共闘

2人は別れてそれぞれ家に帰る

澪は家に帰って今日の戦いの配信を見る

配信を意識していないいつもの戦い方をしていたと思っていた


「無駄が多い」


所々魅せプレイをしている

攻撃を異能で避ける際余裕がある時にわざとギリギリで躱していたり手の上に乗った時分かりやすいように1拍置いてから攻撃をしていて最後の蹴りも別にせずにそのまま槍を何度も突き立てても良かった


「意識してたのかなぁ」


配信を意識しているつもりはなかったが行動には出ていた

これからも配信をする気は一切無い

だがコメントを見て一度は諦めモードに入っていたコメント欄が盛り上がる所を見て悪くないと思っている


「明日、いつものダンジョン行くか」


何度も周回しているのに見ていないダンジョンの主と戦える可能性がある

(シズクを呼ぶか……?)

3級のダンジョンの主、それはあの中ボスより強い可能性もある

シズクのバフとシールドがあれば頼もしい

ただ2つほど問題がある

まずはシズクが参戦するなら配信は避けられない

ダンジョンの主、一度倒すと復活することのない魔物、それを逃す訳が無い

配信を断れば協力して貰えない可能性がある

そしてもう1つ、それが一番の問題

それは……連絡先を持っていない事だ

連絡を取れない、探すにしても明日ダンジョン潜るとも限らない


「……もし偶然にでも会ったら共闘申し込むか」


〜〜〜


シズクは家に帰ってすぐに今日の配信を確認する

眼鏡をかけて画面をじっくりと確認する


「流石澪さん、動きが人間離れしてますねぇ」


動きを何度も繰り返しで確認する

そして違和感に気づく

コメント欄の盛り上がり方だ、澪が行動した時に盛り上がるのは分かるがその盛り上がりをまるで澪が操っているかのようにも見える

バトル漫画が好きな人が好むような不要な所で槍を回したりカメラから見えなくなったタイミングでの回避


「おやおやぁ、澪さん魅せプレイしてるじゃないですか〜、カメラの位置確認してたんですかね?」


シズクは笑みを浮かべる

配信をする気がないと言っていた人物が配信用の動きを所々取り入れている

良い映像がこれからも同行しようと考える


「……明日あっちのダンジョン行きそうですね。ダンジョンの主との戦いを配信出来るかも! 朝早くから待とうかなぁ。振り返り配信は夜ですし時間はあります!」


男性との会話でダンジョンの主と戦っていないことが分かった

なら明日にでも向かう可能性はある

澪は金の為と言っていたが戦いを楽しんでいる傾向がある


「私の異能が有益だと理解したと思いますしダンジョンの主との戦闘で私の異能が欲しいと思うはず、それに仮面もありますし……にしても」


配信の終わり頃に流れたコメントを見る

澪の実力を疑う人や誹謗中傷するコメントが流れている


「何人もの探索者と共に数々のダンジョンを潜った私が3級のダンジョンの中ボスにたった1人の味方で勝てるなんて言うんですよ? そりゃ強いに決まってるじゃないですか。それにブスですか、残念ながら彼女凄い美人なんですよ」


シズクは仮面の下を知っている

シズクは自分が美少女だと自負していて美的センスには迷いが無い

美醜の判断の基準を決めていて澪は美の基準を達成している


「あっ投稿しとかないと」


魔石と素材とランク証明書を撮ってSNSに投稿する

やる事をやってから眠りにつく


〜〜〜


翌日澪とシズクは朝早くからダンジョンに向かう

そしてダンジョンの前でバッタリと遭遇する

同じ時間に着いたのは全くの偶然

シズクは会えると踏んでいたが澪は会えたら良いなくらいな感じだったのでシズクを見て驚く


「澪さん、ダンジョンの主倒しに行くんですよね?」

「今回はあくまで確認、もしかしたらあそこは最下層じゃない可能性がある」

「もし居たら共闘しません?」


シズクが先に共闘を持ちかける


「分かった。配信もしていい」

「本当ですか!?」

「今回は最初から手を借りるつもりだからな。配信はダンジョンの入口からか?」

「入口からお願いします」


澪は仮面を付ける

シズクは配信用のドローンを飛ばして配信の準備をし始める

タイトル 未確認のダンジョンの主捜索! 昨日と引き続き槍使いレイさんが同行

というタイトルで配信を開始する

平日の朝方人は余り来ない


『連日配信きたぁぁ!』

『しずくちゃーん』

『レイさん居るのまじ!? 一度限りじゃないの?』


「どうも七彩の魔術師シズクです! 今日はダンジョンの主の捜索です。主を発見したら戦います。はい、今日も零さん居ますよ」


『なんで?』

『あれ?』

『レイさんだ〜あっ、服が変わってる! カッコイイ』

『あれ見た事ある掘り出し物の防具だ』

『流石にあの戦いの後に防具を買ったのか』


「私一人じゃ無理なので偶然居合わせた零さんに協力を仰いだらなんと! OK貰いました。目的は同じだったので」


『シズクちゃん1人じゃ戦えないじゃん』

『元々その予定だったんじゃ』

『1人で来てバッタリってある?』


偶然ではないと怪しむリスナーたち

実際偶然では無い、今日澪がこのダンジョンに来ることは分かっていた

ただ共闘して貰えるかは分かっていなかった


「いえ、今日は探索者が来たら配信を手伝って貰えるかって動画のつもりで来たんですよ。そしたら零さん居て共闘申し込んだだけです。協力してくれるなら配信も良いという事で回してます」


咄嗟に嘘の企画と言い訳を話す


『ホントかなぁ』

『どっちでもいいよ、レイさんの戦いまた見れるなら』

『上に同じ』

『今回難易度は?』


「3級のダンジョンです。零さん曰く最下層に行ったことはあるがダンジョンの主を見たことはないと言っていたので」


『ダンジョンの主が居ないことなんてあるのか』

『聞いた事ない』

『いやいや、待て待て今レイさん最下層行ったことあるとかとんでもないこと言ってたぞ』

『仲間と行ったんじゃない? それでも凄いけど』

『1人は無い無い』


「いや、1人だぞ。私は基本パーティを組まない」


コメントを見ていた澪が答える


『おはようございます〜』

『おはようございます〜、一人ま!?』

『マジで言ってんの!? ヤバっ』

『強すぎw』

『ガチ最強じゃん』


コメント欄が盛り上がる

2人はダンジョンに入っていく

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