逃避行

なんか、リュックを買いたくなった。

お気に入りのぬいぐるみとか、本とか、音楽プレーヤーとか、とにかく好きなものだけ詰め込んで、いつでも逃げられるって思いたかった。

遠くに逃げたかった。

勉強とか友達とか、人生とか未来とか、心底どうでもよくなった。でも地元にいれば、嫌でもまとわりついてくる。だから遠くへ行きたかった。私が知らない人になれる場所に。そんな10代。私は空色のリュックを買った。これを背負ったら、飛んでどこまでもいけるって、少しだけ思えた。今すぐ死ぬわけじゃないけど、自殺するためのロープを買うのと似ていた。

結局、上京してからもそのリュックで逃げることはできていない。遠くへ行ったところで、私は私のまま変わらないのだから、逃げることはできないのだと悟り、虚しくなった。

私は私から逃げたかった。

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