第62話 神守家の裏事情②【side:幸希】
「だから僕らと一線を引いていたのか……」
僕の呟きに、霧玄さんは頷く。
「本当は、君たちとも関わるべきではなかったはずなんだ。現に君を巻き込んで、危険な目に遭わせている。だが、君たちのおかげで優司の心が救われたこともまた事実。難しいな」
目を伏せながら言う彼の姿に、なんだか切なくなる。そうか、神守一門全員が、世界のためにその身も心をも縛られていたのか。厳しい人が多いんじゃない。そうしなければ生きられない人たちだったんだ。
「事情は学校側に伝えられるとは言え、その、いじめとかはなかったんですか?」
僕の問いを受けて、霧玄さんは遠くを見つめ、静かに過去を語る。
「なかったな。無視されることをいじめと言うなら、それはあったが。それに関してはむしろ好都合だったし。まぁ、一方的な暴力があったとしても耐えられるように鍛えられているし、何より神守一門の後ろには神がいるからなぁ。罰当たりだぞ、って教わらなかったか?」
思い返せば、そんなことを言われたような気もする。ただ、神聖なものというよりは触らない方が身のためだと。触らぬ神になんとやらと。
「神守家に救いはなかったんですか?」
答えは怖かったが、知りたかった。希望が欲しかった。
「ないな。従者にはあっても、彼らには」
しかし、希望はあっさりと打ち砕かれる。
「最終的に責任を取るのは大将だ。全ての人の過ちを抱え、頭を下げ、許されなければ死ぬ。神側に非があるなどの正当な理由がない限りは反撃さえもできない。それが神守だ。だから、人間に対して冷たいフリをすることが多かったみたいだ。神から同情を得やすくするために」
衝撃の事実に驚いた。自己防衛すら許されないなんて。他人のせいで、関係のない自分が死ぬなんて冗談じゃない。命が懸かっているのに、死を受け入れるしかないなんて。
「残念だが、いなくては困る存在なんだ。誰かがその役目を果たさなければ、人類はとっくの昔に滅亡しているだろう。彼らの犠牲の上に、俺たちは生きている。正に、人柱だな」
これではあまりにも優司が可哀想だ。神守家に生まれたばかりに、不幸な人生を強いられる。彼は優しい人だ。だからこそ、こんな理不尽も受け入れてしまったのだろうけど。むしろ他の人じゃなくて良かったと思っていそうだけど。それだから、お前だったのかもしれないけど。それでも、思わずにはいられない。
「なんで、お前だったのかなぁ……」
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