第6話
今日は金曜日、誠が来る日だ。
百合は残業で遅くなったので、家に着くのは午後七時頃、夕飯を作る暇がないと思いスーパーでお惣菜を買って帰ってきた。
午後8時前にチャイムが鳴った。いつも通りの時間だ。誠は今日もお酒を買ってきてくれた。
「お惣菜でごめんね。今日作る暇なくて…」
百合は申し訳なさそうに言う。
「気にする事ないよ。それより元気ない?」
ここ最近の出来事を気にしない様にしていたが、自然と元気がなかったのだろう。
誠に悟られまいと元気なふりをして、酎ハイをグイッと飲んだ。
酔ってしまいたかった。
2本目の酎ハイに手を伸ばそうとすると、スマホの着信音が鳴った。
誠は背広の内ポケットからスマホを取り出し電話は出ずに電源を切った。
百合はそのスマホを初めて見た。初めてみるスマホだった。普段誠が使っている物はテーブルの上に置いてあった。
「電話に出なくていいの?」
百合は聞くと誠はなんでもないかのよーに、
「気にしなくて大丈夫だよ。」と言った。
半年付き合っていて、誠がスマホを2台持っている事を初めてしった。電話に出ない事も不可解だった。うわき?3文字の言葉が百合の頭をよぎったが、誠はそんな事しないと思った。
誠は百合を本当に大切にしてくれていた。
記念日を祝ってくれて、百合の好きなケーキや花のプレゼントもよくしてくれていた。
愛されている実感があった。
次の日起きるとベッドの隣は空だった。恐る恐るリビングに行くと誠がソファでスマホを操作していた。例のもう一つのスマホだ。
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