最期に笑う為に貴方に復讐する
夜櫻千代
第一章 義妹に出会う前
処刑の日
「頼む、ヴァーネット。お前の可愛い可愛い
……目の前の兄
私、ヴァーネット・パルデミュンテは名門公爵家の長女として生まれて、今まで恥ずかしくない様に生きてきた筈。兄の誇りになれる様に、父の自慢になれる様に、だから私は今まで全部我慢してきた。いつまでも彼らの近くに居たかったから、私は頑張って頑張って努力してきた。それなのに。
矢張りいつまでも彼らが愛するのは血の繋がらない孤児院から引き取ってきた義妹、ラピスラズリだけ。
パルデミュンテの真っ当な血筋を表す黒色の髪の毛も赤紫色の瞳も、彼女は持ち合わせていないのに。それなのに。
孤児院育ちだからと言うのを理由にしたくは無いけれど、彼女は貴族の中で生きていくには無知過ぎた。常識的なマナーを守れなくて後々苦労するのはあの子。だから私は
……まぁ実際罪を犯したのは義妹の方で、ラピスラズリは私の忠告も聞かずに留学で来ていた隣国の王子の機嫌を損ねまくって最終的に不敬罪で首をはねられそうになっていた所をあろうことか長女である私の監督不行届と言う名目で私が罪を被ることになった。馬鹿馬鹿しいにも程があるわ。
退屈過ぎて欠伸が出る。本当に頭の弱い人しか居ないのね。
「……ヴァーネット、聞いているのか?」
兄……だった元愚兄、ヴィオラ・パルデミュンテが怒りをその顔に称えながら私を睨みつけた。
「すみません、聞いていませんでした。」
私が悪びれもなくしれっとそう言うと、彼はかっと顔を赤らめて、牢獄の檻を掴み、鬼の形相で私にまくし立てた。
「お前はいつもそうやってラピスラズリを虐めていたんだろう!?なんでそんなに卑劣なことが出来るんだ!家名に泥を塗る行為だぞ、断じてお前を許さない!」
「……許さない……??おかしなことを言うのね、お兄様。いえ、ヴィオラ・パルデミュンテ様?」
よくもまぁそんな事が容易く言えること。
……まぁ良いわ。
「お前……そんな態度で……否、もう全て終わるからな。最期の不躾を許してやろう。」
嘲りの表情を浮かべる貴方はなんだかとてつもなく哀れに見えた。
「寛大な心……じゃあ一つだけ。来世では貴方と無縁な人生が送りたいわ。」
願うことなら復讐もしてやりたいけれどね。
怪訝そうに眉を顰める彼が、私が最期に見た元愚兄の顔だった。そのまま私は断頭台に連れていかれ、周りの罵詈雑言を受け入れながら処刑を受け入れた。
◇◇◇
冷たい床に転がった筈だった私の体は、何故かふかふかのベットの上にのせられている。どういうこと?これは何?周りに人の気配がしないのは何故?
「……ま、さま、うさま、起きてくださいまし。」
私のことを様付けする人はもう居ない筈よ。優しい声音のこれは誰?体を揺すられるこの感覚はどういうこと?
今から死ぬって言うのに親切にする必要は無いのよ。
「ヴァーネットお嬢様。起きてくださいまし。このウルスラめが怒ってしまいますわよ。」
……今なんて言った?
ぱちりと目を開けると赤茶色の髪を持つ少女が私を見下ろしていた。彼女はラピスラズリが来てから私付のメイドを解任されて、ラピスラズリ付のメイドになった筈なのに……。
もしかしてこれは、時間が戻ってる?
でも神様、違うわよ。私が願ったのは来世。あの人たちと関わらない人生が送りたかった。なんで今生かしてしまったの。
「……あの……ウルスラ、今私は幾つですか?」
「へ?ヴァーネットお嬢様、何を仰るんですか?つい先日8歳の誕生日を迎えたばかりでしょう?」
8歳の誕生日を迎えたばかり。私が処刑で死んだのは18歳の日。義妹が来るのは9歳の春の日。これなら私はまだ上手くやれる。神様、さっきは悪態ついて御免なさい。
矢張り私は幸運に恵まれていたみたい。
「ウルスラ、早く着替えましょう。」
そう言って、私はとびきりの笑顔を彼女に向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます