第10話 叔母とカレーを作った日
「その、大丈夫ですか?歓迎会の時のこと‥‥」
「うん‥‥一応落ち着いた。あれは、たまにあることだから気にしないで。私は買い出しに来たの。今日の晩御飯はカレーかもしれないよ」
「そう、なんだ。それなら、いいの。私も周辺に何があるか知りたくて‥‥」
あの歓迎会から約一週間。表面上は普通に過ごしていた。叔母と連れ添って買い物に行ったり食事の支度をしたり、学校の用意をしたり。
幼馴染みには会っていない。というより必要なとき以外は私が部屋に引きこもってしまっているのが原因かもしれない。康太からも、特に連絡があったり食事の際に何か言われることもない。
昔から、私と康太の間には線があった。
今回のことでその線が少し分厚くなっただけだ。空気を悪くしてる自覚はあるが、こればかりは解決できないのでせめてもう少し待っていただきたい。
花谷さんは一人でぶらっとしに来たらしく荷物を半分持ってくれた。二人で寮に帰り叔母に買ってきた材料を渡すとやはりというか夕飯はカレーだと教えてくれた。
「皆食べ盛りだし、作りがいあるわー」
と言いつつ私と叔母は並んで野菜を切っていく。花谷さんは部屋に戻るそうだ。
人参は乱切りに、玉ねぎは厚めのくし切りに、じゃがいもは半分に切ってから6等分に。いわゆる一口サイズ。
肉だけは叔母の伝で分けてもらったらしいかたまり肉をはちみつとかで漬け込んでいるのを出してもらった。こちらも一口分に切る。ブロック肉を切る機会などそう無いだろうな、という感想が浮かんだ。
寸胴鍋に切った野菜や肉、缶詰のホールトマトを入れて炒める。玉ねぎがへにゃっとしてきたら更に水を加えて煮る。煮る時間は具材の大きさにより20分ほど。その間に私も部屋に戻って制服から着替えることにした。
着替えてから戻るとトマトスープのような香りがする。どうやらコンソメや塩を加えたらしい。そこにカレーのルゥを入れて更にひと煮立ち。食べ盛りの高校生のためになんとカレールゥは2箱、実に30皿分作ったことになる。ご飯も業務用の炊飯器で炊くそうだ。
カレーを煮てる間に私と叔母はお茶を飲む。今日は紅茶である。
「ねぇ、さちちゃん。康太くんのこと、なんとかならない?」
「私は普通にしてますよ?」
「そうなんだけどね。他の皆が気を遣っちゃってるのよ。だからさちちゃんに、彼をなんとか出来ないかなと思ってね」
「気付いてないのであれば、どうしようもないと思いますが」
「ちょっと深刻ねぇ。さ、サラダも作っちゃいましょうか」
「うん。なんのサラダにする?」
「キャベツときゅうりを使っちゃいたいから、コールスローかしら」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます