14
雨の日曜日の夕暮れは訪れが早い気がする。信哉は薄暗い部屋で光を放つ五枚のモニターの一枚に向かって話しかける。
「そっちも雨?」
「うん」モニターに映った女は答える。
やや面長の顔に長い髪がかかる。濃い目のアイラインを引いているが表情は穏やかだった。そんなメイクをしなくても美しいだろう。
信哉は要件を切り出した。
「コージが、さ」
「コージくん?」女が戸惑ったように首をかしげた。
「うん」
はるかはひとりごとのようにつぶやいた。
「元気かな――」
「コージがおれたちを探している」
彼女は何も言わずに目を伏せる。何かを考えている。
「会いたいか?」
「ダメかな?」
問い返されて、信哉は戸惑う。
「でも」
彼は答えを探す。見つからないことは最初からわかっている。
彼女が静かにいう。
「ノブくんも疲れたと思う」
そんなことはない、といいたかった。けれど、自分の口から出る言葉を彼は止められなかった。
「まあ――、な」
いつになく素直な彼に、彼女は微笑みかける。
「会わせて」
「いいのか?」
「うん。それでおしまいにしよ?」
彼は大きく息を吸う。目を閉じてゆっくりと吐き出した。彼が黙っている間、彼女はモニターの向こうで窓に目をやる。そして、向き直ると口を開いた。
「ねえねえ」
「ん?」
「なんでもない。黙っちゃったから」
二人からクスクスと吐息のような笑いがもれた。
笑っていたつもりが、思いがけず熱く浮かんできた涙に信哉はうろたえる。
「すまない」
「いいの。今まで本当にいろいろありがとう」
はるかは静かに微笑み続けていた。
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