花咲小学校へ
「ホントにきちゃったな…」
人の往来が少ない改札を抜け、駅を出てすぐに見えるのは、
通り抜ける交通量に対して無駄に広いとしか言えない”ロータリー”と呼んで良いものか迷うスペース。ひび割れたアスファルトが駅の閑散さを助長させる。
旭川市から特急ライラック・カムイに乗り、札幌市で特急おおぞらへ乗り換え。
釧路市から根室本線のワンマン電車に揺られ、合計で10時間近くかけ、ようやく到着した故郷は10年経っても変わり映えのない景色だ。
2022年7月、移転に伴い解体が決まった、花咲小校旧校舎が一般公開され、
それを偶然SNSで見つけ、衝動的に故郷のこの地に戻ってきてしまった。
何故、今になってトラウマのある土地に、しかもその原因でもある学校へ行こうと思ったのかは自分でも何かに呼ばれた気がしたとしか言いようがない。
駅前の通りを抜け、
子供の頃はとても大きく見えたホテルも、大人になり改めて見ると本当にここで当っているのかと思えるくらい小さく見える。
都会の人に、ちょっとした立体駐車場と言われても疑問に思わないくらいの大きさだろう。
とにかく一泊し、翌日小学校へ向かうことにしよう。
チェックインをし早々と部屋のベッドに横になると、移動疲れからか夕方にも関わらず深い眠りに落ちた。
~ ~ ~ ~ ~
翌日、海沿いを進み学校を目指す。
冬には流氷が流れ着く光景を思い出しながら歩き、思った以上に早く学校まで着いてしまった。
ホテルと印象といい、子供のころはあんなに広かった世界がこんなに狭く感じるのは小さな冒険をしていた思い出まで矮小化されるようで少し悲しい。
小学校はあの頃に感じていた、要塞のように大きな印象はないものの、校門、校舎の時計、玄関、全てがあの日のままだ。
かつて自分が毎日通っていた玄関でスリッパに履き替え、コの字の校舎を見て回る。
校舎の中央には体育館があり、そこを通り反対側まで行くこともできる。
普通なら1階を見たら次は2階だが、何故か気づけば3階へと昇っていた。
いや、違う、きっとココに来たかったんだ。図書室、彼女が毎日いたココに来たかったんだ。
今でも彼女の定位置は覚えている。本好きで気が弱く、でも人に優しい。
そして…屋上から飛び降りて死んでしまった彼女。
あの日のことは記憶から抜け落ちてしまっている。
彼女が飛び降りたことも両親に聞いただけで今も実感はない。
旭川へ引っ越した後に医師…恐らく精神科医が言うには、許容できないショックから自身を守るために記憶に蓋をしたのだろう、とのことだった。
吸い寄せられるように彼女の定位置に座り、室内を見回す。
ふと目についた本棚の一冊から奇妙な引力を感じ、目が離せない。
スピリチュアルなことはあまり信じていなが、こんな感覚の時は触れない方が良い。
解っていた、頭では理解していたが、身体は脳から切り離されたように自然とその本を手に取り開いていた。
「真っ白…」
本はどのページも白一色、これではただの自由帳だ。
本を見つけたときに感じた奇妙な感覚は気のせいかと本を閉じる。
そして瞬き一回、本当に一度だけ目を閉じ、開いただけなのに、
周りの景色は懐かしい図書館ではなく、見覚えのある別の場所へと変わっていた。
「ここって明治公園…?」
学校の帰りによく皆で遊んだ公園。
敷地内に複数の公園があり、BBQスペースや広い原っぱもあり、低学年の遠足場所にもされる程の大きさの公園、忘れるわけがない。
辺りには遊具で遊ぶ子供たちに違和感を覚える。
違和感の正体はすぐに解った、服装が古い、それこそ自分が子供のころに着ていたような服装だ。
よく見れば、今では危険とされ、撤去されるような遊具まである。
全く理解が追い付かない中、ベンチに座る女性がこちらに来いと声をかけてくる。
どうするべきだろう…
【女性に近づく】
https://kakuyomu.jp/works/16817330668125555555/episodes/16817330668128655868
【無視をする】
https://kakuyomu.jp/works/16817330668125555555/episodes/16817330668128424597
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