くノ一サンタのクリスマス

かなちょろ

第1話 くノ一サンタのクリスマス

「これで準備よし」

 くノ一として初めての任務クエストだ。

 今夜弟の部屋に忍び込む。


 私はくノ一、多分くノ一、恐らくくノ一。

 前に田舎でおじいちゃんと見た時代劇に出て来たくノ一に憧れ、5年間日々修行をこなして来た。

 その修行の成果を今夜見せる時。

 今日はクリスマス。

 ウチの両親はこんな日でも仕事で帰ってくるのが遅い。

 だから私が弟の面倒をみている。

 弟を寝かしつけて、任務クエスト開始。


 ウチの家には暖炉や煙突は無い。

 だから窓からの侵入となる。

「くノ一忍法針金の術」

 二本の針金で窓の鍵をガチャガチャといじる。

 鍵は開かない。

 けど、忍法石割りの術は危険なので封印している。

 仕方ないので、弟の部屋に行き、窓の鍵を開けて外に出る。

 窓から忍び込む事に成功!


 抜き足差し足忍足で弟のぶら下がっているくつ下にプレゼントを入れる。

「よし、これでくノ一としての任務クエスト達成だ」

 私は外に出ようと窓をよじ登っていると、後ろから声がする。

「だれ? サンタさん?」

 しまったーー! 見つかったーー!!

 正体を隠す為、弟の純真無垢な問いに思わず「フォフォフォ、そうじゃよ」 と答えてしまった。

 弟に顔を見られない様にあっちこっちに動かす。

「なんでサンタさんのお洋服赤く無いの?」

 弟からの鋭い質問。

 私はくノ一の格好で忍び込んでいる。

「そ、それは洗濯したら色落ちしちゃって……」

「なんでお髭無いの?」

「さ、最近は髭が無いほうが流行はやりだからですじゃ」

「そう……なんだ……、ふぁああ……」

「さ、もう寝よう。 明日起きたら良い事があるかも知れないよ」

「うん、わかった。 それじゃ僕が寝るまでサンタさんと手を繋いでいて良い?」

「良いけどどうして?」

「サンタさんと手を繋いでいるとなんだか落ち着くんだ」

 そして私は弟が寝るまで手を繋いでいた。

 その間に私も寝てしまったようだけど、起きたらパジャマ姿で自分の部屋のベッドにいた。


 起きて行くと、両親は既に仕事に行ってしまった。

 でも私宛に手紙が置いてある。


【今日は二人共早く帰って来ますね。 皆んなでクリスマスパーティをしましょう。 それと弟にプレゼントありがとうね、小さなサンタさん】


 私は任務クエストに成功したのだ。

 起きて来た弟は夜にサンタさんに会ったと大喜び。

 ただ、普通のサンタクロースとはかけ離れてしまったようだけど……。

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