私の前で命を馬鹿にするな

黄野ポピー

第1話 親友が亡くなって

去年の冬、親友が亡くなった。


事故だった。

まだ中学生だった。


『進路のことで先生に相談があるから先に帰っていーよ』

『りょーかい。』

そんなメールが親友との、彼女との最後のメールになった。


私達は近所に住んでいて、いわゆる幼なじみだ。たまにケンカもあったけど、すぐに仲直りしてた。メールや電話で夜中まで話した。他愛もない話が多かったけど一番印象深い‥‥‥というか彼女が沢山話したのは恋人の事だった。


私と、幼なじみの彼女と、その彼氏。3人で小学校からの付き合いだ。中学3年生に上がってから彼女とその彼氏は付き合うことになった、と教えてくれた。


内心は、複雑だった。


いや、3人の中で2人グループがあるならば自分は少し距離を取ったほうがいいのかも知れない。取り残されるのか、離れるのかはよく分からないが、今までの関係じゃいられなくなるのは正直、嫌だった。怖かった、と言うのかもしれない。


何よりも、これまで楽しかった時間が無くなるかもしれない。


だけど、親友は亡くなってしまった。病院で冷たくなった彼女に縋りついた。初めて神様に心の底から祈った。願った。


私はどうなってもいいから、彼女を戻して。


当然ながら神様はそんな願いを叶えてくれないし、時間を巻いて戻す手段もない。


なぜ私はあの時『終わるまで待ってるよ。クレープ食べに行こ』と言えなかったのか。


分からない。なんで言えなかったの?なんで一緒にいられなかったの?2人一緒だったら、事故なんてなかったかもしれない。少しでも時間が違えばこんなことにはならなかったんじゃないか。


親友の遺体から離れたのは、涙も枯れ、声も出なくなってからだった。親友の彼氏が『もう眠らせてあげよう』と言ったからだ。その頬には渇いた涙の跡があったけど、このときは何も考えられなかった。


私は伸ばしていた髪を自室にあったハサミで切り、母に相談した。一人暮らしがしたい、と。これは元々言っていたことだった。親友と距離を取るために。

母は心配そうにしていたけど、最後には折れてくれた。ただし、アルバイトはせず勉強を頑張ること。たまに顔を見せに来ることなどを約束させられた。それと美容院でちゃんと髪を整えることも。


今私は新しい住居となる叔母が寮監を務める学校の寮に来ていた。荷物は先に送ってあるため、手荷物だけ持ってきた。隣には、親友の彼氏。否、彼氏。

地元からそう遠いわけではないけれど、やはり幼いときから過ごした3人のうち1人が、それも親友がいないというのは違和感がする。それも自分とはほとんど接点のなかった親友の彼氏が隣にいることも。

そう、なぜか彼氏も私と同じ学校に進学していたのだ。


これは、これから始まる本当ならば少し離れた場所で親友とその彼氏を応援する高校生活の前座。いや、舞台に立ってすらいないか。


私の心は未だにあの冬で停まっている。

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