第2話 カーナビ


「……もしかして、このキャンピングカーの機能なんかをいろいろと拡張できたりするのか?」


 カーナビには日本語でキャンピングカーに関する様々な機能が表示されており、その横には○ポイントと書かれている。これはもしかしてポイントを消費して、その機能が使えるようになるのではないだろうか。


「現在のポイントは10ポイントか。この画面をタッチすればいいのか?」


 画面の右下には『現在の保持ポイント10』と表示されている。これが現在使用できるポイントということだろうか?


 画面をスクロールしつつ、1番上の『ナビゲーション1ポイント』を試しにタッチしてみる。


『1ポイントを消費して、ナビゲーション機能を拡張しますか? 【はい】or【いいえ】』


「おっと、ちょっとタイム!」


 ナビゲーションをタッチすると、画面が切り替わって、【はい】か【いいえ】を選べるようになったが、慌てて【いいえ】をタッチする。


 すると先ほどの画面に戻ってくれた。


「どうやってポイントを得られるかも分からないからな。もしかしたら、この10ポイントしか使えない可能性もあるし、ここは慎重に選ばなければ!」


 そもそもこのポイントというものはたったの10ポイントしかない。適当に使ってしまえば、簡単になくなってしまう。選ぶにしても、もっと慎重に決めなければ!




「……拡張できる機能の詳細まではわからないのか。細かい機能の説明が書いてあれば助かるのに、そのあたりは不便だな」


 選べる機能は一覧になっているが、細かい情報などは書いていない。実際に拡張してみて機能を確認してみるしかないのかな?


「いろいろと気になる機能もあるけれど、まずはこのナビゲーションの機能は必須か」


 ナビゲーションという機能はおそらくだが、カーナビ本来の機能だろう。とりあえずまずは目立たない場所へ移動しなければならない。ポイントも1ポイントだけだし、この一覧の一番上にある。ゲームとかでも、こういうものは上の方が重要な場合も多いし、まずはこの機能を取ってみよう。


『1ポイントを消費して、ナビゲーション機能を拡張しますか? 【はい】or【いいえ】』


 先ほどと同様の表示が現れたので、今度は【はい】をタッチする。


『ナビゲーション機能を拡張しました』


 ナビゲーション機能を拡張したという表示が現れ、右下の表示が『現在の保持ポイント9』となっている。


「おお、道が表示されるようになったぞ!」


 ★のマークをもう一度押すとさっきの画面に戻り、先ほどは自分の位置以外表示されていなかったはずのカーナビに周囲の地図が表示されるようになった。


「……さすがに検索機能なんかは使えないけれど、周囲の山や川なんかも表示されているのはとても助かるぞ。おっ、小さな集落なんかも表示されているっぽい。というか、これって相当ヤバイ機能なんじゃ……あっ、でも見える範囲の限界はありそうだな」


 基本的なカーナビの使い方は元のカーナビと同じらしい。表示されている範囲を縮小し、大まかな周囲の地図を確認することもできた。そしてここから離れているが、村か街のような表示もある。


 このカーナビに表示されているデフォルメされた絵だと、たぶん現代の家やビルなんかではなく、古い木造やレンガ造りのような建物ではないだろうか。そうなると、この地図を表示できるカーナビの機能や、このキャンピングカーという車自体オーバーテクノロジーな可能性が非常に高い。


「とりあえず、現状を把握するまで村や街に行ってみるのは止めておこう。川と森があるこの辺りに移動するか。森の木々が後ろにあれば、このキャンピングカーもそこまで目立たないだろ」


 幸いなことに、昨日納車されたばかりで、張り切っていろいろと準備をしていたこともあり、ガソリンや水や何かあった時の携帯食料なんかは十分に積んである。いったん落ち着いて現状を把握しよう。


『目的地が設定されました。目的地まではあと20分です』


 目的地にピンを指して案内を開始するボタンをタッチすると、音声が出てナビが始まってくれた。この辺りは元の世界のナビと同じみたいだ。しっかりとキャンピングカーが入れない森や山なんかは避けてくれている。


 キャンピングカーのアクセルを踏んで、移動を開始した。


「……当たり前だけれど、振動が酷い。この分だと、いろいろとすぐにガタがきてしまいそうだ。自動修復機能が2ポイントってことだから、次に取る機能の優先度は高いな」


 しばらく草原を走っているのだが、運転しながらかなりの振動が伝わってくる。ここは元の日本とは違って、整備された道ではないから、石なんかがそこら中に転がっているようだ。


 草むらで視界も良くないし、かなり慎重に進んでいる。多少は見晴らしもいいから、突然大きな動物がいたら、すぐに分かるはずだ。




『目的地に到着しました』


「よし、ここならさっきの草原よりは目立たないだろ」


 ナビゲーションが終了して、無事に目的地の河原へと到着した。ここなら高い木々のある森に接しているから、そこまでは目立たないし、反対側には小さな川があるから何か来たらすぐに警戒できる。


 ナビによると前も後ろも行き止まりではないし、小さな川だからキャンピングカーで無理やり渡って逃げることもできそうだ。


「……とりあえず地図や拡張できる機能を確認しながら、今日はここで一夜を過ごすか」


 先ほどよりは比較的落ち着く場所に来られたから、まずはナビを見てこの世界の状況や拡張できる機能をいろいろと検討するとしよう。いや、その前にまずは飯だな。さすがに朝から何も食べてないし、何か食べるとしよう。


「うわっ、なんだ!?」


 運転席を離れて、キャンピングカー内にあるキッチンで簡単な食事を作ろうとしたところで、キャンピングカーの少し先に何かがゆっくりと落下してきた。


「あれはなんだろう、白い鳥……いや、フクロウか」


 目の前にゆっくりと落下してきたのは大きな翼に傷を負った白いフクロウだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る