第56話なんてこった



ドラゴンの森は、魔物の巣窟そうくつだった。

倒しても倒しても出てくるんだ。


俺が浴びる血も緑や紫など色々だよ。

その度にシェリーのクリーンに助けられた。


それでなければ血の臭くて、やってやれない気分だよ。

まあ素材も半端ない量が取れて錬金術のあれやこれなどが作れそうだ。



『主殿、危険な臭いがただよってます』


「それは、どっちから・・・」


『こっちからです』


「ならシェリーが案内してくれ」


『わかりました。ついてきて下さい』


シェリーが飛んだよ。

メターもバラバラになって飛びやがった。


のんびりと魔物の足を溶かして食っていたアカを、無造作に掴んで俺も飛んだ。


『ああ、足が・・・』


「ドラゴンが食えるかも・・・きっと美味しいぞ」


『本当に美味しいかな・・・』


「美味しいに決まってるさ」



『なにをのんきに話してるのですか・・・危険が迫ってるのに・・・』


目をきりっと上げるシェリーが怖い。


『なんで怒ってるのかな』


まあまあ、あまり話すなと念じた。


『ダメなの・・・』


お、念じても話せるらしい。



急にシェリーが止まる。


え!なんで・・・


指差す方向には、渓谷が広がっていた。


『ここに間違いありません』



「バサッ、バサッ」と羽ばたく音が・・・


なんと空高く赤いドラゴンが飛んでた。


『ほう・・・おもしろいメンバーだな』


え!これって日本語だぞ。

感覚で分かるんだ。訳した日本語でないことが・・・


「日本語が分かるのか!」


『ああ、これが日本語なのか・・・なんとなく話せるぞ』


なんとなくだと・・・信じられん。


『それで何をしにきたのだ』


「・・・・・・」


『なんと我を殺して素材を集める気なのか、なんと愚かな』


「なんで俺の考えが分かるんだ」


『なんでなんだろうな・・・それより戦うのが先だ!』


なんと、いきなりブレス攻撃だ。

アカが広がって守ったから助かった。


その間に詠唱えいしょう済ませる。


天に複数の隕石が現れて、一気に落ちる。


『なんと小癪こしゃくな奴だ。しかし、勝ったと思うな』


複数の隕石には、軌道を変える事も可能だ。

なのになんで逃げない。


当たった瞬間に爆発で視界がさえぎられた。

熱風と土ぼこりで全く見えないぞ。


え!シェリーも精霊魔法が発動してるぞ。


無数の刃がドラゴンが居た場所に放たれている。

それに「カン、ゴン、カキン」と様々な音が響く。


視界が戻った時にはメターとドラゴンが戦っている最中だ。


あの最大の隕石が効いてない。


足元のアカがペシペシと『これ使って』

ああ、お遊び作った01式軽対戦車誘導弾だ。


動画も見たから撃ち方もなんとなく分かる。

ダメもとでやってみるか。


構えて目標を見る。

ドラゴンはブレスを吐いたので熱が半端ない。

ロックオンして発射。


凄いぞミサイルが飛んでドラゴンに命中。

ドラゴンは、チラッと見て『フン!そんなものか』と言いやがった。


全然効いてない。


あ!そうだオリハルコンの太刀を取り出す。

太刀がビューンと伸びてドラゴンに・・・かわしやがった。


何度も何度もかわすドラゴン。

逃げるってことは、当たればダメージが入るハズだ。


『分かった!メター、牽引ビームで拘束をするのよ』


シェリーは、空気が読めるので助かった。


メターから牽引ビームが放たれた。


『なんだこんな物!!』


白い閃光せんこうで見えない。


あ!ドラゴンの手が・・・

なんとアカが俺を包み込んだ。

太刀と一緒に握られて、光りが消えた太刀。

消えてなかった、俺が傷ついていたぞ。


それでもドラゴンは、俺とアカを握り続ける。


『これでお仕舞いだ・・・許しを請うのなら今だぞ』


「なんでドラゴンなんかに・・・」


『強情な奴だな・・・そんな奴も好きだが・・・お仕舞いだ』


大きく口を開けた。

俺は、自身の指を噛んで血の水滴をドラゴンに放つ。


『なんだ・・・これは・・・懐かしい・・・しかし、記憶が忘れた記憶が』


もしかして、俺と同じ血魔法で『しもべ』になったのか・・・そうに違いない。

赤いドラゴンだ。血でコーティングされたから赤に、なんか納得してしまう。


それにしても『しもべ』の表示はまったくない。

なんでだ。


前任者の契約で『しもべ』に出来ないのか・・・


『我はどうすればいい』


しらんがな・・・


『責任を取ってもらわないと・・・そうだ・・・仲間になろう』


「なんてこった」


なにが責任だ。

なにが仲間だ。


『ここに居ても仕方ありません。ベースキャンプに帰りましょう』


「あ!狼煙だ。どうしよう」


『これは失敗でも成功でもありません。獣人と話し合いましょう』


「そうだな」


『我の背中の乗れば速く着くだろう』


それもそうだな。

なんか従順過ぎないか・・・


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