童謡に載るくらいの悪女なのに過激派オタクがいるんだが?
環 哉芽
第1話 世界で一番美しいのは?
「鏡よ鏡…世界で一番美しいのは?」
贅沢の限りを尽くしたようなインテリアの部屋の中でも一番輝いて絢爛豪華な鏡へとシルクのように美しい声音で問いかけるのは私。
世界で一番美しいアルビス王国の世界で一番美しい王妃、ディアーナ・グリムヒルド。
そして…
「そんなの王妃様に決まってますよ〜!この漆黒の艶やかな髪、陶器のように滑らかな肌…なんと言ってもスグリの実の様に美しい赤い瞳!!美しすぎる…ナンバーワン!オンリーワン!マイスィート王妃様!!!」
この体全体でハート型を作っているうるさい男がアロイス・フンベルト。
数ヶ月前から仕方なく従者として雇っている。
本当は気持ちが悪いので今すぐにでも解雇したいのだが
いかんせん…仕事ができる男なのだ。
「…悔しいわ」
「何か言いましたか?王妃様」
「何も言ってないわ、退きなさい変態」
鏡と私の間に身体を大袈裟に傾け視界へと割り込んでくる顔を手で押し除けて
顔に触れた手をぱんぱんと叩きながら「警備、不審者を摘み出しなさい」なんてドアの外へ声を掛ける。
「ちょ、王妃様酷いですよ…!それに何故鏡になんて話しているんですか!ここに!こんなにベストな返答が出来る!あなただけの!!下僕が居るのに!!!!」
声を聞きつけて飛んできた警備の者は日常茶飯事なやりとりを慣れたように見守ると、変質者といえど身長は高く細身に見えるが筋力のある男を引きずるのは大変なのだろう二人掛かりで部屋の外へと連れて出ていく。
「気持ち悪い」
そんな言葉にですら肩を振るわせ歓喜したように息を荒げているのが遠目に見えて
きっと厄災を具現化したらあんな風になるのかも知れないななんて思いながら鏡の前の椅子へと腰掛けた。
「そういえば最近お前は話してくれないのね、鏡」
鏡はただの豪勢な鏡ではない、この王妃の魔力が練り込んである特別な鏡。
この国で魔力があるものは珍しくはないけれど、あっても所詮魔法の使えない宝の持ち腐れな人間が多い。
その中でも一番に魔力量が多く、魔法を使える王族の私がこの国を収めることになるのは自然の摂理に近いくらい当たり前のことだった。
そんな私が作り上げた真実だけを語る鏡が数ヶ月前の嵐の日から真実どころか何も語らない…。
鏡にも通信障害なんてあるのか?
そういえば
「アロイスが来たのもそのくらいの頃だったかしら」
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