武器集めの旅

「それで場所は分かるのか?」

「あぁ2つほど人間に発見されていない4級ダンジョンがある」

「そんなあるのか? 4級は1つの県に3個くらいらしいが?」


高難易度ダンジョンはそんなに多くは出現していない、あくまで人が発見した範囲では

かなり分かりづらい場所にあり見つからないという事もある


「それはあくまで人間が見つけた数だ。もっとある」

「そうなのか」


バルフェリアに案内されて進む

暫く街中を歩いた後近くの森の中に入る

獣道くらいしかなくここ最近人が入った形跡は無い

(こんな場所にあるのか)

こんな場所にダンジョンがあっても確かに気付かない

意図的に探しでもしない限り見つかることはないだろう

そのまま森を進む


「ここだ」


バルフェリアに言われ足を止める

もろ森の中、足元には背の高い草が生えて周りの木々の枝が身体に当たっている


「何処?」

「足元だ」

「足元?」


足元を見るが草が生い茂っているだけでそれっぽい物は見つからない


「固定概念に惑わされるな。ダンジョンは人間にとって未知なのだろ?」

「まさか」


足元の草を払い屈んで確認する

土の色、土と同じ触感、本当に注意しないと全く気づけない

丁度足元に本物の土との境目が有った

そしてその周辺を指でなぞると取っ手が指に当たる

(なんだこれ? ……取っ手だな)

その取っ手を掴み上に引き上げる、思ったより軽く簡単に持ち上がる

地下に続く階段を見つける


「マジか……」


思わず声に出る、言われた通りにしてみたが本当にあるとは思っていなかった

これは案内が無いと本当に気付けない、そのくらい入り口が完璧な擬態をしている


「まだ信じていなかったか。貴様が知りえない情報を幾つかくれてやったのに」

「やっぱり実際に見るのとは違うんでね……」


土のような物の塊をそのまま押し上げて退かす


「この先がダンジョン?」

「あぁ、4級ダンジョン」

「そう言えば気になってたんだけど魔物側も4級とか使うんだ」

「人間が使っている言い方をしてるだけだ。他の言い方がある。その方が分かりやすいだろ」

「確かに分かりやすい。ここにはどんな魔物が出てくるか分かるのか?」

「主については知っている。まぁ大体の予想は出来る」

「予想出来るんだ、どんな魔物?」

「言わぬ、どんな魔物でも対応出来るようになれ」

「ケチだなぁ」

「我はそこまで甘くない。早よ行け」

「へ〜い」


階段を降りる

かなり明るく足元がしっかりと見え問題なく進める

罠に警戒して進むが特に何も無く階段を降りきる

階段を降りきる、階段の先は狭い一本道、横並びで成人男性が2人並べるかどうか程度の横幅をしている

天井も低い


「これはエグイな」

「あぁこの地形は厄介だ。攻撃そのものは異能で回避すれば問題は無いだろうがこうも狭いと異能の利点が発揮しづらい」

「回避不可な規模の攻撃をされたら終わりなんだけど……」

「今ある手で何とかしろ、魔物が湧いたな。やはり予想通り」

「うげぇ……まじかよ」


魔物の姿には見覚えがあった

現実でではなくフィクションの中で

澪はアニメやゲーム、映画そう言った物を好んで見る

そしてそう言った物には様々な王道やテンプレと言われるほど広く使われている設定がある

その数多のテンプレ設定の中の一つ


「まじかぁ……進みたくねぇ」

「つべこべ言わず行け、こいつらはさして強くない」

「強い強くないの問題じゃねぇのよ……見た目が見た目がぁ……」


その姿は斬るのに抵抗感がある、いやもはや見るのすら嫌になりそうな姿をしている

澪は視線を逸らす、この手の魔物が居てもおかしくは無いとは思っていたが実際に遭遇すると抵抗感を感じる


「……魔物には変わりないぞ? 死んだら消える」

「そ、そうなのか……臭くないのも救いか」

「まぁ魔物であって本物では無いからな。まぁ人間が抵抗感を感じるのは無理は無いな。同種を斬るような物だしな」

「人型とは戦ったけど……あれ見るからに人間じゃなかったし! なんでこいつこんなリアルなの!? 何ダンジョンの主の趣味!?」

「主の趣味の可能性はある。まぁ姿が似ているもしくは繋がりがある姿の魔物が多いんだろうな。我の場合は動物型だったしな」

「あるのかよ! 似てるもしくは繋がり? それって主もこんな姿?」

「いや、違うぞ。それより来てるぞ」


グズグズしているうちに魔物が接近してきていた


「ひぃ! 来るな!」


刀を抜いて周囲諸共魔物を凍らせて刀で素早く真っ二つにする

魔物は消滅し魔石が落ちる

(こいつの素材だけは要らねぇぞ……)


「ほう、考えたな、姿を見ないように刀の能力で凍らせたか。素材が出たら拾え高く売れるのだろ」

「見た目がまともな奴が落ちてくれまじで……頼むから……」

「あの手の姿は苦手か?」

「私は結構その手の映画は見る人間なんだがなぁ。現物見て理解したガチで苦手だ。もう映画とか見れねぇかもな……帰っていい?」

「せっかくの4級ダンジョンだぞ。良い武器が落ちるかもしれんし修行になる。強くなりたいのだろ?」

「ぐぬぬ……」


一体ずつ出てくるので湧いた瞬間凍らせて一瞬で真っ二つにする


「やれるでは無いか」

「さっさとクリアする……全員凍らせてやる」

「その意気だ」


最初にあった戸惑いは無くなり一階層を難なくクリアして二階層へ続く階段を進む

二階層に着くと大きな部屋があった

餓者髑髏と戦った時と同じような広い部屋

(中ボスでもいるのか?)

そう思った澪の期待を悪い意味で裏切った

そこには大量の魔物がいた、その数は15体


「うりゅ……」


全て人型の魔物であり人に近い造形をしているが個体差がある

ボロボロの服を着て皮膚は腐り肉が所々むき出しになっている

顔もぐちゃぐちゃで眼球が飛び出ている者も中には居た

そう、フィクションで良く出てくる屍人、ゾンビ、アンデット、様々な呼ばれ方をするあの姿をしていた

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