第14話 99

「何度も言いますが、俺はパロディは嫌いです。怒られる可能性あるし、なにより知らない人には通じない」まぁ……パロディ好きな人がいるのは認めるけれど。「ともあれ……謎は解けましたよ」

「私が分身した理由か?」

「はい」その前に、一応確認。「その製薬会社って……ゲームと関わりがありますか?」

「ああ……そういえば社長が無類のゲーム好きだと言っていたな。とくにマ――」

「それ以上言わないでください」名前を出すのは危なすぎる。「そこまで聞けたら十分です」


 まぁ社長がゲーム好きじゃなくても、あの赤い帽子のヒゲほど有名なら、そこから着想を得てもおかしくないけれど。


「ちなみになんですけど、警部が食べたキノコの隣に、赤いキノコがありませんでした?」

「そういえばあったな。派手なきのこは毒だと思って食べなかったんだが……」そもそも緑も食べるな。「その赤いキノコは、毒だったのか?」

「……たぶん、食べたら体が大きくなっていたと思いますよ……」

「き、巨大化実験を行っていたということか?」

「……そうかもしれませんね……」


 なんで製薬会社があの赤いキノコを開発しようとしているのかは不明だ。不明だが……たしかに完成すれば世界を揺るがしかねない兵器になるな。


「それで……私が食べたキノコの正体はなんなんだ? あまりにも気になって、まともな推理ができなくなってしまうじゃないか」

「……」最初からできてないだろ、というツッコミを飲み込んで。「固有名詞は使えませんが……まぁ、そうですね。おそらく警部は今、異常に増えたことになっています」

「……残機?」


 そこから説明が必要か。普段ゲームをやらない人には聞き慣れない単語なのだろう。


「要するに……残機が10個あったら、10回コンティニューができるってことです。ゲームとかでよく使われる用語ですね」他の業界でも使われるのだろうか。「その残機を増やす方法が……まぁ有名な赤い帽子の男なら、緑のキノコを食べることなんです」

「つまり私は……緑のキノコを大量に食べたから、何度もコンティニューができる状態になったわけだな?」

「……確証はないんで、自害とかはしないでくださいね」製造に失敗して、ただの分裂薬になっている可能性もある。「ともあれ……俺に解決できる問題じゃないみたいですね。体に害がないかは、医療機関で聞いてください」


 というか……最初から医療機関にいけよ。なんで探偵を呼び出したんだよ。さすがに探偵が頑張る領域を超えてるよ。


「そうか! わかった!」


 元気よく言って、警部……いや、警部たちは体育館から出ていった。


 ……ふと気になって、増えた警部の数を数えてみた。体育館のドアから律義に一人ずつ出て行ってくれたので、数えやすかった。


 その人数は……99人だった。


 いや……


 なんだこの事件。今までで一番意味がわかんねぇ……

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