再会したら有名配信者になっていた

しがと

第1話 初恋はあなた

 高校1年生の時。入学して初めて話したのは後ろの席の岡田君だった。彼が落とした筆箱を拾ってあげたのがきっかけだ。彼は前髪が長く声もぼそぼそとしていたので、顔も声もよく分からなかったがとりあえず、これからよろしくね、と言った。


 それからよく岡田君と話すようになった。正確に言うと私が話しかけていたのだが。彼は人に興味がないらしく、いつも人と距離をとっていた。そのため、提出物を出し忘れていても誰も彼に指摘しておらず、よく先生に注意されていた。そのことを知った私は、明日期限だよ、などと彼に話しかけていたのだった。


 よく指摘していたからか、岡田君は私のことは受け入れてくれているようだった。授業間にゲームしている彼は、いつから好きなのかやどこが面白いのかなど、私の質問に答えてくれるようになった。


 それからは、ゲームのことだけではなく彼自身のことについても聞くようになった。4つ下の妹さんがいることや、ご両親と4人で暮らしていること、運動やスポーツは必要最低限に抑えて残りの体力はゲームに使っていることを教えてくれた。一度、人と距離を置いているのはなぜか聞いたら、『興味ないのに理由ってある? 上柿さんだって興味ないことがあったとして、なんで? って言われたら理由言えなくない? 興味ないものは興味ないからさ』、と言われた。まあ、確かに。


 それから体育祭や文化祭を通して、岡田君とはより仲良くなったと思う。困っていたら助けてくれることが増えたし、岡田君と冗談を言い合うような関係になった。


 彼との距離が縮まるにつれ、彼のことを1人の異性として意識するようになった。人に興味がないと言いながらも、黒板の消し忘れやゴミの捨て忘れがあったら率先してやっていたし、カップルがいちゃいちゃしていたら空気を読んで退室したりしていた。(ちなみに、以前は気にせず教室にいて私がつい連れ出してしまった。何するの? と少し責められたけれど)そういう姿を見て彼が方向へ変わってきていることを感じ、他の人にこの良さを知られたくない、と思っていた。


 彼の私への態度が大きく変わったのは、2年生になってしばらくしてからだった。私が校内1イケメンと言われる先輩に告白して振られた、という噂が出た頃だった。(真っ赤な嘘なのに、1年生にまで広まっていたので訂正するのも面倒でしていなかった。岡田君はそういうのに疎い人だから、勘違いされることもないだろう、と思っていたので放置していた)それからは、すごく優しくなったし、間違えたからあげる、と言って学校にある自動販売機で売っている私の好きなジュースをくれるようになった。なぜこうなったのかは分からないけれど、好きな人に優しくしてもらえるので何も聞かずにそのままにしていた。

 


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