第93話 ムニエルと南蛮漬け
【宣伝 アウトドアショップ書影公開!】
いつも拙作をお読みいただき、誠にありがとうございます(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
『第5回アース・スターノベル大賞』 にて《佳作》を受賞した作品がアース・スターノベル様より8月20日(火)に発売となります!
素晴らしい書影が公開されておりますので、こちらだけでも見ていただけると幸いですm(_ _)m
https://kakuyomu.jp/users/iwasetaku0613/news/16818093082111338412
――――――――――――――――
ジュ~
魚の焼けるいい香りが辺りに広がる。
行商人のヘーリさんと一緒に湖のほとりに泊まることとなり、少し話をしたところで晩ご飯の準備をすることとなった。今日はキャンピングカーの外で料理をしている。
ヘーリさんの方もテントを張りつつ火を起こしている。なるほど、こちらの世界のテントはあんな感じなんだな。
「よし、できた。それじゃあみんなで食べようか」
湖のほとりにあるキャンピングカーの前で焚き火をし、それを囲むようにテーブルと椅子を設置する。
日が沈んでいく湖面を見ながら焚き火を眺めつつ、後ろにはキャンピングカーがって素晴らしい光景となっている。
「おお、これは本当においしそうですね。私の分までいただいて本当にすみません」
「いえ、思った以上にたくさん釣れたのでちょうど良かったですよ。それにしっかりとお金は頂いていますから」
先程ヘーリさんと少し話をして、せっかくなら旅の話なんかをしたくて晩ご飯に誘ってみたところ、快く了承してくれた。
ヘーリさんはあまりおいしくない携帯食を食べると聞いたので、今日俺たちが釣った魚を一緒に食べないかと聞いてみたところ、銀貨2枚を支払うのでその分の魚を食べさせてあげるという話に決まった。
一応これから魚の有名なマイセンの街へ行くのに先に魚を食べて大丈夫なのかを聞いてみたが、しばらく携帯食料ばかりでうんざりしているからぜひにとのことだった。
キャンピングカーなら数日の道のりだが、馬車だと10日以上掛かるみたいだからな。魚もたくさん釣ったから無料でも良いかと思ったが、俺たちもいくらでもお金があるわけじゃないし、相手も気を遣ってしまいお互いのために良くないので、しっかりと対価は頂くことにしたわけだ。
「シゲト、これはなんという料理ですか?」
「これはムニエルと南蛮漬けっていう料理だよ。それにジーナとコレットちゃんが焼いてくれた塩焼きだね。それじゃあさっそく食べようか」
今日の晩ご飯は俺たちが自分たちで釣った魚を使って作った料理だ。さて、まずはムニエルからだな。
「……うん、パリパリとした皮の食感と、中はふっくらとしたジューシーな身とバターの香りが合わさっておいしいね! 我ながら思ったよりもうまくできたな」
ムニエルは魚の調理法のひとつで、魚の切り身に塩コショウで下味をつけて、小麦粉をまぶした後にバターで両面をカリッと焼いた料理だ。
バターは以前にジーナがホワイトブルの乳から作ってくれたものだ。やはりバターがあると調理法の幅が広がっていいよな。
「ぬおおおお~こいつはうまいですな! 新鮮な魚の身の旨みがこの香ばしい外側の衣から溢れてきます。そしてこの味付けがとても素晴らしい! 風味の良い香辛料が加わって、今まで味わったことのない味です! きっとこちらの香辛料も高価なものなのでしょう!」
……ヘーリさんのリアクションがすごいな。みんなもちょっと驚いている。
いや、今まで結構いいものを食べてきたけれど、普通に旅をしていたらあまりおいしくない保存食や携帯食をずっと食べなくちゃいけないから、その後に食べるおいしいものはそれ以上に感じるのかもしれない。
「これほどうまいものを食べたのは本当に久しぶりです! もしやシゲトさんは名のある料理人か何かで?」
「いえ、そんなことはないですよ。ただ、俺は遠い国から来たので、あまりこの国では知られていない調理法で料理をしていて新鮮に思えるのかもしれないですね」
まあ国どころか世界が違うんだけれどね……
「シゲト、こちらの南蛮漬けという料理は初めての味ですがとてもおいしいです! 小魚が丸ごと入っていますが、骨も柔らかくてそのまま食べられますね!」
「うん! 甘くて酸っぱくて不思議な味だけれど、本当においしい!」
「ホーホー!」
どうやら南蛮漬けはみんなの口にも合ってくれたようだな。酢を使った酸味のある料理は初めてだったから、こちらの世界の住人の口に合うかちょっと心配だったが問題ないようだ。
南蛮漬けは小さな魚を丸ごと食べることができる料理だ。
薄く張った油に小麦粉をまぶした小魚を入れて揚げ、一度油から取り出してから油をさらに高温にして二度揚げにすることによって頭や骨ごと食べられるくらい柔らかくなる。
そして揚げた魚にスライスした野菜を加え、お酢と醤油と砂糖を混ぜた調味液にしばらく漬けたら完成だ。この甘酸っぱい味が小魚に染みこんで美味いんだよな。
南蛮漬けは長く漬けたり冷やして食べてもおいしいから、半分くらい残して冷蔵庫で冷やしてまた食べるとしよう。
「ジーナとコレットちゃんが焼いてくれた塩焼きも本当においしいよ! やっぱり魚はシンプルにこうやって焼くのがおいしいね」
二人が作ってくれた塩焼きは半分そのままの塩味で食べて、残り半分はほんの少しだけ醤油を垂らして食べたが本当においしかった。
うん、魚の塩焼きはこういうのでいいんだよ!
シンプルな塩味もほんの少しだけ醤油を垂らした味も、新鮮な魚の身の味をより引き立てて最高だぜ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます