10 私って男性を見る目がないの?(ファニー視点)

 カタレヤ様についでジャンヌ様も婚約破棄をされた。学園でも社交界でもカタレヤ様とジャンヌ様のやらかし事件は有名になっていた。私がその場にいたことがバレるのは時間の問題よ。


 私は観念した。両親を伴い、トーガソン男爵家に向かう。そして、トーガソン男爵夫妻のいる前で、正直にマーロン様に白状した。


「デリア様に直接話しかけたわけではありませんが、その場にいたのは間違いありません。デリア様に名前を聞かれた際にも答えていますので、これからなにか報復があるかもしれません」


 私の両親は青くなって震え、私を修道院に送ると言い出した。トーガソン男爵夫妻は私との婚約破棄をすぐに口にする。当然の成り行きだった。マーロン様はトーガソン男爵家の長男だったからよ。


 でも、修道院ならまだマシかもしれない。こんな場合だと醜聞にまみれて、とんでもなく問題のある男性に無理矢理嫁がされる女性だっているのだから。


「私とファニーはもう十年も婚約してきました。デリア嬢になんでそんなことをしたのか理解に苦しみますが、今まで共有してきた楽しかった時間がそれだけでなくなるわけではない。トーガソン男爵家は弟に譲りますよ。ファニー、贅沢はできないけど田舎でのんびり暮らそうよ」


「え? 田舎でどうやって暮らすというのですか?」


「私は土魔法が使えるから、夫婦二人分の農作物なら余裕でできるよ。自給自足の生活も悪くないんじゃないかな?」


 今にも崩壊しそうなぼろぼろの家に住み、貧しい食卓を囲む子だくさんの自分の姿が思い浮かんだ。マーロン様は優しい。でも、私は彼がトーガソン男爵になるから結婚したかっただけよ。

 田舎の農民を志願してしまう人にはなんの魅力も感じない。


「私は修道院に行きます。だって、貧しい農民になって苦労するくらいなら、修道院のほうがよほど良い暮らしだと思いますもの」


「ファニー。貧しい暮らしにはならないと思うのだが、君が修道院を選ぶならそれで構わないよ。幸せにね」



 ☆彡 ★彡



 それから、私は修道院にいる。なんと実家のスワンポール男爵家は、一番劣悪な修道院に私を送った。グラフトン侯爵家への誠意の証だそうだ。


 そこは重厚な石の壁が湿気を帯び、暗い通路が続く老朽化した建物だった。床には古びた絨毯が敷かれ、壁は湿気で腐った部分が目立つ。


 薄暗い光が古びた窓から差し込んでいるだけで、視界は限られていた。床には埃が積もり、破れかけたカーテンがざらつく音を立てた。


 古びた書物や壁画が残された部屋もあり、それらはかつての栄光とは無縁の、薄汚れた光景を映し出している。椅子は傾き、机にはひび割れた墨壺が寂しく佇んでいた。


 この清潔とはかけ離れた場所で、魔法も魔道具さえも使うことを禁じられた。そのため、炊事洗濯もひと苦労だったし、火を起こすのさえ原始的な方法に頼るしかなかった。しかも、ここにいる女たちは皆年寄りで、病気の話と神様の話しかしない。


 違うってば、こんなはずじゃなかった。

 もっと快適な修道院はいっぱいあったはずなのに!

 どこに送られるのかぐらい調べておけば良かった。


 ある日、修道院長室の掃除をしていると、見覚えのある男性の顔が掲載された新聞を見つけた。魔道具カメラで撮られた姿は紛れもなくマーロン様だった。


「マーロン様! 嘘でしょう?」

 マーロン様はこの数年で大農園主になっており、多くの人を雇いたくさんの国に果物や野菜を輸出する実業家になっていたのだった。


 実家であるトーガソン男爵家を弟に譲り、実力で勝負した若き実業家!


 そんな大きな文字を呆然と見つめ、自分の男性を見る目のなさにがっくりとうなだれた。


 あぁ、また、失敗した・・・・・・

 デリア様と関わったことも失敗だったし

 あの時に喜んでマーロン様について行かなかったのも大失敗だった。


 しかも、私の後悔はもう確実に遅すぎた。彼の腕には赤子が抱かれ、隣には彼の妻が幸せそうに微笑んでいたのだった。


୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧


さて、ここからが恋物語の始まりです。

麗しのヒーローが出てきますので、お楽しみに!

ざまぁから始まる恋物語です。

少しでも楽しい、続きが読みたいよって

思っていただけたらハートやレビューをお願いします🙇‍♀️✨

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