第6話

あの時から見ることはおろか、通ることさえしなかった忌まわしい風景がいきなり眼前に突きつけられて、脳内が一気にぐっちゃぐちゃに乱された。

「あああ、」

じゃあ、誰かが私の部屋に入って、そんで、荷物、あさって、、、

早く誰かに言わないと、あ、お母さん今いない、じゃあ純香、ケータイは。

床に置いてあるカバンにつかみかかってケータイを探す。焦って手がもつれて見つからない。その時、ふっと鼻をすえた臭いが掠める。ふっと息が止まる。いや、気のせいだ。でも間違いなかった。臭いが鼻から脳へと広がって背中側から全身に広がっていくような感じがした。背後のベッドから、いや、ベッドの下からカリカリという音がする。まるで、何かがベッドの床板に擦れながら動いているような。

金縛りにでもあったかのように動けない。何も考えられなかった。なけなしの力で振り返った私が最期に見たのは、嫌悪感を催す動きでベッドから這い出て私に覆い被さったヤツの、フードの中身だった。

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