野菜が食べやすくなればいいのに

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 野菜が食べやすくなればいいのに。


 苦いし、色が死んでる(と思っている)やつがあるし。


 点々ついてるやつもあるし。くせつよだし。


 そう子供の頃に思いながら育った俺は、変革の時を目にしていた。





 野菜は変化した。


 急激に。


 何があったのか分からないけれど、ある時を境に急激に食べやすくなった。


 神が悪戯でもしたのかな。


 とにかく食べるのに抵抗がなくなった。


 子供達は喜んで野菜をたべて、大人達は大助かり。


 大人になっても野菜が苦手のままだった人も、感動していた。


 野菜の摂取量は、みるみるうちに増えて言って、多くの野菜マニアが誕生。


 野菜を活用したレシピなども、多数開発されていった。


 うーん。


 とても素晴らしい事だけど。


 こんなに、一気に変化するものなのかな。


 なんか不自然な気がするんだよな。







 とあるやけくそな研究者は思った。


 俺は野菜が嫌いだと。


 なんであんな奴等に味が付いているんだと。


 だったら味なんて失くしてしまえばいいじゃないかと。


 そうしてやけくそで開発された味の薄い野菜は、偶然にも偉い人達の耳にとどいて。


 偶然にも偉い人達が野菜嫌いなのもあって。


 なんでかそのまま、開発が進んでいって、味の薄い野菜が増産される事になった。







 そんな研究者は今、味の薄い野菜をもしゃもしゃ食べながら、思索にふけっている。


 俺は野菜が嫌いだ。


 でも嫌いだからといって、野菜の個性を殺してしまって良かったんだろうかと。

 


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