45 ピンチはチャンス、困難への挑戦だ! (ブレイン視点)
僕はターヴィル伯爵家の次男としてこの世に生を受けた。物心がついた頃から、僕が一番好きなものは鏡だ。朝、目が覚めると、最初に向かう場所はもちろん鏡の前さ。
鏡は単なる姿を映し出すためだけの道具ではなく、僕のなかでは自分の美しさを確かめる聖域なのだ。その瞬間、現れるのはまさに理想の自分さ。完璧なまでの髪型、整った顔立ち、そこに映し出されるのはまるで夢の中の主人公のような完璧な存在なのだ。
鏡の前で微笑むと、自己満足の快感が湧いてくる。細部までこだわりぬかれた自分の容姿に、心が満たされていく。時には空想の世界に身を置き、さまざまな主人公になりきって、微妙な表情の変化を試してみる。自分が最高の舞台俳優になった気分で、日々鏡の前で演じた。
他人から見れば単なる鏡、しかし僕にとっては自己探求の場でもあるのだ。外見だけでなく、内面まで磨き上げられた自分に出会える瞬間。鏡越しに映る自分は、まさに理想の姿を持つ神聖な存在として輝いている。
他人が気づかない微細な変化も、僕にとっては大きな達成感である。自分の美を磨くことは、日常の喧騒から離れ、内なる安らぎを見つける手段なのだ。そして、鏡の向こうの自分と向き合うことで、自分をより深く理解し、愛していくことができる。
バッカス班長の話で知ったナサニエルを見た瞬間、初めて自分に対抗できる美しさを持った男と会った気がした。元伯爵家の令息でありながら平民寮に住み、良い子ちゃんぶっていることだけでも嫌いな種類の人間だがな。
グラフトン侯爵家のパーティでは、デリア嬢にぴったり寄り添って、まるで婚約者気取りさ。デリア嬢の目を覚まさせてやるために父上も僕も大健闘をしたのに、グラフトン侯爵夫妻は見る目がないと思う。
僕の言葉の揚げ足をとり、いらぬことを国王陛下に直訴した。いわゆる「名誉ある死」事件だ。これのどこが間違っているのかわからないが、僕は魔法騎士団副団長補佐から小隊長に降格になった。グラフトン侯爵家の権勢に対する怨みと不満を抱えた者を、今こそ集めるべきだと固く心に誓う。
☆彡 ★彡
第8小隊長になった僕が、講堂で素晴らしい演説をしていたら、好戦的に拍手をしてきたナサニエル。
(そうか、お前も僕と勝負したいんだよな?)
「いたな、ナサニエル! お前は僕のライバルだ。この僕からライバル認定されたことを喜ぶがいい!」高らかに宣言してやったよ。
(これからが勝負だ。あいつをことごとく潰してやる)
グラフトン侯爵夫妻は大馬鹿者だ。僕を平民の魔法騎士たちのなかに放り込むということは、ナサニエルに嫌がらせパラダイスになるってことがわかっていないらしい。
(まずはナサニエルを孤立させてやろう。世の中は金だろう。金の力が物を言う)
第9小隊のゴロヨ小隊長を、こっそり呼びつけ大金を握らせる。
「お前、ナサニエルを小隊の隊員から孤立させろ。どんな手段を使ってもかまわん」
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