駐輪場のハンドルたち

ちゃんとメモを取らなきゃな、と思うんだけど

僕は詩を作るために、自分だけが見れるメモアプリにメモをしているんですけど

そこにこう書いてあった

「駐輪場のハンドルたち」

あ~~すごい、わかる、わかるよ

君が見たのはあの駅の駐輪場に並ぶ自転車たちのことで

そこに並ぶハンドルたちがなんかおもしろく感じて

そうしてメモをしたんだろうけど

でもな、それだけじゃ足りないんだよな

どういうふうに面白く感じたのかとか

あなたにはそれがどう見えていたのかとか

そういう、感情も一緒に書かなきゃ詩は書けない

「このメモを見たら感情も一緒に思い出すだろ」と、メモをしたときのあなたはそう思ってたかしらないけど

思い出せないから!!

だから、これを詩にしようとしたら

かなり無理やり過去の記憶を捏造するしかない

たとえばそうだな

自転車のハンドルたちが、未来の草原でうねる生きた電柱たちに見えた

とか

自転車のハンドルたちが並ぶその姿は、まるで機械の国に霜が降りたみたいだった

とか

ん~~

まあこれでも悪くはないと思うんだけど

嘘なんだよな、これは

嘘の詩って書きたくないからさ

あのときのあなたが「機械の霜」とか「電柱」とか思ってたわけではないからさ

だから、今後は気を付けてください

詩のためのメモをとるときは、感情も一緒にメモすること

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