私は普通のスライムとして、私のヤンデレ的彼女は最強の猫獣人として転生しました。
@shumikatsu8364
第1話 目が覚めたら、普通のスライムだった。
体が何かとぶつかりながら揺れ、あちこちで粘いものらがうごいた。
私は何かによって完全に取り囲まれていた。体を取り囲むそれらは、お互いを押しのけながら藻掻くように動いていた。
べたべたする気持ち悪さに、私は目を覚ました。
そして、顔をしかめながらあたりを見回してみた。だが、目の前は真っ暗で何も見えなかった。それは、粘い何らかが目の前を全部覆うほど、ぎっしりと詰まっていたからだった。
「ううっ、何だぁ…?一体、何が起こっているんだ…···」
私は長い眠りを邪魔されて悪くなった気分を後にし、ここから抜け出すために四方に体をぶつけてみた。しかし、身の回りのこれらは思ったより重かった。
私は続いて体をぶつけてみた。すると、努力が報われるように、そのぐにゃぐにゃで粘り強いものの間に一つの小さな隙間ができてしまった。
私の片目が
「今だ!」
私は考える暇もなく、ただそこから脱出するために、そのまま隙間に向かって力強く身を投げていた。
-ぽんーっ!
澄んだ軽快な音が聞こえた。私は自分を包みこんでいた狭いそこから抜け出していた。その出た時の快感とはまるで風呂の後熱い温泉から出て、外のさわやかな空気を吸うような快感だった。
「はぁ、息苦しくて死にそうだったな。」
私は何とか抜け出すことができたということに、安堵のため息をついた。 だが、それと同時に私は自分の声がおかしいということに気づいていた。 なぜなら、変声期によって低かった声は姿を消えており、その代わり、今まで聞いたことのない変な昆虫が出しそうな声を出していたからだった。
私はまさかと、首を下に下げて自分の体を確認してみた。 だが、そこには本来なら肌色でやや筋肉で鍛えられた体はなく、白色の透明でしなやかに見える小さな体があるだけだった。
私はそれを見て、やがて、自分の体がおかしいことに気づき始めた。
「え?え? 私の体どうした?? 手と足はどこ行った?」
私は慌てた。そして、これ以上考えることをやめ、先ほどまで抜出するために全力を尽くしていた場所に目を向けてみた。すると、その光景を見た私の目は大きくなっていた。なぜなら、目を向けたそこには、丸い形をしており、ぐにゃぐにゃと動いているものらが山のように数百匹が積まれていたからだった。
そのぐにゃぐにゃのものらは、あまりにもびっしりと集まっていたせいで、見ていると、なぜか吐き気がして気味が悪かった。
私はそれらを見た後、これまで以上に早く頭をフル回転させ、状況を把握してみた。丸い見た目に、粘り強くて、ぐにゃぐにゃと動いているもの。
まもなく、頭の中が電球に明かりがついたかのように冴え、私はこれらが「スライム」であるということに気づいていた。
「スライム?!?!」
スライム。
ゲームやファンタジー小説にもよく登場する魔物。 ゲームで言えば、最初のところで雑魚程度に出たり、ファンタジー小説ではほとんど欠かさず登場するモンスターだと言えた。
私は今見ている光景が信じられず、ただ口を開けて何度も目を瞬かせているだけだった。
そうして私が非現実的な状況に、ただぼっとした顔でスライム山を眺めていると、私の目にはそのスライム山の隣に半透明な体をしている1匹の巨大なスライムが立っているのが入ってきた。
良く見ると、その巨大なスライムは今の私と同じ色をしていた。私はそれを見て、まさかあれが私を生んでくれた私のお母さんではないかという考えを思い起こしていた。
私がそうして考え事をしている間、その巨大スライムは
私はそれを見て、ところでそもそもスライムに肛門は存在するのかという疑問を抱き始めていた。
そして、その疑問に対する私の初の答えは自分もよく分からないだった。考えてみれば、そんなこと今の私には分かるはずがなかった。
そうやってしばらくの間、ただぼんやりと考え事をしながら新しいスライムの赤ちゃんたちが次々と生まれてくるのを見ていると、そのスライムの山からは何匹かの小さなスライムたちが木からリンゴが落ちるように、私の前にばたばたと落ち始めていた。
スライムは落ちてから、何度も跳ね返えった。本当に、地面にぶつかったり滑ったり半端なかった。
スライムが落ちるのを観た後、私はそれから再び、さっき見た大きなスライムがいる方に目を向けてみた。
そして、その巨大なスライムを見ながら、私はどうやらあの巨大スライムが私を産んでくれた母親に間違いないと確信を持ち始めていた。
「ハハ… あれが私の母なのか…はは·····。」
信じられない状況に私は苦笑するだけだった。
「これはきっと夢だ。」
それから少し時間は流れ、どう考えてもこんなことは現実ではあり得ないと思った私はこの妄想から抜け出すため、自分の頬を打とうと腕を伸ばそうとした。
が、私はすぐ今の自分に腕がないということを思い出した。
「はぁ…」
何もかも思い通りにいかないことに私は一つため息をついた後、その代わり、周辺にある角の形をした大きな岩と向き合っていた。
その向き合った岩を良く見てみると、その岩の表面には小さな突起たちがところところに突き出ていた。私はそれを見て、ちょうどいいと小さな声で呟いていた。
なぜなら、私はこれからあの岩に体をぶつけるつもりだったからだった。
しばらくすると、岩と向き合っていた私は「戻れ!」と叫びながら、全力走りで岩に向かい、そのまま身を投げていた。
「ウアアッ!戻れ!!」
-ぷちっ。
しかし、身を投げた私はただ岩の側面に粘液の跡だけを残し、反動によって飛ばされていった。
私は跳ね返ると同時に、まるでピザの生地が空中を飛んでいくかのように数周し、ついに地面に体を打っていた。
私はこの機会でこれが生まれたばかりのスライムの弾力であるということを思い知らされたのだった。
「くぅ…」
かなり痛かった。地面にぶつかったところがずきずきとしていた。いくらスライムでも苦痛は感じるようだった。私はこの生放送みたいな現実感溢れる苦痛に、どうやらこれが夢ではないらしいということに気づいたのだった。
その時だった。 体を打った衝撃の影響なのか、頭の中が雷でも落ちたかのようにピンと光り、私は自分が刃物で刺されて死んだという事実を思い出していた。
そうだった。私は何かを食べ間違えて死んだのではなく、自殺をしたのだった。
しかし、私はなぜ自分が自殺したのかはよく覚えていなかった。
「そうだな…」
どうやら、私は本当にスライムに転生したようだった。
「はぁ…、こうなった以上、現状を把握するしかないのか。」
と、一旦、この状況を受け入れることにした私は、仕方なく
すると、上は青空どころか、何かで塞がれたように真っ暗だった。
予想と違うことに、私が上を良く見てると、それは天井というか、尖った
「まさか、今、洞窟の中にいるのか。」
と私は驚いた声で言った。一体これはどういうことだろうか。私は今まで自分が洞窟の中にいるとはまったく自覚していなかったのだった。
「えっ?でも良く考えてみれば、今なんで目の前がこんなにもよく見えるんだ?」
と、私は少し疑問に思った後、念のため、上にジャンプをしてみた。すると、柔らかいスライムの体がぴちぴちと音を立てながら、上に飛んだ。
しばらくして、体はまた下を向いていき、ついに地面に着いていた。
すると、着地によって作られた波動がだんだん響き渡り、それに伴って私の視野は広がっていった。
「おお、スライムの視野というのはこういうものなんだな。」
私は今まで感じたことのない不思議な感覚に、思わず感激の声をあげていた。この気分はまるで自分がコウモリでもなったかような気分だった。
しかし、良く考えてみると、それは今の私にとって重要なことではなかった。
「じゃあ、この洞窟をどうやって出ればいいのかが問題だな…」
と、私は雑な考えは去っておき、まずはここから出る方法について考え始めた。
悩んでいる中でも、私の体は自分が「スライム」であることを証明するように無意識にジャンプをし続けた。
一応、直感的にこの洞窟はスライムだけが住んでいるようではなかった。
その証拠として、先ほどから洞窟の壁側の四方に、ある程度時間差を置いて小さな波動が鳴っているのが目に見えていた。
ということは、おそらく弱肉強食で負けた動物らが捕食者に狩られているのかもしれなかった。
私は自分もああなるのではないかと思うと、全身に震えとともに鳥肌が立った。
しばらくして、恐怖感にとらわれていた私は目をつむって気を取り直して後、ゆっくりと洞窟全体を見回してみた。
すると、この洞窟には4つの入口があった。
洞窟を中心に、北を横切る一つの大通りと、その北の道の左と右上にある二つの小さな穴口、そして、洞窟の東側に大きな洞窟の道がもう一つあった。
2つの小さな穴の周辺には何かがあったのか、あちこちにスライム粘液がついていた。
どうやら、その二つの穴の道は私の母(?)の給飯口のようだった。 なぜなら、ちょうど今頃、犬ほどの大きさの野ネズミに似ている動物がその道に沿って入ってきたが、私の母(?)と思われるスライムが体からシャッという音と同時に、2つの長い触手を出し、そのネズミたちを捕まえて自分の体の中に投げ捨てたからだった。
体の中に入ってしまったネズミたちはしばらくの間もがき、少し時間がたってから息を引き取ったらしく動きを止めた。
「ハハ…···うちのお母さん強いな。」
と、私は母(?)が狩りをする場面を見て、思わず呆れた顔で感心してしまっていた。 もし、手があったら感嘆の拍手を送っていたかもしれなかった。
「確かに、強いからこんな所でも生き残れるんだろうな。うんうん。でも、よく考えてみると、もともと転生したりしたら、特別な能力ができたりしなかったのかな。」
確かに、私はスライムに転生する前に、そのような小説を読んだことがあった。それは有名ではないだろうか、転生して異世界で無双する小説のことだ。
私は、もし自分にもそのような特別な能力があるのか試してみるために、
「ファイアーボール!」
「エレクトリックボール!」
のような幼稚な言葉を吐き出しながら全力を尽くしたのだった。
-10分経過 -
息が切れて私はそろそろ疲れてきていた。
私は幼稚な言葉を吐き出しながら、俳優顔負けの演技をした自分が恥ずかしくなり、顔が赤くなっていた。とても恥ずかしいせいで、私の白いスライムの体が真っ赤になっているほどだった。
幸い、周りに誰もいなかったことは本当に助かっていた。
とにかく、こうしても何も起こらないのを見ると、私には何の能力もないようだった。
せめてスキルやステータスを表示するものが出てきてほしかったのだが、それもなかった。
不公平な事実に私は今にも舌を噛んで死にたい衝動に駆られていた。転生したのに、なんで自分にだけ何の能力もないのかということがその一番の理由だった。
「特別な能力もなさそうだし、このまままた死ぬのかな…」
そうして愚痴をこぼしながら、ぐったりして挫折していると、私の頭の中には死ぬ直前の状況が急によみがえってきた。
死ぬ直前、私のガールフレンドである「小林美月」は、胸から血を噴き出しながら倒れた私を、座ったまま抱いていた。
そして、私を抱きしめた彼女は無数の涙を流し、私に向かって何かを言っていた。
(詳しくは前作「ヤンデレの彼女がしきりに私を誘惑する」の最終話を参考にしてください。)
「一体、何と言ってたのかな。。。」
私は死ぬ前に、彼女が私に何と言ったかは全く覚えていなかった。私が覚えているのは私がみづきに抱かれていたということと、意識が途切れる前に美月が私に何かと言っていたことだけだった。
私はそれがとても気になって頭がおかしくなり、今にも髪を掴んで毛をむしりたい気分になりそうだった。
が、私はそうする前に、すぐ今の自分が禿で、それに腕もないということを思い出したのだった。
「今頃、どう過ごしているのかな······多分今頃、家に警察が押し入ってきて、状況を調べているんじゃないかな…? 私なしで大変そうだな。 はぁ…」
私は今になって現世に置いてきた彼女が心配にな始めた。彼女のことを考えていると、後悔感が押し寄せてきた。
「ちくしょう!」
私は大きな声で叫ぶとともに自殺したことを後悔した。もし、このような転生であることを事前に知っていたのなら、私は決して自殺のようなことはしなかったはずだった。
だが、私はただの一瞬の感情に巻き込まれて、自殺というばかげた選択を選んでしまったのだった。
人は感情的に行動してはいけないというのはこういうことかもしれないと私は今になってそう反省した。
すーっ!
はぁ···
すぅ…!
はぁ···
私はそれから、まず興奮した今の自分を落ち着かせるために、大きく行きを吸い込み、深呼吸をしてみた。
こうして大きく深呼吸をしていると、ある程度は落ち着いたような気がした。
「次のことは一応、ここを出てから考えよう。ふぅ…」
私はまず乱れた心を引き締め、母(?)スライムが塞いでいない洞窟穴の東にある穴道に向かってゆっくりと移動し始めた。
洞窟の道を進みながら、私は美月の涙を流す顔がどうしても忘れられず、頭の中を去らなかった。
「みづき…」
頭の中が霧でごった返したかのように、もどかしくて重かった。だが、
「いや、これは私らしくない。 前向きに考えよう。」
それでも私は地球で暮らしているミヅキのことを考えて、彼女がが幸せに暮らすことを望み、体を上下に弾ませながらだんだん前に向かって歩いていった。
* * *
洞窟の中にある道を歩いていた私はどんどん体を弾ませながら前に進んでいた。
確かに、歩いていると重かった頭が軽くなったような感じがした。やはり運動は万能薬だなと私はその時そう思った。
それからまた時間は流れ、私が洞窟の中の道をある程度進んだ頃だった。
道を進んでいた私の前からは何かと音が聞こえてきた。音がしたところを良く見てみると、そこには波動が鳴り響いていた。
私は本能的にその波動を見るや否や、素早く危険を感知し、隣の岩の隙間に身を隠した。
スライムだからか、体がしなやかで小さな隙間に入るのは意外と簡単なことだった。
そうして息を殺し、岩の隙間に隠れてその波動の主が現れる待っていると、しばらくして
変な音とともに鎧のような硬い皮が全身を覆った怪物がついに姿を現した。
その怪物をよく見ると、その怪物は顔と胴体がアリに似ており、腕はザリガニの腕と似たような形をしていた。
「 !! 」
岩の後ろに隠れていた私はそんな怪物を見ると、一瞬驚いて大声で叫んでしまうところだった。
だが、私はまず怪物に自分が近くにいることをバレないようにできるだけぎゅっと口を塞いだ。
岩に隠れていた私は息を殺していながら、あの化け物を誰が作ったのかは分からないが、アリの力とザリガニのハサミが加わって、あの怪物に一発当たれば全身が骨に変わってしまいそうだとふと思った。
「お願いだ····あっちに行ってくれ…お願い…」
そうして私が命だけと懇願をしている間、そのアリガニ(?)の怪物はハサミの腕をカチカチと音を立てながら動き、私が今までいた道の上まできた。が、突然動きを止めた。そして、動きを止めたその怪物は自分のハサミで私の体が地面に残した粘液質をやたらにつつき始めた。
その怪物は何日は飢えていたのか、腕を一度も止めず動き続けていた。アリの口に似た怪物の口が、速い舌の動きとともに私の粘液を食べていた。私はそんな怪物の野生の食事を見ながら口を開いた。
「うう、なんであんなのを食べるんだ?」
へどが出そうだった。 実はすでに吐が喉まで上がってきたが、ごくりと飲み込んだ。
この怪物はこの洞窟で暮らすのがどれほど大変なのかを教えてくれる典型的な例のようだった。味もないし、栄養価もなさそうなスライム粘液を美味しそうに食べているからだと私は岩に隠れてこっそりとそう思った。
そうしてその怪物が私の粘液質に一目置かれている間、私は吐きそうな気分を耐えながら、また前に向かって進み出した。
「ふぅ、とりあえず、どうにかして生きてきたな。私に特別な能力があったら、あんな怪物たちと戦って勝っていたかな······」
と私は洞窟の中の道を進みながら、自分の無力さにもう一度がっかりし、口をこぼしてみた。
だが、私はすぐ今は自分に失望している場合ではないということを思い出し、首を横に振った。
私は早くこれらの怪物でいっぱいの洞窟を出なければならなかった。なぜなら、私が怪物らに食われるのは時間の問題だったからだった。だから、そんな愚痴をこぼす余裕があるのなら、私はこの洞窟から少しでも早く出る方法を探すべきだった。
そうして目標意識を持った私は、一歩一歩前に進み始めた。
前に進みながら、私は波動に何か動きが感知されれば岩の隙間に隠れることを繰り返し、怪物たちを追い抜いていった。そして。だんだん前に進んでいった。
「はぁ、はぁ、どれくらい来た?」
道を進みながらそろそろつかれてきた私は、力のない声でそう呟いた。
歩いてから約1時間ほど経ったようだが、今まで光のようなものは少しも見当たらなかった。
絶望的な状況に、私はもしかしたらこの洞窟から出られないかもしれないと、その時心の中でそう思った。
それからまた一時間後。
「この洞窟、一体どれだけ大きいんだ…···ごほんごほん。」
私はあまりにも洞窟の大きさに不満をいいながら咳をした。
すると、私の口からは少し光る粘液質が飛び出してきた。外に飛び出した粘液質は地面できらきらと輝いていた。私は意外と綺麗な光景に、こうして見るとプリンみたいでおいしそうなだと一瞬そう思った。
そうしてまだ洞窟をうろうろと彷徨っていた私は、進み続ければいつかは必ず出口を見つけることができるだろうという心構えで、また前に向かって進み出していった。
***
「はあ。 はあ。」
そうしてまた時間は流れ、疲れによって息が切れそうになっていた頃だった。
遠くからは人々の声が聞こえてきた。
その声は男の太い声と女の細い声、そして大人の声と子供の声が混じっていた。洞窟では彼らの声が何度も鳴り響いた。
その人たちは、私のいる方に向かって来ているようで、彼らの声はますます大きくなっていった。
しばらくすると、声の主人公たちは姿を現した。
彼らの登場に、私は彼らを見るやいなや、すぐに周囲にある岩の後ろに身を隠した。私の体はもうこのようなことには慣れたのか考えることもなく、先に反応した。
岩の後ろに隠れた私は、何が起こっているか確認するために岩から頭をそっと突き出し、外の状況を見回してみた。
すると、私の目の前には人間3人と動物の耳がついた人間1人が、道に沿って歩きながら通りすぎているところだった。
一番前を歩いている痩せた体の人間男性。
そしてその後を追って、
その次に、3番目に歩いている大きな心が印象的な女性らしい体をしている聖女。
最後に、怯えた顔で周りをきょろきょろしながら聖女の後を追っている背の低い魔法使いの少女。
彼らは冒険家パーティーのように見えた。
そうして冒険家に見える彼らが洞窟の中をゆっくりと歩いている途中、4人の中で誰かが口を開いた。
「あ、退屈だ。 遠くまで洞窟ダンジョンに来たというのによ。つまらないものしかないじゃないか。 ちっ。」
退屈な表情で手に短剣を持ち、首の後ろに両手を上げている人間男性が言った。
「おい、スパータンおじ、魔物たちはいつ出てくるんだよ。」
人間男性は今の状況が気に入らない顔で後ろにいる獣人に聞いた。
「まあ、すぐ出てくる。そんなに焦るな。」
獣人はこの質問に呆れたか退屈な表情で人間男性の言葉に言い返した。
「ああ、いつまで待っていればいいんだよ。さっきから弱い魔物ばっかりでてくんじゃないか。まじでつまんなくてたまらないな。」
人間男性はみんなに聞こえるほど大きな声で話した。
「そもそも俺たちの目標はそれじゃない。それは君も知っていると思うが。」
「はいはい。知ってます~。あの巨大スライムだろう?早く出てきてほしいな。早くぶっころして、証拠もっていって大金稼ごうよ。」
人間男性はこの後のことを考えているのか上を向いて舌をならした。その姿を後ろから見ているスパータンは、顔に手をのせてため息をついた。
「あの····皆さん、ゆ、油断してはいけません····! この洞窟はかなり危険だと聞きました········。」
彼らの会話を聞いていた魔法使いの少女が心配そうな顔で言った。その後、彼女は魔法の杖を握る手に力を入れた。
どうやら、彼女は彼らの会話を聞いていて不安になってきたようだった。スパータンはそんな魔法使いの彼女をみて彼女のことが心配になったか、少し後ろに首を回しては後ろにいる彼女に笑顔を作って見せた。
「おい、小さい娘よそんなに心配する必要があるのかい? この私の固い筋肉を見てみろ。この洞窟で私に勝てる者はいない。ウハハ!」
スパータンが、魔法使いの少女をなだめるために自分の筋肉を自慢しながら自信を持って言う。だが、彼の努力にもかかわらず、少女の顔は暗いままだ。
「もちろん、スパータンさんが強いのは認めますが······でも…。」
魔法使いの少女の声がだんだん小さくなっていく。彼女は魔法使いの帽子を頭の上にかぶっていた。
「リア様、きっと大丈夫ですよ。 私たち4人の力はそんなに弱くありません。」
女性らしい体の白い聖女の服を着た女性がリアをなだめるように言った。彼女の声は何か落ち着いていて聞きやすい。子守唄を歌うとよく眠れそうな。
「しかし、リア様のおっしゃるとおり、この洞窟は危険です。 これからはもっと周りに気を使うようにしましょう。 さっきから気になっていたことですが、洞窟の雰囲気がだんだんおかしくなるような..“
聖女は少し顔をしかめながら心配そうな口調で話す。
「ふむ…確かにノエルの言う通りだ…」
スパータンは彼女の言うことを肯定するように、あごに手を置いたままうなずく。
だが、人間の男性はあまり気にしないらしく、一度肩をすくめると、そのまま歩いていった。
「いったい何がおかしいというんだ。ちっ。」
と、他のみんなには聞こえない小さな声で
話す人間男性。
私はその話を岩の隙間に隠れて、こっそり聞いていた。
「おお、人間たちと獣人じゃないか。」‘
やっと異世界ファンタジーに来た実感が湧いてきた。
「この人たちが来た方向に沿って行けば、出口を見つけられるかもしれない!」
この人たちは洞窟の外から来たはずだから、逆戻りすれば洞窟から出ることが出来ると考えられる。
ついに洞窟を出ることができるという思いに興奮してきた。この暗くて陰気な洞窟から一日も早く出たかった。
それから少し時間がたち、あのパーティの姿が洞窟の深いところに入って見えなくなると、私は素早く隠れたところから出て、体を弾ませながら、彼らが来た方向に向かって走り出した。そして狂ったように走る。
前に進みながら、もし、他の冒険家たちと会う状況を考えて、体を横に移し、岩のある方にくっついて走った。
* * *
ある程度洞窟の道に沿って進むと、向こうから一筋の光が見えてきた。
「おお!! 光だ光!!」
まるで新人類が火を初めて見たかのように叫ぶ。
私は後ろに一度も目を向けず、入り口に向かって全速力で走り出した。
あまりにも速く走ったせいでバランスが取れず、転ぶところだった。
前に進めば進むほど光がますます強烈になっていった。 あまりにも強烈な光に目が自動的にしかめっ面になった。
「くっ····もう少しだけ!····もう少しだけ!!もうちょっと····!!」
ついに出口に向かって走っていた私は力いっぱい出口に向かって身を投げた。
***
「うっ…」
目の前が何も見えなかった。多分、洞窟から出てきてすぐに倒れてしまったのだろう。
倒れた体を起こして目を覚ましてみる。すると、目の前には青色の自然風景がますます広がっていった。
「わあ…」
言葉では表せない美しい光景に、おのずと感嘆の声が出た。
周辺では鳥の鳴き声、木が揺れる音、風の音、昆虫が鳴く音、多様で多様な音が聞こえてきた。それらは一つの大きな演奏だともいえた。
そして周りに目を配ってみると、まわりには洞窟に向かってできた一つの大通りがあった。
その大通りの周辺には葉だらけの木々と、実のついた小さな茂みでいっぱいだった。木に吊られている実の色は虹のように多様な色を浴びていた。
空気は風がそよそよ吹いて葉を軽く振り続け、空では暖かい日差しが木々の間にそっと入ってきては葉の間を明るく照らした。
太陽の光に当たった葉の集団は、内側の微細な茎まですべて透き通っていた。
今までそのような美しい光景に目をとらわれていた私はそれらを見ながら、それらを飲みこむように大きく息を吸い込んでみた。
「うぅ…!はあ… これが生きる味だ!」
私はあまりにも爽やかさに満足感に満ちた声をあげた。自然の甘い香りが全身を刺激する。この新鮮な空気は洞窟の中でたまったストレスを全て吹き飛ばすに十分だった。
そのようにしばらくの間、自然環境に目を奪われていると、私の体の中からはグーという音が鳴り出した。
グーという音はあまりにも大きく、音を出した自分がびっくりするほどだった。
「あ、そういえば、生まれてから何も食べていないな。」
考えてみれば、スライムとして生まれ変わり、今まで洞窟の中をさ迷っていた私は何の食べ物も口にしていなかったのだった。
生物において一番大切だともいえる生理現象を起こしていた私は、何か食うものを探すために首を回してあたりを見回してみた。
すると、私の目には周辺にある茂みに実が鈴なりについているのが入ってきた。
それを見ていた私は、今日に限ってあの茂みがとても美味しいそうな食べ物のように見えていた。それは、自分がスライムになったからかもしれなかった。
-チュルっ。
食欲をそそられ、私は舌をならした。
そして、腹の肉が背中につきそうだった私は緑色の茂みが生えているところに向かって歩き出していった。
茂みのすぐ前まで到着すると、私はこれ以上食欲を押さえることが出来ず、そのままそこにある実と草をむやみに食べ始めた。
「うーん、思ったよりおいしいね。 (かりかり)
おお、実がさわやかでよく熟している。(かりかり)」
口が
「元々、葉がこんなにおいしかったのかな。 (もぐもぐ) 改めて見つめ直すよ。」
草の香りと実の甘みが調和し、幻想的なハーモニーを作り出した。 最近、こんなにおいしい食事をしたことがあったのだろうか。
一つの茂みを食べ尽くすと、隣にある茂みが私の目に入ってきた。今の飢えた私には茂み以外のものは見えなかった。目の前に見えるのはひたすら茂みのみ。
一度食べたからか、車の発動がかかったかのように自分の食欲を押さえることが難しかった。
-チュルっ。
隣の茂みを見つけた私は素早くそこに駆けつけると、そこにある草をむやみに食べ尽くしていった。
「うーん、これはまた微妙に違う味だな。 (ザラザラ)」
意外と植物ごとに違う味に、私は予想外だという声をあげた。
草らを口に入れながら、私は口に実の果汁がついたり、木の枝が体に少し刺さっても全く気にせず、茂みたちを食べ続けていった。
それから少し時間は流れ、すぐそばにある茂みをあっという間に全部食べ終えていた私はお腹に乞食でもあるのか、引き続いて周りにある茂みを食べ尽くしていった。
(パサパサ)
(もぐもぐ)
気がついた時は私は周辺にある茂みを全部食べ尽くしており、近くの茂みは服を脱いだかのように葉が少しも残っていなかった。
葉が消えて木の枝だけが残っているその姿は、何か可哀想に映った。もちろん、茂みらがそうなったのは言うまでもなく全部私のせいだった。
下に目を向けてみると、私の体は食べ過ぎたせいか、最初とは違いものすごく膨らんでいた。
自分の体を自分で支えられないほどにだ。
「うん····、食べ過ぎたのかな?」
- くぅ~っ!
口が大きく揺れ、大きな音が響いた。 そう私は食事の後、ご飯に満足した証しともいえるゲップをしたのだった。幸い、変な匂いはしなかった。それは、スライムだからかもしれない。
お腹もいっぱいになっただろうし、気力が戻ってきた私は道上に座っていた体を縦に起こした。
そしてゆっくり、ゆっくりと森の道に沿って進みだしていった。ご飯を食べてからすぐ走ると、お腹が悪くなるからゆっくりと歩いた。
そうして森の道に沿って歩きながら大きくなった体を運んでいると、道の周辺では地球の動植物とは見た目が少し異なる生物たちが生活を営んでいるのが目に入ってきた。
それらを見つけた私は、何か変わった光景に思わず目が大きくなっていった。
「ふむ…外は思ったより静かで平和的だな。洞窟の中はあんなに怪物がたくさんいたのに····。」
洞窟とは逆の光景に、私は一度短かった洞窟生活を振り返って見た。
目が覚めたら、平凡でなんの能力もないスライムとして転生したのではないか、そしてスライムの自分に母がいるだけでなく、変な怪物たちに追われたり、冒険家パーティーと会わったり、など。
本当に、いろいろなことがあったのだった。
よく考えてみると、まだ生きているのが不思議に思えるぐらいだった。
「ちょっと待った…」
道にそって歩いていた私は急に何かを思いつき、足を止めた。そう、考えてみたら一つのおおきな問題が生じていることに気づいたのだった。それも非常に大きな問題。
どうして、今まで気づかなかったのだろう。
「ところで、これからどこに行けばいいんだ?」
この世で生まれたばかりの私には行くところがなかったのだった。
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