第80話 待ってるね?

 無事に(?)肝試しが終わり、俺は青葉と途中まで帰る事になった。人体模型を動かしていた幽霊……理子さんについては夏休みが明けてから色々と分かるだろう。本人は無害な呪縛霊だと言っていたが果たして本当なのか……まぁ話してみた感じ無害な感じはするけれど。


「今日は色々とありがとう晴翔君」


「どういたしまして。最後にちょっとした恐怖体験はあったけど無事に終われて良かったよ」


「……あれは本当に何だったのかしらね」


「さぁ?」


 実はセーラー服の少女が悪戯するために揺らしてましたとは言えるはずもなく、全く分からないといった風に肩をすくめる。


「あ、そういえば理科室でのこと先輩達には言わなかったんだな」


 俺が戻り全員が揃った後調査の報告をする事になり、その時青葉は特に何もなかったと話したのだ。人体模型が動いていたと言っても信じてもらえないと考えたのかな……。


「だって話したら茜先輩が大変な事になりそうな気がしたから」


「あぁ……」


 リタイアした茜先輩に人体模型が動きましたと言ったら、かなり五月蝿い事になりそうだなと想像出来てしまう。


「だからあえて話さなかったのよ」


「そうだったんだ、てっきり信じてもらえないからかと思ってた」


「まぁその側面も無いわけじゃないけどね。それに……」


「それに?」


「2人の秘密って事にした方が面白いかなって」


「……さいですか」


 こちらを揶揄うような笑顔でこちらの顔を覗いてくる青葉に、俺は少し乱雑な返事をする。そんなもので俺が動揺するとでも思ったか青葉、あまり俺を甘く見るなよ?あ、ちょっと今は目合わせないでもらってもいいですかね?


「あ、私こっちだから」


「そっか、帰り道気をつけて。特に背後にはね」


「……そういうこと言わないでよ、怖くなるでしょ」


「すまんすまん、それじゃあまたな青葉」


「ええ、またね晴翔君」


 青葉の姿が見えなくなるまで見送った俺は一つ大きな深呼吸をする。そして真っ直ぐ家に帰るのではなく、近くのコンビニで鈴の好きなものや少しお高めのアイスを買う。これで何とかなればいいけど……あまり期待しない方がいいな。


 夜の校内を歩く時よりも緊張している自分の体を何とか動かし、家に辿り着く。身体から汗が出ているがこれは恐らく暑いからではなく、緊張によるものだろう。


 覚悟を決めろ俺、打てる手は全て打った。後は文字通り当たって砕けるだけだ。


「ただいまー」


「あ、おかえりお兄ちゃん」


「ごめん、買い物してたら少し遅くなっちゃった。鈴の分もあるから後で食べよっか」


「わぁ!ありがとうお兄ちゃん、一旦冷凍庫に入れてくるね。」


「ありがとう」


 俺から袋を受け取り、笑顔を浮かべる鈴乃。あれ……?意外と普通な感じ……?


「あ、お兄ちゃん」


「ん?どうした?」


「先に部屋で待ってるね?」


「あ……はい……」


 ニコリと微笑んだ彼女の笑顔、それをみた瞬間俺の背筋にぞくりとした感覚が走る。はは、俺死んだわ。






P.S.今回短くてすまん!次回『晴翔、死す』デュ◯ルスタンバイ!!

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