69 爵位(ナサニエル視点)

 この日は私の功績に対する褒美を議論するための特別な会議が開かれていた。王宮内の会議室は緊張感で満ちており、主要な貴族たちが一堂に会している。 

 多くの貴族たちは私の功績を称賛し、高い地位を与えるべきだと考えていた。しかし、中には異論を唱える者もいた。


「ナサニエルは確かに勇敢だが、侯爵位はやり過ぎだ」というのはマルトン候爵閣下だった。彼は保守的な考えを持つ貴族で、新進気鋭の騎士への高い称号授与に慎重だった。

「男爵位で充分。我々は伝統を重んじるべきだ」と彼は主張したのだ。


 また、エルドリッチ伯爵も似たような意見を持っていた。

「ナサニエルの行いは賞賛に値するが、これで高位を与えれば、将来的に我々の地位が低くなる恐れがある」

 彼は冷静に語った。


 しかし、グラフトン侯爵閣下は強く反論した。

「ナサニエル君はただの魔獣を討伐したわけではない。神獣を召喚し、皇太子を救出したのだ。彼の功績は歴史に残るものであり、それ相応の称号が必要だ。侯爵の位を授けてもまだ足りないと思うがね。ナサニエル君がいなかったら、みんな死んでいたのだぞ」と。


 デュポン公爵もまた、私の支持者の一人だった。

「ナサニエル君は国民に希望を与え、若い世代に模範を示した。彼のような英雄を正当に評価することが、国の未来を輝かせる」と力説してくださった。この方はグラフトン侯爵夫人の実兄に当たる方だ。


 議論の中での反対意見は私にとって重要な教訓となり、これからの責任を深く自覚するきっかけとなった。そして、ついにグラフトン侯爵閣下とデュポン公爵閣下の強力な支持のおかげで、私は侯爵の位を授けられることになった。また、魔法騎士団長補佐の地位も与えられることが決定された。


「式典は三日間にわたって開かれる。国を挙げてのイベントになるだろう」

 

 国王陛下はそのようにおっしゃり、私は感謝の言葉を申し上げたのだった。

 



 ☆彡 ★彡



 式典の一日目、王宮の大広間は華やかな装飾で飾られた。そこは貴族たちで埋め尽くされ、彼らは盛装してこの大切な瞬間を祝おうと集まっている。広間は期待に満ちた空気で溢れ、私は緊張した面持ちで正装に身を固めていた。


 式典が始まると、王宮の音楽隊が厳かなファンファーレを奏でた。その音は大広間全体に響き渡り、出席している人々の心を一つに結びつけた。国王陛下が高座に現れると、会場には一層の緊張感が漂った。


 グラフトン侯爵夫妻と愛しいデリア嬢は最前列に座っていた。デリア嬢の瞳は誇らしさで輝き、彼女の笑顔は私の緊張を和らげてくれた。心臓の鼓動が速くなり、深呼吸をして前に進むと、国王陛下は微笑みながら私を迎え入れた。


「本日ここに集いし我が国の高貴なる臣民たちよ、目の前に立つこの勇敢なる騎士、ナサニエルに対し、余の心からの感謝と敬意を表するための重大な発表がある。彼は我が国の安全と繁栄に大きく貢献した。魔獣の脅威から国を護り、東洋の国の皇太子を救出するという、言葉では表せぬ偉業を成し遂げた。彼の英雄的な行為は我が国の歴史に金字で刻まれるべきであり、その功績は後世まで語り継がれるだろう。ナサニエル、お前のこの国への忠誠と果敢な行動、勇気に対し、余はただ感謝の意を表するのみならず、相応の褒美を与える。余はここにナサニエルに対し、候爵の称号を授けることを宣言する!」


 この言葉に、大広間は拍手と歓声で満ち溢れ、私は深い感謝の念とともに頭を下げた。国王陛下の言葉は私のこれまでの努力が国に認められたことを示すものであり、新たな責任と使命を背負う決意をした瞬間だった。私は深く一礼し、「この名誉を胸に、これからも国と民のために尽くします」と誓った。


 式典の後半では音楽とダンスが始まり、宮廷の華やかさが一層際立った。デリア嬢は私のもとへ駆け寄った。彼女の目は感動で潤んでおり、顔には誇らしげな笑みが浮かんでいた。彼女は私の両手を優しく握りながら、心からの言葉を紡ぎだした。


「ナサニエル様、今日あなたの勇気と力が皆に認められました。侯爵としてのあなたの新しいスタートに、私は本当に誇りに思うわ。いつもあなたのそばにいられることが、私にとってどれほど幸せなことか・・・・・・」


 彼女の声には深い愛情と、これからの私との未来への期待が込められていた。その瞬間、私は彼女の支えが自分の成功の大きな部分であることを改めて実感した。デリア嬢の言葉は私にとって新たな地位への励みとなり、二人の絆をさらに深めるものになるのだった。


 二日目は魔法騎士団館での式典だった。そこでは私が所属する第9小隊員たちにも、ご褒美が用意されていた。それは・・・・・・

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