第130話 『特別な人』

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「そうでしたか。


 昨日はそんなことがあったんですね、ちっとも知らなくて。

 ほっとしました?」



「うーん、ほっとした。ストーキングはメンタルやられるよ」


「相原さんてモテそうだから……。今回で何人目ですか? 

ストーキングされたの」



「いやいやいやぁ~、今回のようなのは過去に一度も……」

と言いながらハッとした様子の相原さん。


 何かを思い出して困っているようだ。


「過去に一度や二度はやっぱりあるんですねー」


「いやっ、そんなこともないけど」


「そういう掛居さんはどうなんだよ」


 やだっ、私に火の粉飛ばさないでぇ~。


「私ですかぁ~。えっと……」


 私は右手の親指から薬指まで順に折り曲げていった。


 相原さんの表情を見てるとおかしくなっちゃった。


 小指も折り曲げてやろうかと思ったけど、くだらないパフォーマンスをしている自覚はあるので止めた。


「私は生憎一度もありませんよー。

 大体言い寄られたりしたことないですもん。寂しいもんですよ」


「じゃあさ、実際のところ相馬綺世とはどうなってンの?」


「気になります?」


「ちょっとだけ」


 彼は親指と人差し指でつまむような形にしてそう言った。


「じゃあ世間には公表してないけど相原さんだけに教えますね。

 いいですか」


「いいよ、心の準備はできてる。心おきなくどうぞ!」


「仕事のパートナーとしては仲良くさせてもらってますけど、個人的には

付き合ってません」


「ほんとに?」


「ほんとにほんと、本当ですよー」


『それにもし私が相馬さんと付き合ってる恋人同士だったら、

凛ちゃんと二人といえども、部屋にあなたを招いたりしませんよ』

と言いたかったが、それは言わないでおいた。


 凛ちゃんがひとり遊びに飽きて相原さんに抱っこをおねだりしてきたのを機に、私は昼食の支度に取り掛かった。


 凛ちゃんにおうどんを短く切って出すと、喜んでたくさん食べてくれた。


「ご馳走さま。美味しかったよ。いいよなぁ~、寒い時に暖かい食事」


「そうですよね。喜んでいただけて良かったです」



 さてと、では肝心の各部屋を案内するとしますか。


 私はルームツアーを始めた。


 どの部屋を見ても『へぇ~、いいね~』と感心してくれるので

招待した甲斐があったというもの。



 こんな風にして、私たちのルームツアーDayは無事終了したのだった。

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