019:既視感、けしからん (韻踏んだ)
私の体は今、キングラットが集めた宝石を大量に埋め込んでいる。 (めっちゃお洒落!)
そのおかげで薄暗かった洞窟がすいすい進めるほどに明るくなった。 (ギンギンギラギラっ!)
私ってとっても可愛くてお洒落なミミックちゃんだけど、薄暗い洞窟を照らす
そして私は強い。あのキングラットを倒したんだから〜。
ハイスペックっ! どんだけハイスペックなの? 私は〜!
ハイスペックすぎて気絶しちゃいそ〜。
「カパカパカパカパカパッ〜」
最初はお洒落すぎて引かれないか心配だった。
着飾りすぎてマダムっぽくなってないか心配だった。
でもその心配を振り払うほどのこの可愛さっ!!
それに着飾ってる宝石は上物ばかりよ〜。
まあ、一番の上物は私なんだけどね!
「カパカパカパカパカパッ〜」
イケメン冒険者が私を取り合うこと間違いなしよ〜。
だから現れてよ、イケメン冒険者ー!!
この際、人間なら誰でもいいよー!!
誰かー、私の前に現れてー!!
ネズミさんたちと10日間も過ごしてしまったせいか、私は寂しがり屋になっていた。
最初の頃は孤独でもやっていけたのに!
やっぱり誰かが傍にいてくれるのと、誰もいてくれないのとでは全然違うわっ。
こんなことになるんだったらミディアムラットくんを連れてくるんだった。
いや、あの子もあの子で最後の最後にミディアムラットちゃんと交尾してたっけ。
キングラットの支配から解放された途端みんな性欲丸出しになっちゃってっ!
けしからん。 (羨ましい)
全くもってけしからんぞ。 (めちゃくちゃ羨ましい!)
はぁ〜。
嘆いても仕方ないよね。
今はとにかく出口に向かって青い空を…………青い空のようなイケメン冒険者との運命的な出会いをしなきゃ。
そんなことを思いながら私は、アイススケートをしているようにすいすいと滑りながら出口を目指した。
今までの移動手段はガシャガシャとうさぎ跳びのように跳ねるか、すり足差し足忍足の方法でゆっくり滑るかの二択だった。
でもレベルアップしたことによって、このようにすいすいとアイススケートをしているかのように滑れるようになったのだ。
デコボコの道でもこの通りすいすいっと!
ガシャガシャ跳ねるよりも快適だし、何よりも速いっ!!
この勢いのまま出口へ向かってレッツゴーだっ!
鼻歌も歌いたくなっちゃうね〜。
ミミックの鼻がどこかわからないけどっ。
もしかしたら鍵穴の部分が鼻かもしれないと思わなくもないけど。 (位置的にもね)
嗅覚に関してはどこから感じてるのかわからないからし、鼻呼吸だってどこでやってるかわからない。
強いて言うならどっちも全身からかも。
だとしたらミミックに鼻なんて存在しないのかもしれないね。
まあ、なんでもいいけどー。
それにしてもここの層は広いな。
ドラゴンカップルがいた下の層と比べるとかなり広いぞ。
どれだけ進んでも道、道、道、道ー!
出口なんて一切見つからない。それどころか行き止まりにもならない。
分かれ道はいくつかあったけど、そっちが正解だったか?
でもまあいいや。いつか出口にたどり着くだろうしねっ。
その前にイケメン冒険者に遭遇しちゃったりして〜。
――ガシャッンッ、キャシャッンッ。
おっ、早速物音を感知!!
この音は鎧とかが擦れる音っぽいぞ。
まさか、鎧を身に纏った冒険者が近くに!?
私は音がした方へと体を向かわせた。
――ガシャッンッ、キャシャッンッ。
音がだんだん大きくなってきた。
近付いてる証拠だ。
この先の角だなっ。
ここからはアイススケートのように滑るのはやめてゆっくりだ。
すり足差し足忍足で……そろりそろりと〜。
――ガシャッンッ、キャシャッンッ。
本当に激しい音だな。
こんなに鎧って音出ちゃうものだっけ?
私のゲームとかアニメとかの知識だとここまでの音は出ないとは思うけど……。
まあ、確認してみたいことには始まらないよねっ。
イケメン冒険者さーん!
私を探しにきてくれたのねー!
私はここよ〜。
私は角を曲がり物音の正体を確認した。
そして衝撃を受けた。
……って……嘘でしょ……。
――ガシャッンッ、キャシャッンッ!!!
私の瞳に映ったのは、とてつもなく大きなカニの魔物ととてつもなく大きなエビの魔物だ。 (2体とも2階建の家くらいの大きさはあるぞ)
そして物音の正体はカニの魔物とエビの魔物が……交尾をしている音だった。
戦ってるんじゃない。交尾だ。交尾をしているんだ。
はっ、
これ前にもあったよね!?
ドラゴンカップルの時と一緒じゃん!
今度はカニとエビのカップルかよ……って、カニとエビって交尾できたんだな……。
同じ甲殻類だから交尾とかもできるか。知らんけど。
いやいやいや、そうじゃないでしょ!?
どうやったらこんなに激しい音が出るのよ!
体勢からして恐らくエビがオスだよね。
オスのエビの生殖器は鉄か何か金属みたいなものでできてるの!?
そう思うくらいの音よっ!
まあ、鎧みたいに硬そうな甲羅ではあるけど……。
でもあんな音鳴る!? ガシャンッ、ガシャンッって!
はいはい。もういいです。見なかったことにします。
というかこの洞窟どんだけ交尾してるモンスターがいるのよ。
交尾率高すぎっ!
どいつもこいつもけしからん! (あー、くっそ羨ましい!!)
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