惑わせよ
耳に音のない痛みが届く
一瞬血流がすべて同じ方向になった
そして大きな轟き
私が隠れた布団の中に
影が逃げ込んできた
何かをやめたい時
嘘をつきたい時
食べ物を残してしまった時
誰かを裏切ろうとする時
いつも笑っている
私の中のまっすぐな影
君はいつも私を惑わし
だいたい私に勝ってしまう
そんな君が
私にしがみついてくるなんて
耳を音が突き抜けていく
血流は秩序を失っている
何かが倒れ何かが飛んで
私と君とは抱き合っている
時間の経過がわからない
命の強度も分からない
ただ二人の恐怖は
しっかりと伝わり合っていた
そして私たちは生き延びた
深い深い闇の中で
私は手の届く限りの何かを探した
君はまだ怯えて離れようとしなかった
おかげで何にも惑わされず
できる限りのものを見つけられた
静寂の中に鼓動が聞こえ
血流も正しくなった
ただ私はまだ怖かった
私の半分が失われたままだった
惑わせよ
心の中でつぶやいた
いつものように惑わせよ
今から逃げなければならない
何とか生き延びねばならない
常に前を向いて
常にまっすぐだったら
私はきっと折れてしまう
惑わせよ
早く私を惑わせよ
私は影を抱えたまま走る
疑うべきを疑わず
迷うべきを迷わず
経験のない道を進んでしまう
公園に集まった人々の喧騒
建造物の共鳴
ゆっくりと血液が冷えていく
いつになったら大地は眠るのか
私はここで夜を明かすつもりだ
決意は揺るがない
揺るがなくていいのか
君よ影よ私の半分よ
頼むから私を惑わせるんだ
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