当日

1月8日 



 文明が崩壊してからもう数年も経つ。


 各地に大きな避難所があるが、今は俺たちのように自宅で過ごす人たちも珍しくはない。


 ……義妹の灯里あかりは学校ではいじめられていた。


 極度の人間不信だった妹を、大勢で暮らす避難所に置くことはできなかった。


 兄として一緒にいてやることが、家族にできる唯一のことだと思っていた。


 この数日間、義妹の容体はみるみるうちに悪化していった。


 浅黒くなっていく肌、浮き上がっていく血管、充血していく眼球。


 昨日はもう元の姿は見る影もなくなってしまっていた。


灯里あかり……?」


 早朝に目が覚めた。


 この数日間は寝ることができなかったが、少しうたた寝をしている間に、ずっと手を握っていた義妹の姿は、いつの間にか布団からいなくてしまっていた。


 近くにあった、熊のぬいぐるみもなくなってしまっている。


灯里あかり!?」


 家中を探し回る。


 キッチン、洗面、トイレ――。


 狭い家だからすぐに見つかるはずだ。


「まさか……」


 あいつ、俺を巻き添えにしないために家から出ていった……?


「探しにいかないと……」


 ずっと一緒にいるって言ったのに……。


 俺は、ジャンパーを羽織ってこの家を後にした。



義妹を発見するまで後二日

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