50 初めて貴族の屋敷に行くぞ (ゴロヨ小隊長視点)

 俺は小さな村で平凡な生活を送る漁師の息子として育った。俺の日々は海の波音や魚市場の賑やかな雰囲気と共に静かに流れていった。生まれつき風魔法が使える俺は、船を操る時ぐらいしかその力を使ったことはない。


 ある日、村が魔獣の襲撃に見舞われた。嵐のような轟音とともに現れた魔獣たちは、海辺の村に恐怖と混乱をもたらす。俺は他の漁師仲間と共に網や漁具を武器にして立ち上がり、家族や村人たちを守るために戦うことを決意した。


 船の上で繰り広げられる激しい戦闘では、その独自の漁師技と機転を駆使して、魔獣たちに果敢に立ち向かう。巧みな投網や釣り針を使い、魔獣の動きを封じつつ風魔法で吹き飛ばし海の底に沈めた。仲間たちと連携を取り、奮戦した。


 戦いの最中、魔法騎士団の騎士たちも村を助けに駆けつけてくれた。その時、俺は魔法の腕前を見せつける騎士たちの姿に感動し、自分も彼らと同じくらい強くなりたいと心に誓った。彼らが纏う魔法の輝きに心を奪われたのさ。


 村が平和を取り戻した後、俺は村の長老に相談し、魔法騎士団への入団を志願した。最初は漁師の息子としての立場から疑念を抱く者もいたが、強い意志と向上心が認められ、魔法騎士団に入団することが許された。


 俺は団の一員として鍛錬に励み、魔法の才能を進化させていった。そして、俺はバッカスという愚か者の後釜として第9小隊長に就任したのだった。


 そこで出会ったのがナサニエルという男だ。こいつは綺麗な男だったが、元伯爵家の令息だというのに気取ったところは微塵もなかった。それどころか、背中には鞭の傷跡があるし、伯爵家では使用人みたいに扱われていたらしい。


 漁師の息子として育った俺のほうが、よほど幸せな幼少期を過ごしていたことがわかった。しかも、こいつは仲間思いで、自分の手柄も皆のお陰だと言いながら、魔石の恩恵を惜しげもなく皆に分け与えた。


(神かよ! 天使か? いや、これは・・・・・・俺らのアイドルだろう? 誰からも好かれて見た目も格好いい。俺、ファンクラブ作ろうかな)


 とにかくだ。ナサニエルは俺が守る! ペーンやイアゴも同じ気持ちだし、他の奴らもそうだ。魔石を仕込ませた靴を配られた第9小隊の隊員は、今までの二倍の機敏な動きができるようになり、ナサニエルに感謝していたし、怪我をする者も激減した。


 さらに、ナサニエルが次々に強い魔獣を倒すので魔石はどんどんたまっていく。それをポーションにしたり魔道具に開発したりして、ナサニエルは平民寮に住む魔法騎士団員たちに平等に配っていった。


 今まで清潔とは言い難かった平民寮も所々改修されていく。どうやら、高位貴族の方の意見で平民寮を貴族寮並みにしていくプロジェクトができているらしい。発案者はグラフトン侯爵閣下だという噂だった。


 しかも、ナサニエルはそのグラフトン侯爵閣下のお気に入りで、毎晩屋敷にお邪魔してディナーを食べていることもわかった。


「ちょっと、待て! グラフトン侯爵閣下はまさかあっち? 奥方は? よく怒らないな?」

「は?」


 ナサニエルは首を傾げている。


(いや、だっておかしいだろ? 毎晩、ディナー食いに行って、屋敷にはナサニエルの部屋まで用意されていると聞けばさ・・・・・・)


 その後、他の者たちからの噂も総合して、俺のくだらない妄想は解決した。グラフトン侯爵家の愛娘の恋人がナサニエルなのだと聞いてほっとしたよ。しかし、油断はできないよな? 高位貴族なんて未知の生き物だ。なにを考えているかわかったもんじゃないよ。


「ゴロヨ小隊長。良かったら、グラフトン侯爵家に一緒に行きませんか? グラフトン侯爵閣下が友人ができたら連れてきなさいと」


(え? 友人? 俺って友人第一号?)


「おぉ、いいぞ。俺は暇だから、友人として行ってやっても良い。もしかして、招かれたのは俺が初めてか?」

「はい、そうですよ。ゴロヨ小隊長には、いつもお世話になっているし」


(なに言ってんだよーー。お世話されてるのはいつも俺だよ。俺はナサニエルを守るよ。こんな良い奴いないし、俺友人第一号! ペーンとイアゴに自慢するぞ)


 そうしてナサニエルと訪問したグラフトン侯爵家は・・・・・・うわぁ!!・・・・・・

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