夢のまた夢

いつからだろうか、自分がわからなくなったのは?


どうしてだろうか、自分を見失ったのは。


うるさい、喋らないで、お願いだから。

ちょっと、決まったの進路。やりなさいよ。

…浪人する!

はぁ、だめに決まってるでしょ。

自分で払うから。

こっちはしょくたくなのよいつきられるかわかんないんだから。そんなのはやめてくれる。


自分で払うから迷惑なんてかかんねぇん。


いつかは忘れた。僕が、自分らしくいられなくなったのは。

僕は子供の頃、ただ優しい人になりたいと思っていた。車で旅行したとき事故を起こした車を見かけた。病院にいった時泣いている人を見かけた。そんな時、決まって僕は祈っていた。なんの意味もないことだと分かっていてもいられずにはいられなかった。そういうとき決まって自分も不安になったから。だから将来、誰も不安にならないようにできる人になりたいと子供ながら思っていた。けれど、周りの環境がそれを許さなかった、いや自分自身がそれを許さなかった。時に僕は親に切れたことがあった。それが僕が僕でいれなくなった原因かもしれない。言いたくは無かった。でも、理不尽に怒られたことがあった。我慢していた。何度も何度も我慢した。なぜなら、喧嘩が嫌いだったから。やりたくなかったから。でも、僕は何をしたかも分からず理不尽に言われるのに耐えきれなかった。何かしたなら分かる。でも何もしてないのに怒られるのは違うだろう。家にいるだけで邪魔。ことあるたびにお金がかかる。声色か目つきか容姿それらが原因で言われたのだろうか。何も僕は悪いことはしていない。耐えれなかったんだ。一度、怒鳴ってしまっては終いだ。その事実だけが残る。


何、いきなり怒鳴ってきて、フザンけんじゃないわよ。偉そうに。ここはあんたの家じゃないんだから。


そんなことが何度もあるうちに僕は反発する人と親から認識され、自身もその性格だと思う様になった。本当はそうはなりたくなかったのに。それを許してはくれない。知らぬ間に心にセーブがかかり今となっては変わることを自分自心が許せない。僕は優しくはなれないんだ。そういう人間なんだと思うようになった。家では毎日自分の部屋に引き籠もっている。親に喋られるたび、近づかれるたびに胸がくーと締め付けられてしまう。周りがみたら親は普通に見えるだろう。本当はそれは普通の親なのかもしれない。しかし、僕はそれでも自分の心はぼんやりと不安が渦巻く。親との会話、関係を聞いたら仲直りしなさい、いつからでもやり直せるなどという言葉を投げられるかもしれない。けれど、僕はそれが怖い。毎日、自分が変わるようで不安で泣いていたあの日を全否定されているようで。


学校でも、俺は隅の方でひっそり日々を過ごす。

唯一、憩いの場であった図書室にも周りの目が気になっていけなくなってしまった。

クソな人生。そう思うこともできないくらい周囲の目が怖い、そして、不安が毎度のように襲う。自分は誰にも迷惑はかけたくない。家とは違うんだ。そう思うだけで、日々殻に閉じこもってしまう。何なんだよ。休み時間勉強するふりをして下を向く。かんがえると自然に目に涙が出てしまう。けれど泣くわけにはいかない。そういう人だと思われるから。苦しさを誰にも共有出来ない。もっとも、したくない。自分の中で整理できるからと。


今日も授業が始まった。1時間目は現代文だ。

僕は左側、ローカのある方の席に座っている。

「ふん、ふん」

前の人からプリントを貰う。僕は下を向いていて気づかなかった。席に置かれたプリントを後ろの席の人に渡す為後ろを見る。目をできるだけ誰にもあわないように体をひねる。この何気ないどうさも自分にとっては大変だ。

今、前の人に睨まれた気がした。ごめんない心の中で誤った。

斗架読んでください。

アノ日が、…私のくる日だったのに其の日がおたとずれなかった。

噛み噛みで、呂律がまわらない様な話し方になってしまった。よかった笑われなくて。誰も反応していない。そして、次の人が朗読する。読み終えたその手は震え、冷や汗をかいていた。

昼休みとなった。皆、食堂にいったり、席をくっつけて弁当を食べる。その中、一人買ってきた。パンを食べる。そのつもりはないが食べるのも早い。そして、教科書を開いたり、本を見る。でも、周りが気になって悪魔で形だけだ。たまに入らない。休み時間が長く感じる。できるだけ目立たないように過ごす。本当に本当に目立たないようにする。なぜなら、他の人にとってこれは貴重な時間だとおもうから。だから、絶対に目立たないように、記憶に残らないようにする。

5時間目、英語。読み合わせがある。ペアそで。前の席の佐々木さんと。僕は睨まれる。

目を背けてしまう自分。

読むよ。

佐々木さんは席をこちらに向ける。

一日喋らないと滑舌も悪くなる。

i love you.……。

佐々木さんは、僕が読んでる最中、教科書越しにちょくちょくこちらを見る。

緊張しているわけではない。けれど小さな声になる。

佐々木さんは、僕が1文を読み終わったタイミングで次の一文を読む。けれど、聞こえないかったのか僕を睨む。

はい、終了。

読み終わると僕はまた睨まれた。

僕はまたこの世界に帰ってきた。14年前の学校に。

いじめられているわけではない。けれど、不安になる。常に不安が襲う。


帰りの会を済まし、いつものように家に帰る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る