悪役令嬢・松永久子は茶が飲みたい! ~戦国武将・松永久秀は異世界にて抹茶をキメてのんびりライフを計画するも邪魔者が多いのでやっぱり戦国的作法でいきます!~
6-25 配役完了! 女神は通行人Aとなる!
6-25 配役完了! 女神は通行人Aとなる!
後は役者がそれぞれの役目を演じ切れば、すべてが“騙される”のだ。
「よし、テアよ、盛大に吹っ飛ばされろ」
「はい!?」
「
よりにもよって、無理やり茶番劇に参加させられる上に、任された役が悲鳴を上げて吹っ飛ばされる“通行人A”ときた。とてもではないが、女神の役回りとは思えなかった。
「もう少しマシな役目ないの!?」
「重要な役目だぞ。吹き飛ぶ天幕、轟く爆音、そして、女性の悲鳴。これらは危機的状況を“見せる”演出としては不可欠だ」
「誰が見るのよ!?」
「シガラ公爵軍の皆さんだぞ」
「う~ん、この外道」
確かに、今この天幕が吹っ飛び、
「それにほら、お前、うちの家臣に人気あるから」
「え。そうなの!?」
「『あの豊満な胸元に顔を埋めたい』だとか、『あの胸の重装甲に押し潰されたい』だとか、『いや、むしろにこやかな笑みのまま踏みつけられたい』だとか」
「……もうやだ、あいつら」
主君も主君なら、家臣も家臣であった。どういう視点で自分を見ているのか、今更ながらに知ることとなったテアであった。
「だいたい、主君の侍女に対してそういう目で見るの、どうかと思う!」
「え、別にいいんじゃない?」
「いいの!?」
「いや、だってほれ、ティースと違って、私の所有物というわけでないし、お手付きもしとらんし」
「しようとしたでしょ!?」
そもそも、目の前の男には出会って開口一番に床合戦を所望されるわ、転生直後に性的な意味で襲い掛かられるわで、ろくなことがなかった。
「そもそもの話、そんな“すけべえ”な体をしている方が悪い。姿を変える術があるのであれば、もちっと慎ましやかな姿を取れるであろうに、わざわざその姿を取っているのだ。その姿を人前に晒すという意味を考えた方がいい。そう思うだろ?」
ヒーサはアスプリクの方を振り向き、同意を求めた。
「いや、全くもってその通り! そのけしからん胸を持っていながら、見られたくないとかふざけんなよって話だね」
「ワンッ!」
「ちょっと、そこの駄犬、シレッと同意しないの!」
そして、テアは気付いた。この場には自分しかツッコミ役がいないことに。他全員が外道に真面目な連中ばかりの大ボケばかりであった。
性的な目で眺めてくる自称仁君。
嫉妬の炎を燃やす自称聖女
食いでがありそうと見つめてくる愛玩犬(?)。
気付けば完全包囲下にあり、なんだかドッと疲れが出てきたテアであった。
「いや、だって、これは本来の姿に似せて作ったんだし」
「化身、という言葉を知らんのか?
「いやいやいやいやいや、その方々はガチな御仁だからね。本体で降臨したら、色々とマズいから!」
「というわけで、見られる視線が気になるなら、明日から蛇にでも擬態するがいい」
「よりにもよって、悪魔側!?」
「私に巻き付いておけば、移動も楽だぞ」
そう言われて、テアは何となしに想像してみた。“仁君”であるヒーサには蛇の巻き付いた姿は似合わなかったが、“悪役令嬢”たるヒサコにはイメージ的にピッタリであった。
蛇を巻き付け、黒犬を侍らせ、優雅に玉座に腰かける。そして、傍らには怪しげな毒薬。魔女、あるいは妖婦という言葉をそのまま人の形にしたような、そう思えるほどに似合い過ぎていた。
「似合ってんじゃないの!?」
「そのようだな。ヨシ、今度、試してみるとしよう」
「えぇ……」
なし崩し的に蛇への変身を押し切られそうなことに、テアはただただ困惑するだけであった。
しかも、今回の一件が片付いたら、国境を越えてネヴァ評議国において“茶の木”の探索をすることになっているのだ。その時には本体はヒサコ、分身体はヒーサに変わっているので、実行される可能性は高かった。
異国から流れてきた旅する魔女、シチュエーションとして似合い過ぎて恐ろしいくらいであった。
「では、今後の楽しみも増えたことだし、今は今で“ひ~ろ~しょ~”を楽しむとしよう」
「楽しいのはあなただけでは!?」
「こいつらも楽しそうだぞ」
ヒーサの指さす先にはアスプリクと
「な?」
「な、じゃないわよ、まったく!」
相棒だけでなく、その“愛玩犬二匹”もおかしい。“清浄”なのは自分だけなのか、テアは混乱する一方であったが、すでにヤノシュは始末してしまっており、引き返すことすらできなくなっていた。
ならば、この
テアは天幕の入口付近に立ち、一度深呼吸をしてからキッと
「さあ、始めましょう」
他の顔触れもすでに配置に着いた。
ヒーサは上座に腰かけ、左側にアスプリクが座し、右側に
「『魔王復活を阻止せよ! ~ 仁君・聖女 VS 暗黒司祭・黒犬 ~』、演目開始だ!」
もうツッコミをいれる気もなくなったテアは、さっさと悲鳴を上げた。甲高く、それでいてどことなく色艶のある叫び声だ。
そして、
かくして、一連の騒動の終止符を打つための、熱の入った
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