決断
第1話
アキは日本に住む16歳のただの少年だった。
家は貧乏で、兄弟は下に4人。
親は夜中に帰ってきて夕方に出ていく。
そして、夜中に帰ってきて親がやることは兄弟を殴ること。
その兄弟を守るためにアキは兄弟の何倍もの傷を作った。
中学を卒業する頃には、兄弟のために働くしか無かった。
仕事は限られ、やっとのことで就職した場所では、上の人達からの暴言と暴力。
アキはボロボロだった。
貴重な休みの日、久々に街へ出た。
平日にもかかわらずたくさんの人が行き来する交差点。
信号待ちをしていた時、何者かが背中を押した。
歩行者信号機は赤。
視界の端には、白い車が勢いよく突っ込んでくるのが映った。
アキはその時、少し安心してしまった。
もう、この不自由な生活を送らなくていいこと、暴力を受けなくていいこと、責任から解放されること。
目を閉じ衝撃を待っていたアキは、いつまで経ってもその痛みが来ないことに違和感を覚えゆっくりと目を開けると、1人の気品の溢れた美青年と目が合った。
驚いて周りを見渡すも、さっきのごった返すような量の人は居ないし、美青年は服装もまるでコスプレの、いやそれ以上の派手な王子様のような格好をしている。
「そなた、名はなんと言う」
「…アキ」
「アキ、この国を救って欲しい」
アキは悟った。
これは最近流行りの異世界転生を自分がしてしまったと。
そして嫌気がさした。
また、責任を追わなければならないことに。
「無理だ」
アキは差し出された手を跳ね除けた。
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