-10- 引きこもり と ダンジョン1層
「入る順番を決めるぞ。俺1番!」
「ハァ。だからあんたはアホなのよ。まだフォーメーションの確認もしてないでしょ」
いきなり姉弟喧嘩が始まった。メイが仲裁して良いのか解らずにアタフタしてる。
こんなチームワークでダンジョンに入って大丈夫だろうか。心配だ・・・
「あぁ、良いかな。君達2人は前衛なのか? メイは前衛で、俺は前衛でも後衛でも良い」
「弟は前衛で、私はどちらかと言えば後衛ね」
「そうか、じゃあ順番はジン君、メイ、ヒサさん、俺で良いだろ。俺は後方も警戒する」
「・・・それが良いかもね。 弟よりアホな人が居ないチームで助かったわ」
弟の方がアホなのは同意だが、姉の方は思った事をズカズカと言うタイプだな。こういうのを毒舌って言うのかな?
一番最初にダンジョンに入るのが一番危険なんだが、この弟は気が付いているのだろうか。今更説明して、やっぱり1番はイヤだと言い出しても面倒だから説明はしなくていいか。
ダンジョンに入る時間になった。
最初にジン君が入る。5秒ほどしてメイが入り、ヒサさんも続く。俺も入り、引率の
ダンジョンの中は相変わらず薄暗い。メイはLEDライトで照らして周りを見ている。
俺は空間を捻じ曲げて光を集めて見ているのでライトは必要ない。
「・・・モンスターは居ないッスぅ」
見ればわかる。入って直ぐにモンスターが居たら戦闘になってるからな。
「あんたもアホな事言ってないで、ライト用意しなさい。進むわよ」
「わかってるよ。・・・ん?あー。カゲ?っていったか?あんたは武器とか何も用意は無いのか?」
アホな子に指摘されてしまった。俺の今の装備は、完全に普段着!そして手ぶらだ。コンビニに行く格好でダンジョンに入ってるのだ。誰だってツッコミを入れたくなるだろう。
俺は基本的に空間操作で戦うから、武器って必要ないんだよな・・・
「武器が必要になったら出すから問題ない」
「イヤ、チョット待て。服装だってジーパンにTシャツで荷物も持って無いだろ。どこから出すんだよ」
「カゲちゃんは大丈夫だよ。規格外過ぎて武器とかの問題じゃ無いから大丈夫なんだよ」
メイが俺をフォローしてくれたが、その言い方ではフォロー出来て無いだろ。
だが、俺はそんな事よりも気に成る事がある。ダンジョンに入った直後から血の匂いがしているのだ。引率の臼墨さん以外は気が付いて無いようだ。
俺は全員に知らせる事にした。
「血の匂いがする。警戒した方が良い。人間が喰われてるのか、ゴブリンが共喰いしてるのかは解らないが、敵が居る事は確実だ」
全員の表情が引き締まった。
気持ちの切り替えが早いヒサさんが俺に訊いて来た。
「匂いの方向はわかるかしら?」
「たぶん、あっちだ」
「じゃあ、向かいましょう」
「ね、ねーちゃん。何言ってんだよ。ワザワザ敵の方に行くなんて、そんなの無視すりゃ良いじゃん」
「逆の方に進んで挟み撃ちにされたら最悪よ。それに攻撃されてるのが人間なら助けれる可能性もあるわ」
「そ、そうだよ。カゲちゃんも居るんだし、なんとか成るよ。ケガしてるなら早く助けないと」
ヒサさんの判断は正しい。敵に囲まれるのを防ぐ為にも近くの敵から順番に倒さないといけない。ゲームでは常識だ! しかし匂いからして人間だったら手遅れの状態だろう。
戦闘に関しては、俺が居れば大丈夫というよりも、ゴブリン程度ならメイ1人でも大丈夫だろう。相当練習させたからな。
ジン君が先頭を歩き、匂いがする方法へと向かう。足取りが重そうだ。イヤイヤ向かっているのが俺にもわかる。
先頭を歩くジン君がピタッと足を止めたかと思うと、隊列から離れた。そして、胃液を出し始めた。
どうやらゴブリンの食事風景を見てしまったようだ。
状況が解らないヒサさんとメイもゴブリンを見て、放心状態になってしまった。
ゴブリンとは言え、共喰いだ。それも生きたゴブリンを生きたまま喰ってる。人間には理解出来ない光景だ。
俺がメイの頭をポンと叩くと、メイは正気に戻ったようで武器を持って構えた。
胃液を出し終わったジン君が金属バットを構えようとした時、食事を邪魔されたゴブリンたちが騒ぎ始めた。
「ギャギャー! ギャギュギャー!」
向かって来るゴブリンは3匹、こっちの前衛はジン君とメイの2人だ。安全の為に俺が1匹を足止めしようと思った時、ゴブリンの足元に何かが飛んで行った。両端に重りの付いたヒモがゴブリンの足に絡まって自由を奪った。どうやらヒサさんがボーラを投擲したようだ。
ジン君は金属バットでゴブリンを叩きのめしている。ゴブリンの頭を叩く度に血が飛び散りスプラッター状態だ。
メイはゴブリンの頭部を1突きにして倒し、ヒサさんが足止めしたゴブリンの頭部も1突きにした。
流石メイだ。訓練の成果が出て良かった。
メイが今回使っている武器は、おねだりされて俺が作った物だ。
先の尖った棒を欲しがったので注文通りに作ったが、重さを抑える為に棒はダイヤモンド製だ。ダイヤモンドの棒を作るには本当に苦労した。ダイヤモンドは炭素の塊だが、炭素は窒素よりも軽い物質なので俺には作る事が出来ないのだ。だから最初に鉄製の超頑丈な2mの箱を作った。中の空気を余剰次元に入れて真空にした後、備長炭を中に入れた。備長炭を材料にダイヤモンドの棒を作り、更に棒の周りをタングステンでコーティングした。タングステンの厚さは2mm程で、メッキにしては相当な厚さだ。
計算上は人間の力では破壊出来ないはずだが、相手はモンスターだから絶対は有り得ない。柔軟性に欠けているので壊れる時は曲がらずにポッキリ折れると思う。
それでも、今の俺が作れる最高傑作の棒だ!
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