第34話魔闘武



ガンバ商会の店を案内された。

1階部分は石造りで2階3階は、太い柱がめぐらされて漆喰で塗り固められている。

和風と洋式をたして割ったような建物だ。

1階は、広い店舗で買ってきたポーションを裏口から搬入。

カウンター横に箱のまま積まれる。


どこからわき出したのか客が奪うように1本2本と買いだす。

中には20本も買ってゆく客も・・・


え!1時間で10箱が売り切れた。

あんなにいた客が・・・いないぞ。


なんで・・・あんなに大勢いた客が4分の1まで減ってた。


「あの方々は、冒険者達です。仕事でどうしても怪我をするので・・・」


シリーは、ため息をついた・・・

エルフのポーションが冒険者にとって命綱・・・らしい。


それにしても裏口が騒がしい。

ヒョコヒョコと騒がしい場所へ行ってみた。




なんと獣人が戦いの練習中だった。

あれ!妙なものが見え出す。

俺の暗視が体の中を駆け巡るものを見た!


「あれは、魔闘武まとうぶの鍛錬です」


え!いつの間に・・・シリーが俺の後ろに・・・

もしかして魔闘武の達人か・・・


「人族が魔法を使うように我らも魔闘を体に武装することで、魔法に負けない力を出せるのです」


それにしても動きが半端ないスピードで威力も半端ない。

一撃で凄い突風を巻き起こしていた。

当たった瞬間に轟音ごうおんが響く。


防御側も凄く・・・そんな一撃を受止めても平気だ。

あれも魔闘武のなせる技なのか・・・


「あれは吸衝きゅうしょうです。相手の魔闘激を吸収する技の1つです・・・わたしの手を見てください」



え!シリーの手が急に淡い光りが包み込む。


「これが魔闘武の基本です。防御も攻撃も可能です」


もう悟ったような・・・あんたは仙人か!




あれ!こんな人間離れの技って・・・なんか読んだような・・・


あ!思い出した。

神雕侠侶しんちょうきょうりょだ。


中国の著名ちょめいな小説家金庸きんよう武俠ぶきょう小説の1つで・・・

たしか射鵰英雄伝しゃちょうえいゆうでんの続編の話だ。


片腕の武人で神鵰(大鷲)に乗って活躍するんだ。

主人公は、楊過ようか


幼い頃に浮浪児になって父の義兄弟の郭靖と妻の黄蓉に出会い、二人と暮らすようになる。

しかし色々あって武林の名門全真教に預ける。

だがいじめにあって我慢できずに全真教を飛び出す。


美しき宗主小龍女と出会い弟子になるんだ。

小龍女は、まだ20歳にもならぬ少女で年月を経るうちに大人になって、それは愛に変わるんだ。

なんでも師弟の恋愛は中国ではタブーらしい。


もう不倫の話が節々に出るんだ。

まあ、あえてドロドロな展開にしてるような・・・


小龍女は、修行の最中に意識を失い。

夢の中では、楊過と結ばれる。


しかし違っていた。

それを見ていた全真教の弟子が、倒れた小龍女をレイプするんだ。

しばらく経って知る事に・・・怒った小龍女は、その男を追い詰めて殺してしまう。


恥じた小龍女は、楊過から離れる。

しかし、楊過は探し続ける。レイプされても好きなんだ。

その間にドタバタな話が展開して、郭靖の娘に腕を切り落とされるんだ。


片腕を失った楊過は、途方にくれて山で遭難。

そこで神鵰(大鷲)と出会う。

そこには凄い剣があって、どんどん強くなる。


そして小龍女と苦労して出会う・・・



「大変だ!魔闘武暴走だ!」


なんと虎の男が暴れまくっている。


「あれは、いかん!半日も放置すれば死ぬぞ」


「どうにかなりませんか? 」


「わたしが相手しても相打ちになるだろう」


え!暴走すれば、そんなに強くなるのか・・・

あ!なんとなく気の乱れが見える。

暗視のなせる力か・・・シリーと見比べる。

シリーの正常な魔闘武でなんとか理解。


暴走した虎と互いに見比べて・・・

なんとなく乱れた場所を3ヶ所を発見。

あそこ鍼灸しんきゅうのツボを刺すようにすれば・・・助かるかも。

ダメもとでやってやる。


「アカ、畳み針だ」


アカは、針をだす。

上手くキャッチした針は、16センチの赤い針。


それを持って走り出す。


身にはアカをまとう。


あ!ヤバイ!

とっさに左腕で防御。そのまま吹っ飛ぶ。

8メートルまで飛ばされ柵を壊す。


「なんて威力だ!」


ジンジンと左腕が痛い。

もしアカがいなければ腕が無かったハズだ。


接近戦はヤバイ・・・ならば赤針を浮かせる。

この世界でも血魔法は健在だった。

しめた!


凄い勢いで飛び出す赤針。


なんと寸前でかわしやがった。

ならば・・・この針が危険と感じた。これはイケそうだ。


中ほどの石を落下させて、逃げたスキをついて針を突き刺す。


あ!なんと魔闘武が半減。


あと2本の赤針を飛ばし避けるが、こっちは2本だ。

後ろから襲った赤針が突き刺さる。


最後は、ワンパンで虎を吹飛ばす。

さっきのお返しだ。



倒れた虎に最後の赤針を突き刺した。


どうやら暴走は止まったようだ。


「ジン君は凄いねーー!見直したよ!」


もう獣人に誉めまくられたよ。


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