不老不死の其方
はなえみ とわ
少女イェルダ(952歳)
春が来て、夏、秋そして冬になる。この城から見える季節のめぐりを、私は何百回ひとりで過ごしただろう。
少女は白銀の長いくせ毛に、碧色の瞳がよく映えた美貌をほんの少し憂いげに歪ませる。頬はほんのりと赤く、口元にはここにあるべきと、ほくろが美しさを際立たせている。歳は十四、五ほどであろう外見は、時の流れから切り離されたように以前と変わらない。
少女は不老不死であった。
彼女自身は親しい者と共に生き、共に老いることを望んでいた。だが、ついに皆彼女を遺して去ってしまう。それからの日々、少女は孤独にただそこに存在し続けた。人々の記憶から消えても。
ふと、外を見ればそこには人が焚き火をしていたかのようなあとがあった。
「人がいる?悪い人だったらどうしよう。」
普段はこの城には誰も入ってこない。不気味がられているのだ。恐らく誰も住んでいない古城。幽霊が出ると考えられてもおかしくない。
(あながち間違いじゃないのよね。
私は幽霊みたいなものだもの。)
ともかく、侵入者の様子を確かめに行かなければいけない。着ていたドレスの上からマントを羽織り、外に出る。
焚き火の跡まで行ってみると、その少し先には簡易テントのようなものがあった。きっとそこで寝泊まりしていたのだろう。なぜ今まで気づかなかったのか。まだ薄暗い早朝ならきっとこの中に侵入者はいるのだろう。
ここに居るのがもし、強盗や逃げてきた犯罪者ならきっと私を口封じに殺そうとするだろう。このまま知らないふりをし続ければ、そのうち出ていくかもしれない。だがもう雪に足跡をつけてしまった。何より、好奇心を抑えられそうにない。どうせ、私は死ねない。
だったら…
勢いよくテントの布をめくる。
「ん。お姉さん、だあれ?」
まだ十にもなってないような少年が眠そうに
目をこすっていた。
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