第4話 エンペラー

「俺はダークデス帝国のエンペラーだ!

テメエら腰抜けを人形どもから救う救世主だ!水と食料、燃料を半分納税しろ!」

ダークネスじゃなくてダーク・デスか。

船体は立派な大型クルーザーだ。搭乗員は今時珍しい黒の革ジャンで統一してる。勿体無い。


「そんな糞チンケな船じゃろくなもん積んでなさそうだがなぁ!ギャハハ」

拡声器から下っ端の声も聞こえてくる。

こんなコテコテな連中が現実に存在するのか。


「ハッタリじゃねえぞ!この船にはロケット砲と機雷が積んである。糞人形に並の武器は通用しない。だがあいつらのヘボ船をぶち壊しちまえばいいのさ!船の方が脆いんだからな!弱肉強食の世界は俺のような軍略の天才でなければ生き残れない。既に5隻の幽霊船を沈めて吠えずらかかせてきた。テメエらのような腑抜けの腰抜けどもを平定し、偉大なるダークデス帝国は世紀末の覇者になる!」


暦が失われて久しいが、今って世紀末なのか?

よくもこんなんで今まで生き残ってきたな。

奇跡のような強運もすでに使い果たしたというか、話を聞く限り自業自得なんだが。


「最終通告!ブルってんじゃねえぞ!さっさと甲板に出てきて降伏しろ!さもないとボロ船沈めて死体とブツを回収すっぞ!」

周波数帯がようやくあった。一応言っておこう。


「エンペラー!!無線だ!!エンペラーに話があるとよ!!」

「聞こえるか」

「誰だ!」

「お前が馬鹿みたいに怒鳴ってる船の船長だよ。拡声器は絶対に使うなという連絡だったが...うわ...もう手遅れだなこれは」

「何だテメエ!隠し球でもあるってか!」

「ないよそんなもん。なんで気づかねえんだよ。...ああ、まずい。ドアを閉めろ」

「舐め腐りやがって!やれるもんなら」

「お弁当つけてどこいくの」

双眼鏡で見た感じ、馬鹿の頬を灰色人形が人差し指でついてるようだ。声は女性。優しいお母さんなのか、奥さんなのか。


「カッ....パゥ...ッウァ....」

もうエンペラーは旅立ち始めてて、奇声しか聞こえないので無線を切る。


ダークデス帝国のクルーザーは側面にフジツボのごとく貼り付いていた灰色人形に占拠され、エンペラー含む搭乗員全員が沈黙した。


クルーザーは旋回し西の陸に向けて去っていく。こちらの乗組員は全員、屋内に入って施錠していた。組合の推測は正しかった。フィードバックを報告せねば。


しかし、勿体無いな。積荷を融通するついでにどうやってそんな頭で生き残ったのか聞きたかったのに。

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