な雰囲気だ。
この異様な雰囲気は元日本人だから感じるものだろう。
ということは、あの斬撃は魔法によるもので間違いない。
魔法は日本には存在しない。だから感じる異様な雰囲気なんだ。
――ザンッ!!
ぬおっ!!!
また来たぞ、斬撃!
斬撃を躱すので精一杯で、これ以上近付ける気がしないんですけどー!!
で、肝心の斬撃は!?
追撃してこない。これも真っ直ぐ飛ぶやつだったか。
よしっ。魔法陣を構築してる今がチャンス。
また斬撃を放たれる前にジェネラルスケルトンの懐に!!!
――ぬ? さっきの魔法陣とは少し違う?
二層になってる?
ということは……
――ザザンッ!!
どりゃー。めちゃくちゃ跳ねて躱すぅううー!!
そして……やっぱりか!?
予想通り斬撃が追尾して来た。
1つだけの魔法陣だと真っ直ぐ飛ぶだけの斬撃。
2層構造の魔法陣だと追撃型。
なんて単純でわかりやすい仕組みなんだ。
でもその単純でわかりやすい斬撃を躱すのは一苦労だけどねっ、どりゃー!!!
よしよしよしっ。
なんとか躱した。でも本当に一苦労で命がけだぞ。
それとジェネラルスケルトンの手元に注目してないと、どっちの斬撃でくるかわからないってのも辛いよな。
もっと視野を広げて作戦を練りたいってのに。
ジェネラルスケルトンが骨の剣を構えた。斬撃を放つ気だ。
柄の部分に魔法陣が……1つか。
私の予想通りにいくと真っ直ぐに飛ぶ方の斬撃がくる。
それなら、今がチャンス。
突っ込めやぁあああああー!!!!
――ザンッ!!
ぬぉおおおおー!!
根性で躱せぇえええー!!!
くっ、ちょっと掠った。
多分体の一部がまた欠けちゃったな。
仕方ない。突っ込みながら躱すなんてもともと無茶なやり方だったんだから。
でも今はそんなこと気にしてる場合じゃない。
せっかく斬撃を躱したんだ。
距離を取られる前に懐に潜り込んで反撃開始だ。
ジェネラルスケルトンは、向かってくる私から距離を取るため、背後へと跳躍しようとする。
もともと私も人間だ。
人間の骨格のジェネラルスケルトンの微かな動きでも、何をしようとしているのか分かってしまうのだよ。
他の魔物と比べてそこだけは唯一戦いやすいところだな。
そして背後へと跳躍しようとしてるってことは、私の考えに気付いたってことだよな。
だが遅い。もうここは私の射程圏内だ。
必殺――
これは攻撃のための技じゃない。
より一層、より早く、ジェネラルスケルトンに近付くための技だ。
普通に飛び込むよりもこの方が勢いが出るからね。
そしてこの勢いを利用して本命の――
必殺――
私はジェネラルスケルトンの下腹部に噛み付いた。
うおあッ!!
な、なんて硬さなの!?
いや、硬いってのはもう知ってることだろ。
問題なのは私の牙を痛がってないってことだ。
ノーダメージなのか? ノーダメージなのかー?
貫通攻撃が通じてない?
いや、そもそも私の牙に貫通効果があるってこと自体、私が勝手に言ってることだし……確証なんてなかっただろ。
それじゃこうして突っ込んで行ったのって、ただの無駄死にになるんじゃないか!?
「KARAKARAKARA!!」
ひぃぃいいいいい!
嫌な笑い方!
それにこの状況でも骨の剣を構え始めた。笑いながら構えるとか怖すぎるだろ。
って、この構えに見覚えがあるぞ。
確かこの構えは、歴史系のアニメで武士がやってたやつ……切腹の構えだ。
私が下腹部を噛み付いてるから私目掛けての攻撃――ガハッ!!!!
痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたい!!!!!
骨の剣が刺さった。上から下まで貫かれた。片目も潰された。内臓も掻っ斬られた。
くっそ。こいつ自身は骨だから、切腹みたいに自分の腹を刺しても、自分の骨を避けられるのか。
でも私の体を貫いたのが仇となったな。
この骨の剣、死んでも離さないぞ。
そうすればもうこの骨の剣で攻撃はできまい!!
私は体を
こうすることによって顎にも力が入って一石二鳥だ。
ジェネラルスケルトンが骨の剣を抜こうとしているのがわかる。
絶対に抜かせてたまるか。
「ギィイッ!! (がはっ!!)」
剣が抜けないからって、ぐりぐり動かし始めやがった。
私の内臓を抉る気か!?
そういや、こいつ……スケルトンの時もかなりの筋力だったよな。
これは骨の剣が抜かれるのも時間の問題か……。
「ギィイッ!! (ぐはっ!!)」
痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいいたい!!!
なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないんだ。
辛いよ。苦しいよ。痛いよ。怖いよ。嫌だよ。
「KARAKARAKARAKARAKARA!!!」
ジェネラルスケルトンの笑い声が聞こえる。この笑い方は嘲笑だ。
その嘲笑が私の神経を逆撫でしてくる。
将軍なら将軍らしくしい態度で相手してほしいものだな。
笑い声を聞いていると、不思議と痛みよりも笑い声に気を取られてしまうのは何故だろうか。
もう体は痛みで麻痺してしまっているのだろうか。
それとも意識だけがあって体はもう真っ二つにされたとかか?
いや、体はまだある。
片方しかない視界でしか確認できてないけどちゃんと体は残ってる。
それに私はまだこいつの骨を噛んでる。
噛み続けてやる。
それに骨の剣も離すもんか。
ここでどれか一つでもできなくなってしまったら死んだも同然だ。
だったらこの命が尽きるまで噛み付いてやる。骨の剣も離さない。
最期の最期まで足掻いてやる。
私の命と引き換えにお前の骨を1本でも砕いて、冥土の土産にしてやるよ。
たとえこの牙が折れても、絶対に心だけは折らない。
心だけは絶対に折らないからな!!!!!
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