第128話 『特別な人』

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⌚時計の時刻を見るとすでに9時を回っている。


 どうしようか……。


 迷った末、花は相原にメールを送った。


「こんばんは。


 こんなに遅い時間になってからの申し出なので都合がつけづらいかもしれませんけど、明日よろしかったら凛ちゃんと一緒に我が家のルームツアーに

いらっしゃいませんか? 


 まだ片付けが完璧ではありませんが完璧を目指していたらきっと、

いつまで経ってもお誘いできないと思うので見苦しいところは

目をつぶっていただけたらと思います」



 もう寝てるかもしれないな……。


 ちょっと悲観的予測をしていたところへ、返信が届いた。



「ぜひ、行きたいなぁー。凛、連れて行くね。何時頃がいいのかな」


「11時頃如何ですか? お昼は天ぷらうどん作りますのでお楽しみに~」


「期待してるー。じゃあ、おやすみ」


「お待ちしてまーす。おやすみなさい」


 きゃあ~、やったぁ~♡明日は二人に会えるぅ~。

 さてと、早起きしないと……早く寝よっ。

          


          ◇ ◇ ◇ ◇


 公私共に充実している掛居花の夜は静かに更けていった。


 街路樹も葉を落とすようになったとはいえ、迎えた朝は気持ちの良い

お天気で、寒くはあるけれど凍えるほどではなくカラッとしていた。



 穏やかでよいお天気だけど、それでもやっぱり肌寒くって7時に

起きようと思っていたのにウダウダしちゃって布団から出た時は8時になってた。



 ここからは少し頑張って動いた。


 身だしなみを整えると昼食の下準備をし、それから部屋の中を

再チェックっと。



 相原さんと凛ちゃんが自分の家に来るなんて不思議な感じがする。


 ドキドキしながら二人を待っていると『ピンポーン~ピンポーン~』

下からのインターホンが鳴った。


『どうぞ』


 私はそう声を掛けた後、玄関に向かいドアを大きく開け放ちすぐに室内に戻り二人を待つ。

 ドキドキ……。


 ほどなくして相原さんがにこやかに顔を覗かせた。


「やぁ、遠慮なく来させてもらったよ」


 そう言いながら凛ちゃんを抱いたままドアを器用に閉めた。

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