なくしもの

@64r89r

息子を取り戻したい父親の物語

月明かりも届かない荒れた林道に、一台のワゴン車が止まっている。


この林道はかつて地元の農家が使っていた程度の細い道であり、アスファルトも引かれていない。


轍の痕跡はあるものの、今では草葉に覆われつつある。


高齢化のあおりを受け、もはやこの先の畑を管理する者はおらず、人通りが失せて久しかった。


車内には一人の男がいる。


このワゴン車はキャンピングカーに内装を改装しており、簡単な生活用品がそろっている。


後部スペースのソファの上にはポーチの幾つか着いたサスペンダー付きのベルトと、バックパック、幾つかの機器が取り付けられたファストヘルメットが置かれている。


そしてコンパクトな机の上には拳銃が3丁置かれていた。


日本の警察が採用している回転式けん銃だった。


3丁ともレンコン状の弾倉から弾は抜かれており、15発の実包は脇の箱にしまわれていた。


男は警察官ではない。


この拳銃は、今日の夕方に交番勤務の警官を襲って奪い取ったものだった。


警官には悪いことをしたと思っている。当然暴力的な方法で奪い取ったものだ。


謝って許されることではない。


今頃、男を探して警察は捜索の範囲を広げているだろう。


見つかるのは時間の問題だ。むしろ見つかるのを前提にしているし、それを期待もしている。


そのために意図的に自らの情報や足取りを隠すことなくここまで来た。


男は全ての装備の点検を終えると、拳銃に実包を装填した。


1丁はベルトキットの右腰に取り付けたホルスターに入れ、残りは腰の後ろのユーティリティポーチにしまう。


全ての装備を身に着け、男は車を出た。


街灯はおろか月明かりも頭上の木々に遮られ殆ど真っ暗闇だが、ヘルメットに装着された暗視装置によって男には視界が提供されていた。


男は今回の行動のために入念な準備をし、決して安くはない金をかけている。


殆どの資産を失ったが、目的が達成されれば自身の今後の生活のことなどどうでもよかった。


拳銃の強奪をした時点で、逮捕されることは免れない。


だがそれでも成し遂げなければならないことが男には有った。


息子を救い出す。


男の頭にはそれだけしかなかった。


発端は一か月前、一緒に暮らしていた3歳の息子が突然姿を消した。


警察の捜査が入ったが、そもそも自宅から出た形跡もなく、誰かが侵入した痕跡もない。


捜索は続けられたが、めぼしい成果は上げられず、男は自分でも調査に乗り出した。


そして調べると、他の町に比べて失踪者が多く出ていることが分かった。


明かに異常な数の失踪者がいたものの、大々的に報じられることも無ければ、多くの人が疑問にも思っていなかった。


さらに異常なことは、失踪者について尋ねた多くの人が、その問題に対して信じられないほどすぐに興味を失っていたのだ。


そのため、記録は残っているものの、誰もがそれを問題視していないという状況が出来上がっていた。


男自身も、ふとした瞬間に息子の失踪に対する興味関心が薄れるようになった。


なにか人智の超えた現象が起きていると考えた。


男は夢想家ではない。


レンジャー課程を修了した筋金入りの自衛官で、不可知論者であった。


そんな彼が、オカルト的な理由付けですら受け入れるようになってしまった。


薄れゆく関心をつなぎとめるために、男はあらゆる情報を必死に収集し、資料としてまとめていった。


そして、眉唾ではあるが、一つの都市伝説的な情報に行きついた。


かつて男の住む町には、ある種の悪魔崇拝者が住んでおり、山の中の一軒家で儀式的な殺人事件を起こしたというのだ。


複数の子供を誘拐し殺害したのだというが、遺体は見つかっていない。


犯人は逮捕に来た警官隊に対して過剰な抵抗を見せたため、現場警官によってやむを得ず射殺されたという。


事件は一応の解決を見たが、現場の一軒家は廃屋として残っており、当時呼び出された悪魔が今でも児童を攫っていると考えられている。


出来の悪い怪談であり、実際にこの情報を入手したのはインターネット上の都市伝説収集サイトだったが、念のため図書館にて過去の事件記録を探した。


そして、該当する事件を記載した新聞記事を見つけた。


複数の行方不明者が発生し、犯人も射殺されたにもかかわらず、地元紙にのみひっそりと掲載されていた。


犯人を射殺した理由もあいまいにぼかされており偏向報道を疑ったが、どちらかと言えば、男も体感している失踪事件に対する明らかに異常な興味関心の薄れと同種のような気がした。


根拠はないが確信を得た男の行動は素早かった。


男の頭の中では霧が晴れたようだった。事件に対する関心の薄れは収まり、息子を取り戻すために廃屋に行くことを決めていた。


そして今夜、考えうる全ての準備を整えた男は、現場へと向かっているのである。


男は歩きながら思う。


俺はもしかしたら、息子がいなくなったショックで頭がおかしくなったのかもしれない。


普通に考えて真面目に取り合う価値もない都市伝説にすがり、警官を襲って拳銃まで手に入れ、廃墟探索をしようなどと正気の沙汰ではない。


だが今や頭から離れない息子の姿に後押しされる。


笑顔で俺を見上げてくれる姿、手をつなぎ一緒に散歩した思い出、覚えたての言葉で一生懸命に話しかけてくれる姿。俺の全てだった息子を取り戻せるなら、なんだってやってやる。


頭がおかしくなったかは関係ない。


息子はこの廃墟にいるんだ。


そうして辿り着いた廃墟は、こんな山の中には不釣り合いなほど立派な二階建ての一軒家だった。屋敷と言ってもいい。


いくら土地が安いとはいえ、相当な金額をつぎ込んでいる。


人の気配はなく、長い間手入れすらされていない建物は所々傷んでおり窓などは割れていたが、その豪奢なたたずまいは荘厳だった。


正面玄関は半ば開いていた。


男は拳銃を抜きながら家屋に入る。


やはりただの廃墟なのか、室内も相当に傷んでいた。


男は訓練で身に着けたルーム・クリアリングの技術を駆使して、すべての部屋を殆ど無音で調べていった。


結果、特に目立ったものは見つけられなかった。不審者もいなければ、失踪事件の関与を示す証拠もない。


強いて言えば儀式的な殺人が行われたような痕跡もなかったが、警察が介入した以上、片付けられていてもおかしくはないのかもしれない。


落胆した男が階段を下りて玄関ロビーへ出ると、自分の足音がおかしいことに気付いた。


行きは足音を消していたため気付かなかったが、どうやら床の下に空間があるようだ。


ボロボロに劣化したカーペットをめくると、地下への扉が現れた。


やはり悪事は地下でするものか、と独り言ちた男は扉を慎重に開ける。幸い罠の類は設置されていないようだ。しかし一軒家の玄関ロビーに地下室への入り口があるのもおかしな話である。


扉を開き切ると地下へと続く5mほどの階段が現れた。


そして男は妙なことに気付く。暗視装置越しの視界で、階段の先がほんのりと明るく見えていた。


男が装着している暗視装置は微光増幅式のパッシブ型であり、光源となる何かしらが無ければ視界を提供することは出来ない。

地下であれば光源などあるはずもないが、ここはどうやら違うようだ。


明らかに異質な雰囲気が男の期待を誘う。再び拳銃を抜いて足音を消しながら階段を下りていく。


降りた先は横穴になっており、コンクリート造りの坑道のような場所が広がっていた。


天井には一定間隔ごとに蛍光灯が配置され、一部が点灯していた。


この家屋が廃墟になって相当な年月が経っている。電気だって止められていた。それが家屋と直結している地下坑道には通電されているというのはおかしな話だ。


十分な光量があり、暗視装置の増幅菅を痛める恐れがあるため、対物レンズにキャップをして頭上にはね上げる。


横穴への入り口に、この地下空間の概略地図が張り付けられているのを見つけた。男はその地図を剥がし、腰のポーチにしまいこんだ。


坑道の左右にはいくつか扉があり、分かれ道も複数あるようだ。地図が無ければ迷ってしまうだろう。


男は耳を澄ませる。


地下空間は音の逃げ場がないため、何者かが音を立てれば遠くまで響きやすい。


そして思惑通り、何かを引き摺るような音が坑道の先から聞こえてきた。


ひとまず手近な扉や横道は全て後回しにし、音の発生源へと向かう。


たまに足を止めて耳を澄ませ、機械的な音ではないことを確認しながら位置を特定していく。そしてたどり着いたのは空白のネームプレートが貼られた扉の前だった。


音はこの扉の先から聞こえている。


右手に持った拳銃を胸の前で構えながら、左手でゆっくりとドアノブを回し、扉を開ける。


部屋の中は弱いながらも照明に照らされていた。


そして男は音を立てていたモノの姿を視界に収める。


その姿を理解した瞬間、男は扉を閉め、全力で走り出していた。


数メートルも走らないうちに男の背後で扉が内側から弾き飛ばされ、中から音を立てていたモノが飛び出してきた。


男は走りながら振り返る。


そのモノは、形容しようがない、というよりも男にも正しくその姿を認識できていない姿をしていた。ヒトガタにも見えるし、真球のようにも、多足生物のようにも見える。


男に理解できるのは、それが「化け物」であるということだけだった。


人間の感覚器官では正しく認識できない「ソレ」を必死に脳が処理しようとした結果、形容しがたい姿として認識されていたのだ。


化け物の走るスピードは男より早かった。やむを得ず、一瞬だけ振り返り拳銃を発砲した。


化け物の中心部に着弾したようで、一瞬飛び跳ねたかと思うと痛みに悶えるように丸くなった。


その隙に一気に距離を離しもと来た道を戻ろうとするが、それは叶わなかった。


男が通ってきた道に隣接する扉が次々に開き、同種の化け物たちが出てき始めていたのだ。


仕方なく、男は分かれ道に入りこむ。先ほどの地図を思い返すと、この先は別のエリアだったはずだ。


一旦は化け物の視界から外れられたが、このまま坑道を走っていたのでは、追いつかれるのは時間の問題だろう。


一か八か、手近な扉を勢いよく開け、同時に左手に持ったライトと右手に構えた拳銃を室内に向ける。幸い化け物の姿はなく、男は急いで扉を閉めて鍵をかけた。


扉に耳を当て外の気配を探る。


どうやら男を見失った化け物は率先して捜索するということはしないようで、気配は先ほどのエリアにとどまっているようだった。


かりそめの安心を得た男だったが、すぐに今いる室内の安全性が気になりだした。


入室した直後は簡単なクリアリングだけして化け物がいないことを確認したのみであり、もしかしたら別種の脅威が潜んでいるかもしれないのだ。


念のため一発撃った拳銃をポーチにしまい全弾装填している拳銃と入れ替える。


あと一発が無かったために殺されるのは避けたかった。


室内は弱い照明に照らされており、大まかに何があるのか見える程度の視界は確保されていた。


男はライトを点灯させて、あたりを見渡す。


雑多なものが置かれた、いわゆる物置部屋のような佇まいで、なかなかに広い部屋だった。


そして、壁際に大きな空の本棚が立っており、身を隠せそうなスペースがあることに気付いて肝を冷やした。


完全に死角だった。


男は拳銃とライトを一緒に構えながら、ゆっくりと本棚の裏を視界に収めていく。


そして、そこに横たわる遺体を見つけて、またしてもぎょっとすることになった。


その遺体は妙な格好をしていた。


緑色の全身防護服に防護マスク姿で、どちらも自衛隊が採用していた旧式の個人防護装備だった。


さらに防護服の上から防弾ベストを着こんでいたが、左脇のあたりが激しく切り裂かれて出血していた。


恐らく、負傷してここに身を隠したはいいものの、出血を止められずに死亡したのだろう。


遺体の傍らには、これまた自衛隊の旧式小銃である64式小銃が転がっていた。


なぜこんなところに旧式の装備で身を固めた遺体があるのだろうか。


そしてさらに違和感を覚えたのが、その遺体は全く腐敗が進行していなかったのだ。


そのためすぐそばに遺体があるというのに、臭いで気づくことが無かった。


男は遺体を検めたが、身分を示すようなものは所持していなかった。


何故に何故が重なるような状況だが、考えたとしても分かりっこない。


男は遺体から使えそうな装備を借用することにした。


まず64式小銃は自衛隊入隊当初に貸与され、その後後継小銃に更新されるまで部隊でも使用していた。使い方は身体が覚えている。


64式を使っていた当時は老朽化も甚だしく、ボロボロだったり錆びやすかったりした印象だが、この個体の状態は非常に良いものたった。動作確認したが故障もしていない。


遺体の腰から銃剣も拝借した。弾切れの際に最後に役立つのは銃剣だ。


予備弾倉は防弾ベストごと引き裂かれていたが、一つだけ無事なものがあったのでそれもいただく。


銃についている弾倉の中身は7発しか残っていないかったが、防弾ベストに残されていた破損した弾倉から実包を抜き出して込めておいた。


満タンの弾倉に取り換えて、槓桿を引いて初弾を装填した。


これで男の火力は大幅に増大した。


そしてバックパックから水筒を取り出して一休みしたのち、再度捜索に向かった。


あの化け物は悪魔崇拝者が呼び出したものに違いない。


失踪者たちはいけにえにでもされたのか?


慎重に扉を開くと、先ほどの引き摺るような音はやんでいた。


念のため男が元の道に戻ると、引き返すことは出来なくなったのだと判明した。


先ほどの化け物が通路の床や壁、天井に張り付いていたのだ。


寝ているのか起きているのかは分からないが、おそらく視界に入れば補足されるだろう。


この先で息子を見つけられなければ戻る必要があるだろうが、この先のエリアの方が広く、別の出口もある。


先にこちらの探索を済ませるべきだろう。


明らかに異常な化け物の存在を目の当たりにしたことで、男の中の妄想じみた仮説が強固になっていく。


この化け物巣くう廃屋の中に息子がいるに違いない。


ここからの男は破竹の勢いだったと言わざるを得ない。


化け物との接敵は可能な限り避けつつも、避けられない場合は的確に射撃して仕留めていった。


どうやら落ち着いて対処すれば銃弾でも傷つけることが出来るらしい。


今や男は頭の中の霧が晴れたかのように感覚が研ぎ澄まされていた。


敵の位置が何となくわかり、無駄な接触を避けつつ探索が行えるようになっていた。


そして最深部に到達した。


この時点で男は大小さまざまな傷を負いつつも致命傷は避けていた。


銃弾は尽きかけ、ヘルメットもバックパックも失っている。


着剣された64式小銃は化け物の体液にまみれ、所々が凹んでいるものの、銃としての機能を遺憾なく発揮していた。


この先にあるのはホールと、別の出入り口だけだ。


扉を開けると、だだっ広いホールの真ん中に、5mはあろうかという得体のしれない造形の巨大オブジェが立っていた。


恐らく悪魔崇拝者が信仰していた悪魔だかの偶像なのだろう。


その足元に、息子が倒れていた。


男は油断なくあたりを警戒しながら、息子のもとに駆け寄る。


意識はなく、どうやら眠っているようだ。


安堵から緊張感が途切れかけるが、今だ折り返し地点にすぎないと意識して、出口の確保に向かった。


ホール内に敵の姿が無いので、その先の出口につながる扉を開け、退路を確保しようとしたのだ。


ホールの先には数体の化け物がいた。


今や化け物との戦闘にも慣れつつある男だったが、ついに64式小銃の弾が切れた。


急いでホルスターからリボルバーを抜き、化け物に向けて発砲する。


しかしリボルバーもすぐに弾切れを起こしたので、銃剣格闘にて化け物を屠っていく。


出口通路にいた化け物を殲滅した男は、最後のリボルバーをホルスターに仕舞った。最初に発砲した銃で、残りは4発しかない。


男は急いで息子のもとに戻った。


負い紐で64式小銃を背負い、息子を抱き上げる。


やはり目を覚まさないが、身じろぎをした息子を見て安心する。


抱きかかえると、息子も両手を男の首に回して抱き着いてきた。


寝ているときに無意識に息子が行う癖だった。


ようやく取り戻せたという達成感から、小走りでホールを出たが、そこには化け物が戻ってきていた。


舌打ちしながら男が拳銃を抜くが、化け物たちはすぐに身をひるがえして逃げていった。


数多の同胞を屠られたことで、銃の持つ破壊力を理解しているのかもしれない。


出口までの安全が確保できたことで、ようやく脱出の時が来た。


外に通じる階段があり、光が差し込んでいた。


暗所にすっかり慣れてしまった男の目には光のその先は目がくらんで見え長ったが、いつの間にか朝になっていたのか、と独り言ちながら階段を上る。


心も身体も疲労困憊だったが、息子を取り戻せたという充実感が男を動かしていた。


今や息子の重みすら男に力を与えていた。


階段を登り切った男たちを待ち構えていたのは、銃で武装した複数の人影だった。


男はすぐに理解した。


警官から拳銃を奪った俺を逮捕しに重武装した警官隊がやってきたのだと。


日光だと思った光は、家屋を照らしていたサーチライトによるものだったのだ。


男はようやく安心できた。


自分は逮捕されるだろうが、もはやそんなことはどうでもいい。


息子は保護されるし、万が一地下から化け物が追ってきたとしても、警官たちが守ってくれる。


そして満身創痍の男を支えていた緊張の糸が切れた。


倒れながらも、必死に息子が地面に衝突しないように体勢を整える。


何とか優しく息子を降ろすことが出来たが、もはや立ち上がる体力も無ければ、意識を保ち続ける気力もなかった。


急激に暗くなっていく男の視界には、穏やかな表情をして眠る愛する息子の姿が映っていた。


俺は逮捕されるだろう。だが息子が無事ならそれでいい。本当に良かった。たまには面会に来てくれるとお父さんは嬉しいな。


そう思いながら、息子の顔を見ながら、男は意識を失った。


家屋を取り囲んでいた隊員たちは、突然男が現れたことに驚いていた。


銃を構えながら意識を失うその瞬間を見ていることしかできなかった。


彼らのヘルメットにはカメラが装着されており、司令部にリアルタイムで映像を送っていた。


現場の様子を見ていた指揮官から無線で指示が入る。


「生存者を保護し、隔離せよ」


命令を受けて二人の隊員が駆け寄り、男を抱えて後方に去っていく。後方では医療チームがすでに待機しており、男を受け入れていた。


「甲種幼生は処理し、内部に戻せ」


隊員の一人が、男が大切に連れてきた■■■■■に向けて銃を撃つ。


銃声が鳴るたびに男がピクッと少しだけ身じろぎをするが、男の表情はとても穏やかだった。



事案SK-0516


第■■回武装調査開始の直前、入り口Eから民間人一名が自力脱出。


該当民間人は脱出直後に意識を失い、医療班にて手当を受けた。


脱出時に甲種幼生を所持しており、基底現実への影響を最小限とするために即座に殺処分し、速やかに家屋内に投棄された。


結果:


1.本インシデントを受けて第■■武装調査は延期となった。


2.本インシデントを受けて脱出民間人出現時の対応手順を制定。



調査報告


SK-0516にて保護された民間人についての調査報告。


氏名:■■ ■■

年齢:■■

生年月日:19■■/■■/■■

性別:男


人物概要:■■氏は[検閲]市に居住していた元陸上自衛官。SK-0516発生の■■年前、20■■/■■/■■より行方不明となっており除隊扱いとなっている。■■氏の行方不明に先立って当時3歳の息子■■が失踪している。妻とは200■/■■/■■に死別。失踪直前の■■氏の記録は警察にて保管されており、交番勤務の警官3名に重軽傷を与え、拳銃を強奪した疑いがかけられていた。また失踪した息子を救うために「家屋」へ向かうことが示唆された資料が残されており、地元警察および潜入エージェントにより捜索が行われたが、痕跡を発見することが出来なかった。なお、この捜索の際に「家屋」に異常は見られなかった。


発見時の状況:第■■回武装調査の開始直前に、進入可能ポイントEから自力で脱出した。複数の傷を負っており内部で■■■■■と交戦していたものと想定される。脱出時の持ち物は次の通り:64式小銃(第■回武装調査にて失踪した隊員に貸与されていたものと同定)、回転式けん銃M360(警官から奪取した拳銃の内の一丁と同定)、甲種幼生■■■■■(後の聞き取りから■■氏は甲種幼生を自身の息子と認識していた)。脱出直後の意識喪失後は医療班によって


聞き取り結果:[検閲削除済み]。「家屋内」にて接続された時空間異常により■■氏の体感した時間と、■■氏の失踪からSK-0516の発生までの時間に顕著な差異が発生している。また、■■氏が訪れた「家屋」に接続されていた神格存在によって■■氏の認識が改竄され容易に外界に進出できない甲種幼生の基底現実への侵攻に利用された可能性を示唆している。


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