わたしは空腹を知らなかった

ノミ丸

――prologue――

 わたしは空腹を知らなかった。

 何故なら全て、満たされていたから。

 もっと正しく言えば、満腹感を感じたことがなかった。

 わたしが生まれた時、生きるために必要なものは全て用意されていたし、足りないものなんて何ひとつ無かった。

 だからわたしは全てが完成されていたし、欲しいものは何もなかった。

 わたしは――わたし達は無垢で、無知だった。


 ……少し、わたし達の話をしようと思う。

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