連携

魔物が振り下ろした槍を掴む


「い、今です!」


槍を掴んで魔物の動きを制限する


「分かった」


『レンちゃん槍掴んだよ!?』

『すげぇな身体強化か』


魔物の腕に深く切り付ける

太った腕は脂肪によって刃が骨までは届かなかった

(固くは無いな)

切りつけたあと一旦距離を取って恋歌の位置を確認する

槍を掴んでいた恋歌は澪の攻撃が入ると同時に胴体に拳を振るうが脂肪によって殆どが吸収される

緊張していたのが嘘のような滑らかな動きをしている

弾力がかなり高く打撃が入らない

(柔らかい! な、なら手刀で)

澪と恋歌は互いの邪魔にならないように常に位置を確認して戦う

胴体に手刀を突き刺す、小柄な体型の恋歌の手では深くは刺さらない


『手刀で貫いた……えぐっ』

『ただダメージは少ないね。拳も効いてないっぽいし脂肪えぐい』

『レイさんの一撃も深い筈なのに物ともしてないし』

『このデブ強ぇ』


この中ボスは討伐済み、リポップした魔物の為最初の奴よりも弱くなっている

(まぁ攻撃は範囲広いが遅く取るに足らない)

刀と手刀でどんどん削っていく

脂肪が削られダメージが蓄積されていく

一旦下がろうとする魔物の足に刀を突き刺して片足を凍らせる

もう片足に恋歌が2本の手刀で攻撃を仕掛ける

太い足の為凍りつくには時間はかかる

その間は槍を取り出して槍で攻撃を仕掛ける

足が凍りついた魔物は逃げようにも動けない


『おぉ、凍らせた』

『やっぱり氷系の能力か、強いな』

『大きいと時間かかるっぽいね』

『それでも強いぞ。斬れ味も良いっぽいしレイさん槍もあるしな』

『2本持ってるの強いよなぁ、槍は短くすれば嵩張らないし』

『攻撃系の能力じゃないから弱いなんて言われてたけどリーチ弄れるのは普通に強くね?』


探索者は別に武芸に長けている人間では無く配信者もその知識を持つとは限らない

派手な方が分かりやすく人目を付きやすい

それ故に地味な能力であるこの槍は過小評価され安く売られていた


『短くして狭い所でも使えるなら槍の弱点補えるしね。見た感じ結構自在っぽいし』


タンク役の恋歌が槍を受け止める

強く握り引かせない

その間にひたすら攻撃を加えて倒す

魔石を落とすが素材は落とさない

(あぁ最初だけだっけか)

確実に素材を落とすのは最初だけ、それからは確率

1ヶ月に一度で確率のドロップ、中ボスの素材はかなりレア


「時間はかかりましたが無事討伐完了です!」

「恋お疲れ」

「お、お疲れ様です! シズクさん支援ありがとうございます! レイさんも凄かったです!」

「ナイスヘイト取り、流石に槍を掴んだのには驚いたが……」

「あのくらいならお任せを!」


『おぉ、レンちゃん強かった!』

『時間かかったとはいえ全員無傷だもんな』

『シールド使ってないんだぜこれ』

『レイさんは攻撃受けてないけどレンちゃん何度か食らってる……直撃』

『硬すぎ、肉体強度の強化か。それも高倍率』

『武器や防具が付けられないからその分って事かな』

『にしても硬すぎるがな……』


恋歌の実力を疑っていた人も今の戦いで納得する、一部は納得をしていないが

そのまま配信しながら進んでいく

今日中にダンジョンの主も倒す

道中の魔物を楽々倒していく

気をつければ階段から落ちる事もない


『もはやRTA』

『4級ダンジョンRTAは草』

『1人増えて更にやばくなったなぁw』

『3人じゃ無理なの?』

『3級のダンジョンの主?』

『そそ』

『今まで攻略されてるの最低で実力者10人でとかだぞ? 強くても3人は無理だろ』

『そ、そうなんだ』

『動画あるぜ後で調べてみ』

『後で調べてみる』


コメント欄は雑談をし始める

澪に関しては瞬間移動して見失ってるうちに倒すのでもはや視聴者は何をしているのか分からない

恋歌に関しても拳を振るう速度が早すぎてカメラでは何となく殴ったんだなくらいにしか見えない


「ダンジョン長いな」


今はダンジョンに入ってから八階層目、階層の階段1つ1つが長いので単純に歩くのに時間がかかる

休憩を挟みながら進む

(これ帰りも含めると夜になりそう。今日は土曜日だからまぁ休みか。ただ学生だしなぁ……)

恋歌の心配をする

学生を夜に1人で帰すのは危険

(夜になったら送り届けるか?)

シズクは夜になったら2人をタクシーでそれぞれの家まで送り届ける予定なのでその心配は不要な物だった

(無事仲間を家に送るまでが配信です! 流石にカメラは回しませんが)


「罠でもあれば配信しがいあるんですが何とも代わり映えのしない」

「罠? ゴーレムみたいなのか?」

「あのタイプもありますが基本は矢が飛んできたり落とし穴があったり」

「お、大石が上から転がってくるものもあります」

「えげつねぇなぁ」


ファンタジーでは良く聞くような罠、単純だがかなり凶悪、その罠で死者も出ている

罠があれば支えもないこの階段では厄介さに磨きがかかる


『そこのダンジョンは罠は知らないな』

『ダンジョンの主前まで行ったことあるけど無かったよ』

『ダンジョンの主まだ〜』

『次の階層くらいじゃないかな?』

『ワクワク』

『ワクワク』


次の階層に行くと今までの階層とは全く違かった

真っ暗なのだ


『何も見えない』

『暗いよー』

『カメラバグった?』

『あれこんな真っ暗だったっけ?』


「暗いな」

「そ、そうですね」


3人が部屋に入ると床が動き階段を塞ぐ


「階段が……」

「ひぃ」

「マジですか」


松明の光が部屋を照らす


『明るくなった』

『松明?』

『うわっ、怖ぇお化け出そう』

『遠目だったけどなんか見た目お化けっぽかった気がする』


光源は松明だけ

だが魔物の姿が見える

中央に佇むのは今まで出てきた魔物とは全く異なる見た目をしていた

ボロ衣を身に付け魔法使いのような帽子を被り杖を持つ魔物、顔は仮面を付けている

侵入者に気付き3人を見る

3人は咄嗟に構える

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