【セ/カ/イ】

夜は夜を飲み込んで

深い闇を目指す

朝を迎えるためには

光を信じなければならない


誰かが信じた朝の光のなかで

私たちは背伸びをしている

終焉の完全な闇が

大きく口を開けているとも知らずに


廃棄されたはずの嘘が

土から這い出てきて

希望に塗られた夢を食べる

ぜんまい式の月から

牛車が動き出す

刹那の安寧を与える新薬を乗せて


何かしらの偶然で

つなぎ留められた連鎖の先に

吊るされている魂

雫が弾けるような一生のなかで

見つけた果実の数だけ

思い出で痛みを我慢できる


夜に誘い込まれて

闇の水面につま先が触れた時

【セ/カ/イ】を感じることができた

それは最初ひんやりとして

次に少しびりびりとして

最後には生ぬるかった


つかの間の昼に心から

【セ/カ/イ】の欠片が零れ落ちてくる

セキュリティーのゆるい畑で

全てを見渡しているかかし

カドリールが続く広場で

割れていく大理石

イミテーションだらけの教室で

積み上げられた机の家


それが本当だったのかどうか

わからないままに

心は明るい方へと

記憶を色付けていく

夜のことなんて忘れて

【セ/カ/イ】を築きあげていく


また夜は夜を飲み込む

私たちは連鎖を続ける

かすかに記憶に残る

光を信じながら

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る