往復
@kawazukun
第1話
「やばい、遅刻するっ!」
私は家中を慌ただしく動き回りながら学校へ行く準備をしていた。
兎羽真由美、高校2年生。高校生活ももう二年目なのに今日も遅刻しかけている。
中学校まではお母さんが家にいたけれど、高校入学をきっかけに「もう真由美も大きくなったし、働こうかしら。」と言われた。最初は「もう高校生なんだし、1人でできるよ!」なんて言っていたが、今ではすっかりこの様である。
「行ってきます」と言い、ローファーを引っ掛けたところで気づいた。今日は体育だ。ジャージを入れるのを忘れていた。「ああ、もう。」もどかしい気持ちで2回の自分の部屋まで駆け上がる。しかしこういう時に限ってジャージが見つからない。ハンガーに掛けていたはずなのに。ようやく箪笥に仕舞われていたジャージを引っ張り出して、部屋のドアノブに手を掛けて勢いよく押したその先には、、、学校の廊下が広がっていた。
「は?」全く意味がわからなかった。自分がいまだに持っているドアノブは自分の部屋のもので。しかしその外側は学校の非常階段のドアだった。
「マユ、おはよー」朝らしい間延びした声ではっと我に返る。急いでドアノブを離した。
「何、遅刻しそうになったから非常階段から来たの?すご、遅刻神回避」なんて言っている友達は石田純香。中学校からの親友である。「へへ、まあね。」なんて曖昧に誤魔化しつつ、その時になったチャイムにかこつけてその場を離れた。
その日の授業は少しも頭に入らなかった。放課後、件の非常階段へと向かった。心臓がバクバクいっている。浅い呼吸を繰り返しながらドアノブを捻ってばっと一気に引くと、、、やはり自分の部屋へと繋がっていた。
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