あまりにも適当すぎるバカミス
嬉野K
あまりにも適当すぎるバカミス
足跡のない現場
第1話 さすが師匠です
「この事件にはトリックなんてものは存在しませんよ警部。存在するのは……そうですね。『なんで俺を呼ぶ必要があったの?』という想いだけです」
雪の降る真夜中の公園の中で俺がそう言うと、目の前の警部が目を丸くして、
「なんだって? つまりキミが言いたいのは『なんで俺を呼ぶ必要があったの?』ということか?」
「そう言ったんですよ」丸々同じことを俺も言った。「あの、警部……毎回言いますけど、多少は自分で推理とかしてから俺を呼んでください。そりゃ俺は探偵ですので依頼は大歓迎なんですけど……」
「なんだって? 事件の真相を教えてくれる?」
「誰と会話してるんですか」
俺と会話してるんだよな? 俺の後ろに守護霊とかいないよな?
ともあれ……とりあえず推理して帰ろう。いや……マジで推理とかそういう次元じゃないんだけれど……
そう思っていると、俺の隣にいた女子高生が、
「師匠。この事件の謎が解けたんですか?」
「誰? キミ。初対面だよね?」
その女子高生は……この夜中に制服姿だった。しかも少し汚れている。
「違いますよ。出会ったことないだけです、ということにしておきます」
「初対面だよね?」俺がおかしいの? 「ま、まぁ……あれだ。謎は解けたよ。というか……なんで俺が来るまで、誰も気づかないの?」
「さすが師匠です。つまり師匠は『お前らみたいな低能と俺を一緒にするな』って言ってるんですね?」
「俺そんな事を言う人間に見えるかな」見えるんだろうな。「……とりあえず、そんなこと思ってないよ。純粋になんで気づかないのかなって疑問に思ってただけで……」
「そりゃ作者が考えるの嫌になって、なにもかも適当に書いてる作品ですから」
「メタ発言やめて」俺はそういうの嫌い。「と、とにかく……現状をまとめてみようか」
早いところこの空間から逃げたい。俺まで狂ってしまいそうだ。
「うむ」警部が手帳を見て、「犯行現場は雪の降り積もる公園。その公園の砂場の真ん中に死体があったんだ。しかし……その周囲に足跡は1つもなかった。あったのは無数の力士がつっぱりの稽古をしていた跡だけだ。そのことから我々は自殺だと判断したわけだ」
雪の降り積もる場所を歩いて足跡をつけないのは不可能だ。たしかにこの説明だけを聞けば、自殺のお話に聞こえる。
しかし……いざ現場に来てみると重大な証拠が残っていたのだ。その証拠にさえ気がつけば、この事件が他殺の可能性もあるということには簡単に気付けるのだ。
というか警部……自分で言ってて違和感ないのかな。なんで真顔でさっきのセリフが言えるんだろう……
その証拠とは――
☆
読者への挑戦状っぽくなっていますが、そういう作品ではないのでお気軽に次のページにお進みください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。