悪役令嬢・松永久子は茶が飲みたい! ~戦国武将・松永久秀は異世界にて抹茶をキメてのんびりライフを計画するも邪魔者が多いのでやっぱり戦国的作法でいきます!~
4-14 激突! 悪役令嬢 VS 悪霊黒犬!(4)
4-14 激突! 悪役令嬢 VS 悪霊黒犬!(4)
『
普段のポンコツぶりなこともあってか、役に立たんな~と思っていた評価が、グルリと一変した。
「的確な助言、ありがと。てか、初めて役に立ったんじゃない?」
「言わないで。てか、これが本来のスタイルなのよ」
テアの言う通り、これが正しい
しかし、この組み合わせが転生してからと言うもの、やって来たことは“暗殺”ばかりなのだ。
(毒殺、爆殺、騙し討ち、あとは舌戦か。それと……、“床合戦”は考えないようにしよう、うん)
思い返してみれば、ろくでもない事しかやって来てないなと、テアは苦笑いした。
だが、ようやく正道に立ち戻った。そう感じることができたのだ。
もっとも、この二人の仕事はあくまで“斥候”、つまり情報収集が役目なのだ。戦闘とは無縁であるべきで、情報収集に専念できる方がよかった。
こうして難敵を単独で戦うことは、役目を忘れた逸脱行為とも言えた。
「とはいえ、ちゃんと防げてよかったわ。さっきのが
「なんてとんでもない術よ。まだ頭がガンガンするわ」
「頭痛で済むだけマシよ。……【
テアは必殺の一撃を防がれ、露骨に怯んでいる黒犬に探知系の術式を使った。
実のところ、これは禁則事項に該当する。降臨した神は、術の使用を禁止されている。使っていいのは、異世界に滞在するための偽の身元情報を操作するときや、転生者への探知系術式によるステータス確認など、使える場面が非常に限定される。
そして、“敵”への直接探知は【魔王カウンター】を除けば、原則禁止であった。襲撃された場合は、あくまで転生者の力を使って切り抜けねばならず、神としては助言と言う名のお告げを出すことになっていた。
つまり、テアは自ら進んで違反行為を行ったのである。
何度連絡を付けようとも通じない上位存在に業を煮やし、世界そのものへ積極的に干渉することを決めたためだ。
利用できるものは利用する、やれることには手段を選ばない。良くも悪くも、“
「よし、今のでMPは枯渇した。HPももうほとんど残ってない」
「……なら、行けるわね!?」
「ええ。ヒサコ、やっちゃって!」
もう何をするかは二人の間では決まった。
ヒサコはとどめを刺すべく、黒犬に向かって突っ込んでいった。
すでに満身創痍の黒犬であったが、最後の力を振り絞り、迫ってくるヒサコに対して前足を繰り出した。ちょっとした丸太のような太さがあり、人間の頭くらいならへし折りそうな勢いであった。
「なんのぉ!」
ヒサコは勢いそのままに鍋を前に繰り出し、
鍋は黒犬の前足を弾き、衰えぬ勢いのまま
その黒い巨体はピクピクと痙攣し、もはや完全に虫の息であった。
「ヒサコ、今よ!」
「そりゃぁ!」
ヒサコはとどめの一撃を倒れた黒犬の脳天に叩き込んだ。ゴチンと言ういい音を響かせながら、鍋が黒犬の頭を砕いた。
「スキル発動、【手懐ける者】!」
倒した相手を支配下に置く、ヒサコの持つスキルだ。元々は【大徳の威】からの派生スキルであり、倒した相手ならば二体まで支配することができた。
黒犬はドロドロに溶け始め、その黒い液体がヒサコの影へと流れ込んでいき、あの大きな体が跡形もなく消え去ってしまった。
だが、消えても手足には感触が残り、先程まで繰り広げられていた激闘が夢などではないことを伝えていた。
そして、影の中に蠢く何かとも繋がっている感覚があり、それを支配下に置いていることも認識できた。
一度は死をも感じた戦いであったが、どうにかこうにか勝利を得ることができた。
歩み寄ってきたテアとハイタッチしながら、二人は叫んだ。
「「勝利!」」
死地から帰還したことに感じ入る原始的な喜びに、二人は満たされた。
損害もそれなりに受けたが、得たものはそれ以上に大きい。女神と悪役令嬢の織りなす初の怪物退治は、見事なまでの勝利で幕を下ろした。
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